国内外の女性監督や女性に焦点を当てた作品が集う「あいち国際女性映画祭」。作品の世界初公開(ワールドプレミア)として大きな注目を集めたのが、島春迦(しま はるか)監督の最新作『そらのまなびや』です。
上映後の熱気が冷めやらぬ中、監督の島春迦さん、出演の麻生祐未さん、中里芙紅さん、佳山明さんの4名にお話を伺いました。作品に込められた想いや、撮影現場でのエピソードについてたっぷりと語っていただきました。
![]() ミカン畑の休憩所のシーン | ![]() 電動車いすで掃除をするシーンを練習しています |
映画『そらのまなびや』とは?
![]() 暖かい陽に包まれながら撮影は順調に進みます | ![]() 電動車いすでの境内の掃除をしています |
かつて「みかんの北限」と言われた山里を舞台に、登校しづらい子どもたちや年を重ねた人々が集う、現代の「寺子屋」を描いた物語。
生まれつき手足にまひがある娘・まや(佳山明)と、周囲から「なまぐさ坊主」と噂されながらも寺子屋とみかん園を営む父・悠人(ブラザートム)。そして、森のレストランを営む母・響子(麻生祐未)や、寺子屋に関わる人々(中里芙紅 ほか)が織りなす、あたたかくも人間味あふれる群像劇です。
個別インタビュー

写真左から、中里芙紅さん、麻生祐未さん、佳山明さん、島春迦監督
トークショーの後、個別インタビューに応じてくださいました
【島春迦監督】
「誰もが自分らしくいられる“まなびや”を描きたかった」
――あいち国際女性映画祭でのワールドプレミア上映、おめでとうございます。本作を着想したきっかけを教えてください。
島春迦監督(以下、島): ありがとうございます。現代社会の中で「どこか生きづらさ」を感じている人たちが、フッと肩の力を抜いて寄り添える場所を描きたいと思ったのが始まりでした。学校や社会の枠組みになじめない子どもたちや大人たちが、自然豊かな山の空き寺で言葉や心を通わせる。そんな「完璧ではないけれど愛おしい居場所」を表現したかったんです。
![]() 大村愛知県知事から花束贈呈 | ![]() 登壇者を代表して作品への想いを語る島監督 |
日常を切り取る島監督の挑戦と車いすの背景
―― 映画を拝見して、過剰な演出がなく、画面の中で登場人物たちが本当に生きているような様子に深く胸を打たれました。
島:
ありがとうございます。セリフをわざと噛むような部分も含めて過剰に矯正せず、リアルを追求しました。現場でキャストが「実際に生きること・演じること」を大切にすることで、観客の方にも没入感を持っていただける作品を目指しました。
―― 主人公・まや役に佳山明さんを選ばれた理由や、出演までの経緯について教えていただけますか?
島:
登場人物の設定を考えていた際、車いすの人物像と映画のビジョンが重なる部分がありました。本当にたまたまなのですが、ちょうどその2ヶ月ほど前に、以前観た作品を通じて佳山さんの存在を知り、彼女の表現や世界観に非常に感動していたんです。
「まさにこういう役がある、ぜひ佳山さんにお願いしたい」と連絡を取らせていただきました。実際に一緒に演技をしていく中でやり取りを重ね、お互いに役を深めていく作業はとても面白く、素晴らしい経験になりました。現場では大変な撮影にもめげずに立ち向かう強さがありましたね。
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予期せぬアクシデントも味方につける「自然の演出」
―― 佳山明さんや現場の皆さんの掛け合いも非常にナチュラルでしたね。
島:
途中で救急車の音が聞こえたり、断られて去っていくシーンでちょうど桜の風が吹いたりと、現場では様々な偶然がありました。そうした「現場で起きる生のアクシデント」をNGにするのではなく、作品の表現として受け入れていくことで、ドラマでありながらドキュメンタリーのような自然な風合いが生まれたのだと思います。
![]() 撮影シーンのチェック中 | ![]() 車いすの進行コースを指示する島監督 |
【佳山明さん】
「まやとして生きた時間は、かけがえのない宝物」
――手足にまひがありながらも、寺子屋で英語を教える娘・まや役を演じられた佳山さん。演じる上で意識されたことはありますか?
佳山明さん(以下、佳山):
役の人生設定など、様々な役づくりを行って臨みました。 そして、まやは、障がいを抱えながらも自立し、強さを持ち、葛藤しながらも居場所をつくっている女性です。誰かと響き合い、時には衝突しながら過ごしていく、「まやという役を生きること」を大切に演じました。

