江戸時代から昭和中期までの歴史的な建物を移築・復元し、展示する「江戸東京たてもの園」。
 都立小金井公園内に位置するこの施設は、車いすユーザーでも安心して楽しめるバリアフリー環境が整った建物も多くあります。本記事では、園内のバリアフリー情報や車いす用トイレの設備、そして車いすユーザーならではの楽しみ方を詳しくご紹介します。
 歴史の魅力を感じながら、心地よい時間を過ごすためのガイドとしてぜひお役立てください!

 それでは、ジブリ映画の世界観と歴史的建築の魅力を感じられるたてもの園を巡りましょう!

 江戸東京たてもの園の正面出入口から右側のスロープを上り、ビジターセンターの受付に向かいます。

筆者が江戸東京たてもの園の正面入り口から入るところ
筆者がスロープを上り始めているところ
スロープを上り、ビジターセンターに沿った通路を入口に向かって走る筆者
筆者がビジターセンターの入口から入るところ
入口から入りすぐ左側にある受付に向かう筆者

受付

入って右側にあるミュージアムショップとカフェ

ミュージアムショップ&カフェ

 入口から入り、受付で障がい者手帳を提示してください。
 【身体障害者手帳・愛の手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳・被爆者健康手帳をお持ちの方とその付き添いの方2名まで無料です】

 ビジターセンター内の障がい者用トイレ

左前方に障がい者用トイレの入口ドア
障がい者用トイレの中。左前に便座


 ビジターセンターを出るとエントランス広場に「午砲(ごほう)」がお出迎え。

午砲と呼ばれる大砲がテントの下に左向きで置かれている。青銅製で、青緑色になっている。
午砲の弾を詰める方向から撮った写真

 明治時代から空砲により正午を通報していました。
 使用年代:1871年(明治4)~1929年(昭和4)4月

 

 エントランス広場の障がい者用トイレ

エントランス広場の左端にあるトイレ
トイレの入口。手前が女性用、奥が男性用
男性用トイレの中にある障がい者用トイレの入口ドア
障がい者用トイレの中。右側に便座


 最初はセンターゾーンにある歴史好きには外せない「高橋是清邸」からです。
 大正から昭和のはじめにかけて国政を担った高橋是清の住まいを移築した歴史的建物です。この邸宅は、1936年の「2.26事件」で是清が青年将校らに襲撃された場所としても知られています。和洋折衷の美しい建物に加え、庭園の一部が復元されており、激動の時代を生きた彼の足跡を感じることができます。
 事件当時の緊迫感を思い浮かべながら建物を巡れば、歴史の深みが一層感じられるでしょう。必見のスポットです!

高橋是清邸の外観
玄関左端にあるスロープと段差解消機
筆者がスタッフの方に誘導されて段差解消機に乗ったところ

 【園内の建物に車いすで入るときのお願い】
 文化財の保護・保存に配慮し必ず車いすのタイヤを拭いてから入りましょう

是清邸の1階廊下の写真
是清邸の1階居間の写真
是清邸の年表
1階居間から庭園を眺める写真


 是清邸にはエレベーターが無いので「2・26事件」の現場となった2階を、らくゆくスタッフに撮ってきてもらいました。 

是清邸2階、2・26事件のあった部屋

是清の書(複製)が飾られた8畳間

2階から庭園を写した写真

2階からの庭園の風景


 是清邸の庭園を取材中のらくゆくスタッフ。
 見事風景に溶け込んでしまう二人!

是清邸の裏にある日本庭園を散策するらくゆくスタッフの二人


 次は東ゾーンへ向かいます。

万世橋交番の外観。小ぢんまりとした白い石造りの建物。

万世橋交番

都電7500形。黄色い車輛

都電7500形


 今にもおまわりさんが出てきそうな「万世橋交番」、道に迷っても誰も案内してくれません(笑)

万世橋交番の中を覗くらくゆくスタッフの二人


 万世橋交番前の障がい者用トイレ

万世橋交番の反対側にあるトイレの外観
トイレの入口。手前が女性用。奥が男性用
男性用トイレの中にある障がい者用トイレの入口ドア
障がい者用トイレの中。右側に便座。


 ここからジブリ映画のファンの間で話題となった「千と千尋の神隠し」のモデルともいわれている建物を紹介します。
「下町中通り」
 明治、大正、昭和初期のまちなみを再現した場所で、朝ドラなどのロケ地としても使われています。歩いていると、まるで千尋が迷い込んだ不思議な世界に入り込んだ気分を味わえるでしょう!

