2026年3月26日、東京都庁第一本庁舎にて、「デジタルエリア」のプレス向け体験会が開催されました。

東京2020大会の、単なるアーカイブ展示にとどまらず、最新のXR(クロスリアリティ)技術で「スポーツの記憶」を「体験」へと昇華させる試みが、ここ都庁で始まりました。
そんなコンセプトで誕生したこのエリアの目玉は、スタートアップ企業の技術を駆使したXR(クロスリアリティ)コンテンツです。
3月27日から一般公開され、無料で楽しむことができます。
※XRとは、VR・AR・MRなどの技術を用い、まるでその場にいるかのような没入感や、現実とデジタルが重なり合う新しい体験を生み出す技術のこと

XR体験エリアの前で、VRゴーグルとXR MEMORIESのチラシを持っている野口啓代さん

この日のスペシャルゲストは東京2020大会のスポーツクライミング銅メダリスト 野口啓代さん


野口さんは、自身の競技種目であるスポーツクライミングを再現したXRコンテンツ
「TOKYO LEGACY XR MEMORIES」を体験最新のXRゴーグルを装着した野口さんは、ゴーグル越しに当時の競技壁を眺めた野口さんは、まるでその場に選手たちがいるかのような没入感に、思わず感嘆の声が漏れます。
「アスリートの視線、壁の迫力、競技の緊迫感……これほどリアルに蘇るとは」と、当時の景色を重ね合わせて語る姿に、会場も静かな熱気に包まれました。

XRゴーグルをつけて見上げている野口さん 背後のモニターにはクライミングの様子が映し出されている

野口啓代さんが「あの壁」と再会!


左手で聖火トーチを持っているような姿勢の野口さん
背後のモニターには聖火台が映されている

仮想空間で聖火台やメダルに触れる体験を通し、「見るだけではなく、自分がその中に入り込める。これはスポーツとの素晴らしい融合」と絶賛しました。


コンテンツ紹介

  • TOKYO LEGACY XR MEMORIES:東京2020大会のスポーツクライミングウォールをリアルに再現。
    競技空間のスケール感の中で、アスリートの「高さ」や「速さ」といった迫力を、至近距離で体験することができます。東京2020大会の軌跡をたどる旅へ皆様をお連れします。(約8分)
  • バーチャル江戸マラソン: VRゴーグルを装着し、江戸の街並みの中を実際に走っているような体験ができる「スポーツ×文化×デジタル」が融合した東京ならではの新感覚コンテンツ!手を振る動きに合わせて視界が進み、浅草・日本橋などの名所を360度で臨場感たっぷりに楽しめます!(約5分)
  • サイバーボッチャ: 身体を動かしながら楽しむ戦略性の高いパラスポーツをデジタル演出でより楽しく体験。 (約6分)
  • eスケートパーク: 実際に滑っているような感覚を味わえるデジタルスケート。(約7分)

バーチャル江戸マラソン: 野口さん両手を振って疾走!周りで見ているスタッフからも自然と声援が飛び、ブース全体が一体となって盛り上がりました。

VRゴーグルをつけて椅子に座り、ピースサインをする野口さん
バーチャル江戸マラソンに参加している様子1
バーチャル江戸マラソンに参加している様子2
バーチャル江戸マラソンに参加している様子3

今回、我々「らくゆく」スタッフも実際にコンテンツを体験しました。
サイバーボッチャ: 伝統的なボッチャに最新テクノロジーが融合すると、ここまでエキサイティングになるのか!」と驚きました。普段のボッチャだと、どこにボールがあるか審判がメジャーで測るシーンもありますが、サイバーボッチャはリアルタイムで位置を判定し、美しいグラフィックで表示してくれます。まるでスポーツとゲームの境界線が溶け合うような、不思議でワクワクする感覚でした。

ボッチャのコート CYBER BOCCIA LITE 1→10.と書かれている
正面のモニターにボールの位置が表示されている
らくゆくスタッフがボールを投げる瞬間
両手を挙げて喜ぶらくゆくスタッフ

eスケートパーク: スケートボードといえば転倒の恐怖がありますが、ここではしっかりとした手すりがサポートしてくれます。重心移動がリアルに画面に反映されるため、足腰に不安がある方でも、バランス感覚をゲーム感覚で養うことができます。「危ないから」と諦めていたスポーツを、こうして安全に体験できるのは、インクルーシブな社会の大きな一歩だと感じました。
体験終了後、画面にはスコアが表示されます。なんと、ランキング1位の50ptを獲得!笑

手すりにつかまり、操作説明を受けるらくゆくスタッフ
目の前のモニターを見ながらスケートボードに挑戦するらくゆくスタッフ

 

 