桜が咲き誇る境内で小休止する佳山氏
![]() 上映後のトークショー | ![]() トークショー後、大村愛知県知事から花束贈呈 |
―― 父役のブラザートムさんや、母役の麻生さんとの共演はいかがでしたか?
佳山:
ブラザートムさん演じるお父さんは、現場で、熱く温かい存在でした。麻生さんとのシーンでは、言葉にしなくても伝わる親子の空気感のようなものを引き出していただけて、とても心強かったです。
―― 役を演じるうえでの難しさや、手応えはいかがでしたか?
佳山:
お父さんとの喧嘩のシーンなど、最初は感情を出していくことが難しいなど、ありました。ですが、監督や共演者の方々、スタッフの皆さんのおかげで、自分の強い感情、役として、ネガティブな強い感情も表現することができました。
言葉で多くを語るわけではない沈黙の中でも、情景や音と一緒に気持ちが入っていけるような、とても濃密な撮影現場でした。
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【麻生祐未さん】
「完璧じゃない大人たちが作り出す、やさしい距離感」
――森のレストランを営む母・響子役を演じられた麻生さん。脚本を読まれたときの第一印象はいかがでしたか?
麻生祐未さん(以下、麻生):
とても優しく、風が吹き抜けるような美しい物語だと感じました。登場人物みんながどこか不器用で、一見ばらばらに見えてもゆるやかにつながっている。響子自身も元夫や娘と適度な距離を保ちながら自分の人生を生きている女性で、その「距離感のやさしさ」に共感しました。お父さん(住職)役の方との夫婦関係も、完成した作品を見るとお互いの距離感や空気感がすごく自然に出ていて、監督が温かく見守ってくださったおかげだなと思います。

上映後のトークショー
![]() 大村愛知県知事より花束贈呈 | ![]()
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―― 共演されたブラザートムさんや佳山明さんとの現場はいかがでしたか?
麻生:
「トムさんは現場にいるだけで周りをパッと明るくしてくれる存在で、作中の悠人そのもののような魅力的な方でした。そして、まや役の佳山明さんは本当にまっすぐでピュアな感性をお持ちで、彼女の表情ひとつで現場の空気が洗練されるような感覚がありました。自然とあたたかい家族のような空気感が生まれていたと思います」
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【中里芙紅さん】
「作品を彩る一人として、作品の温もりを伝えたい」
―― 中里さんといえば、若い世代を中心に絶大な支持を集める縦型ショートドラマ(ショートフィルム)を中心に活躍されていますよね。今回、初の長編映画に挑戦されてみて、一番感じた「違い」は何でしたか?
中里芙紅さん(以下、中里):
一番大きな違いは「時間の使い方」と「視線の捉え方」ですね。 役としてそこにいる時間そのものがスクリーンに映し出されます。セリフのない「間(ま)」や、ふとした視線の泳ぎ、空気感の余白まで丁寧にカメラが拾ってくれるんです。

上映後のトークショー
![]() 大村愛知県知事より花束贈呈 | ![]()
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―― 撮影現場の雰囲気について教えてください。
中里:
ロケーションとなった自然豊かな景色と、そこに集まる人々の表情が本当に生き生きとしていて、現場にいるだけで作品の温もりに包まれているようでした。これまでは「どう演じるか」を考えてしまいがちだったのですが、何も考えずに「ただその場をゆっくり生きる」ということの大切さと難しさを実感しました。そしてそれが一番難しいことなんだとすごく勉強になりました。
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インタビューを終えて
一人ひとりが、生き方を選び取る姿を、優しくそしてシビアに見つめた『そらのまなびや』。
島監督が作品の世界観と重ね合わせて決めた佳山明さんの起用背景、麻生祐未さんが語った「自分の感情に向き合い、一人で立つことを選ぶ尊さ」、そして中里芙紅さんが感じた「その場を生きる芝居の真髄」は、そのまま映画全体の圧倒的なリアリティへと結実しています。ぜひ劇場や今後の配信で、彼女たちの瑞々しい言葉とたたずまいを体感してください。
![]() 登壇者とインタビュアーの小川 | ![]() 登壇者を囲んで「らくゆく」スタッフと阿部建設株式会社の阿部社長(写真下段左) |
写真:寺川健一・松尾深志 文:小川陽一
