下町中通りの手前に筆者、奥に子宝湯までの商店街を写した写真


 右から花市生花店、武居三省堂、店蔵型休憩棟

花市生花店、武居三省堂、店蔵型休憩棟の外観

 「武居三省堂」は、明治初期創業の文具店です。
 釜爺の仕事場に雰囲気が似ていると話題です。映画のシーンを思い浮かべながら訪れると、さらに楽しめますよ!

武居三省堂の店内を写した写真。左の壁には小さな引き出しが一面に詰まっている。


 店蔵型休憩棟
 1階の休憩所と障がい者用トイレ

店蔵型休憩棟の休憩所と奥にあるトイレの入口ドア
ドアを開けてさらに左前にある障がい者用トイレの入口ドア
障がい者用トイレの中。左前に便座

 2F食事処 「たべもの処 蔵」

店蔵型休憩棟入ってすぐ右前に2階のうどん屋の広告

1階休憩所手前の右側

エレベーターの入口ドア

2階へのエレベーター


 「鍵屋」は、千尋の両親がブタになった居酒屋を思わせる雰囲気があります。木造の建物や落ち着いた照明、昔ながらの内装が、映画のシーンを彷彿させます。店内を覗いて見てください。

鍵屋の外観


 「子宝湯」は、ファンの間で湯屋のモデルの一つと言われています。特徴的な装飾やカラフルなデザインが、映画の湯屋を思わせる雰囲気を持っています。

子宝湯の外観
子宝湯の正面から右端にあるスロープ
筆者がスロープを上っている写真
子宝湯の車いす用出入口
車いす用出入口から入って奥にある男湯。両側に脱衣かごの先にある風呂場

男湯

車いす用出入口から入ったところにある女湯。右奥にある風呂場

女湯


 そのほかスロープがあり、店内に入れるお店の紹介。
 丸二商店(荒物屋)

丸二商店の外観
丸二商店正面左側のスロープ
店内の様子。やかんやほうき、じょうろ等の日用品が売られている。


 川野商店(和傘問屋)

川野商店の外観。店の前には当時使われていた台車付きの自転車が止めてある。
正面入口のスロープ
店内の様子。和傘が3本並べられている


 小寺醤油店(醤油の他にお酒、味噌、缶詰など)

小寺醬油店の外観
店内の様子。日本酒やウイスキー、フルーツの缶詰などが置かれている
店内の手回し式レジの写真。


 万徳旅館

万徳旅館の外観

正面

万徳旅館の裏側にある車いす用出入口

車いす出入口

万徳旅館の裏からの入口
入口から入って通路の両側に部屋


 植村邸大和屋本店(乾物屋)(右側)
 店舗いっぱいに商品が並べられている。
 スルメ、昆布、たまご、大豆など、そして奥には鰹節があった!

植村邸と大和屋本店の外観
大和屋本店の店内の様子。


 そして西ゾーンの紹介です。
 最初は豪邸「三井八郎右衞門邸」(エレベーターあり)から。
 三井家第11代当主の住まいとして建てられた格式高い和風建築です。
 広々とした敷地に立つこの邸宅は、明治時代の上流階級の暮らしぶりを感じられる貴重な建物です。美しい日本庭園や、品格ある和室の造りは、当時の職人技が光る見どころです。静かな佇まいの中で、歴史と伝統をじっくり味わえるスポットです!

三井八郎右衛門邸の門から写した写真。白い壁に黒い瓦屋根の建物。手前には桜の木がある。
邸内右端にあるスロープ

スロープ

スロープを上ったところの車いす用出入口

車いす用出入口

1階の南側廊下。右側は客間や食堂。左側が庭園

南側の廊下

邸内の2階廊下にあるシャンデリア

シャンデリア

客間の様子。紫の絨毯に中央にテーブルで両側に椅子

客間

食堂の様子。紫の絨毯に中央に長テーブルで両側に4席づつ椅子がある

食堂

 

 庭園の歩道は一部凸凹がありますが、介助付きで観れますよ!

庭園にあるシダレザクラの先にある三井八郎右衛門邸


 次に「デ・ラランデ邸」(エレベーターあり)の紹介。
 明治時代に建てられた洋館で、ドイツ人建築家デ・ラランデの住まいとして使用されていました。木造ながらも洋風デザインが特徴で、当時の日本における西洋文化の影響を感じることができます。
 華やかな外観や室内の装飾は、明治期の異国情緒を味わえる貴重な建物です。洋風建築が好きな方におススメです!
 邸内には「武蔵野茶房」が営業しており、落ち着いた雰囲気の中で食事ができます。

デ・ラランデ邸の外観。1階部分が白く、2階3階と屋根が赤いのが特徴。
裏側にある車いす用スロープ

裏側にあるスロープ

スロープの先にある車いす用出入口

車いす用出入口

 武蔵野茶房で紅茶とチーズケーキで休憩

赤い絨毯の店内に二人用テーブルと椅子に座るらくゆくスタッフの女性
フローリングの店内のテーブルと椅子
テーブルの上の銀の四角いお盆には左からチーズケーキ、紅茶を入れる時間を計る砂時計、紅茶のポットとカップが乗っている

 邸内の障がい者用トイレ

邸内の障がい者用トイレドア
障がい者用トイレの中。左奥に便座


 ボンネットバス

クリーム色のボディに赤い帯のバスの正面
バスの後ろ側


 小出邸

小出邸の外観。白い壁の建物。
小出邸裏側にある車いす用出入口


 前川國男邸

前川國男邸の外観。茶色の木造建築。
前川國男邸の裏側にある車いす用出入口


 常盤台写真場(エレベーターあり)

常盤台写真場の外観
常盤台写真場の裏側にある車いす用出入口

 

 八王子千人同心組頭の家

八王子千人同心組頭の家の外観。土壁にかやぶき屋根の建物。
家の正面右側にある玄関に入るためのスロープ


 綱島家(農家)

綱島家の外観。こちらも土壁にかやぶき屋根の建物。
家の正面右側にある玄関に入るためのスロープ


 三井八郎右衞門邸の隣にあるトイレ

休憩用テントの右側にあるトイレ
トイレ入口、手前が女性用、奥が男性用
男性用トイレの中にある障がい者用トイレのドア
障がい者用トイレの中。右側に便座


江戸東京たてもの園取材スタッフスナップショット

2・26事件があった是清邸の2階で胡坐をかいて座り込むらくゆくスタッフ
子宝湯の前でピースポーズをとるらくゆくスタッフ
万世橋交番の前で筆者とたてもの園スタッフが談笑しているところ
是清邸の庭園入口の柵を外してもらい中へ入る筆者
子宝湯の男湯の洗い場を歩くらくゆくスタッフの女性
子宝湯の男湯の中を見渡している筆者
下町中通りで記念撮影するらくゆくスタッフの4人
黄色い車輛の都電7500形に乗り込むらくゆくスタッフの女性
三井八郎右衛門邸隣の蔵の2階で徳川家家紋の入った長持ちの前でポーズをとるらくゆくスタッフ
三井八郎右衛門邸隣の蔵の2階で徳川家家紋の入った長持ちの前でポーズをとるらくゆくスタッフ


 取材を終えて

子宝湯の前でたてもの園女性スタッフ中央とらくゆくスタッフ8人の集合写真

 江戸東京たてもの園での取材を無事に終えることができました。開園前からスタッフの方々に丁寧にご対応いただき、園内を回る間も寄り添いながら説明していただいたおかげで、歴史的建造物の魅力を感じることができました。

 歴史好きな同行スタッフがつい取材を忘れてはしゃいでしまうほど、園内の建物や展示物には心を動かされるものが多くありました。特に「高橋是清邸」や「下町中通り」、そして「三井八郎右衞門邸」など、時代を感じさせる建物の数々に圧倒されました。

 バリアフリー環境も整備されており、スロープやエレベーター、車いす用トイレなどが充実しているため、安心して楽しめる施設でした。一部介助が必要な場所もありましたが、スタッフの方々のサポートのおかげで不安なく見学できました。

 最後に、取材中ずっと親切にご対応いただいたスタッフの皆さまに心より感謝申し上げます。この取材を通じて、江戸東京たてもの園の魅力を多くの方にお伝えできれば幸いです。


 【アクセス】
・自家用車の場合
 小金井公園第一駐車場を利用します。
 駐車場の一番奥に障がい者用駐車場があります。

小金井公園第一駐車場の一番奥にある障がい者用駐車場
駐車場出口にある精算所

 精算所の右側を通り抜けて右前方の江戸東京たてもの園へ向かいます。

精算所のあたりから江戸東京たてもの園ビジターセンターを見た風景
江戸東京たてもの園のビジターセンター正面の写真

 駐車場から出るときは、入口で出たチケットを差し込まずインターフォンでオペレーターを呼び出します。
 オペレーターと繋がったら障がい者手帳をカメラにかざし、確認してもらいます。
 オペレーターが確認するとバーが開き、無料になります。
 


江戸東京たてもの園
https://www.tatemonoen.jp/

江戸東京たてもの園の取材風景やバリアフリー情報を動画でもご覧いただけます。⇩
【らくゆくチャンネル】
江戸東京たてもの園 バリアフリー情報

 


文:神戸 剛(脊髄損傷)写真:歴史好きスタッフ一同