ランキングには1位 you の一人しか表示されていない

【トークショー】野口啓代さんが語る
デジタルで繋ぐ「スポーツの感動」と「挑戦の記憶」

トークショーの司会の女性と野口さん

トークショーでは、スポーツクライミング銅メダリストの野口啓代さんにお話を伺いました。
自身の原点から、XR技術がもたらす未来のスポーツ体験まで、熱い想いを語っていただきました。

Q:クライミングを始めたきっかけは意外な場所だったそうですね?
野口さん:
「はい、実は小学5年生の時の家族旅行で訪れた、グアムのゲームセンターだったんです 。そこにクライミングのゲームがあって、体験してみたら一気にのめり込んでしまいました 。
その後、父が実家の牧場の古い建物の一角に、広い空間に一面壁っていうようなクライミング壁をDIYで建ててくれたんです 。毎日そこで練習して、大会に出場する。そんな生活が今の私を作ってくれました。あの時グアムに行っていなければ、今の私はなかった。本当に運命的な出会いだったと感じています 。」
 

Q:競技生活の中で「壁」を感じたことはありましたか?
野口さん:
「精神的な壁はたくさんありましたが、一番大きかったのは『オリンピックを出場するかどうか』の覚悟でした 。
2016年に東京大会での実施が決まった時、私は26歳。4年後の本番では30歳を過ぎているので、正直、目指すべきか悩んだ時期もありました 。でも、自分の地元である東京で開催される。
『このチャンスは一生に一度、絶対に出たい』という気持ちが、年齢への不安を上回りました 。実際に大会を経て、今では『野口さんの姿を見てクライミングを始めました』と言ってくれる子供たちがたくさんいて、スポーツが持つ力を改めて実感しています 。」
 

Q:実際に「TOKYO LEGACY XR MEMORIES」を体験してみていかがでしたか?
野口さん:
「もう、驚くほどリアルです! デバイスを装着した瞬間、今ここで話しているのを忘れるくらいの没入感でした 。
特に、クライミングのスピード種目の壁を15メートルの高さから見下ろした時の景色。普段、自分で登っている時とはまた違う、全体を見渡すリアルな高さに、思わず足がすくむような感覚になりました 。ボランティアの方々の姿や聖火台、メダルの質感まで再現されていて、あの時の緊張感や熱狂が鮮明に蘇ってきましたね 。」
 

Q:このエリアを訪れる方々へメッセージをお願いします
野口さん:
「これまでは『見るだけ』だったスポーツが、デジタルの力で『誰もがその中に入り込んで体験できる』ものに進化しました 。
特にクライミングのような、普段はなかなか体験できない高さや迫力を、都庁という場所で、しかも無料で誰でも楽しめるのは素晴らしいことだと思います 。
もっともっとスポーツの素晴らしさだったり、オリンピックの感動を思い出して欲しいなって思いましたし、本当に皆さんもぜひ一度体験して、アスリートのすごさだったり、スポーツの感動を見てもらいたいなと思います。


【取材レポート】
らくゆくスタッフが野口啓代さんに聞くデジタルが拓く「共生社会」の可能性

都庁デジタルエリアの体験会。最新技術に目を輝かせていたスポーツクライミング・メダリストの野口啓代さんに、「らくゆく」スタッフが直接、私たちが最も気になっていた「未来のスポーツの形」について質問をぶつけてみました。
Q:らくゆくスタッフ(寺川)
――「今回のXR技術やデジタルを活用することで、障害の有無に関わらず、誰もが同じフィールドで競い合える可能性について、どのようにお感じですか?」

この問いに対し、野口さんは非常に前向きな、そして温かい言葉で答えてくださいました。

野口さん:
実際にボッチャとか体験してみて、パラスポーツでもこんなにハイレベルなパフォーマンスだったり、素晴らしいスポーツなんだなっていうのを感じられる一つのきっかけになると思いますし、本当にこのデジタル技術の中で今後、例えば対決の対戦だったり、試合になってきた時に、本当に年齢や性別とか国の場所もそうですし、障害の全く関係のない戦いになると思うので、ますますスポーツがいろんな分野で楽しめる一つの柱になるのかなと感じます。

らくゆくスタッフの質問に答える野口さん

らくゆく<独占インタビュー>

Q:らくゆくスタッフ(小川)
――現在は指導する側にも回られていると思いますが、障害者、子供、高齢者など様々な方を指導する中で、難しいと感じる場面はありますか?
野口さん:
「難しい場面……。クライミングもパラスポーツの種目があるんですよね。実際にブラインド(全盲)の種目、目が見えないこともありますし、障害だったり神経障害もあるんですけど。
ただ、本当にそういった方々も、私たちと同じトレーニング環境で、同じ課題(ルート)を登るんです」
クライミングを通じて、障害をお持ちの方の良さがより分かるようになったなと思います。クライミングもオリンピックからパラリンピック種目になるので(※2028年ロサンゼルス大会を念頭に)、ますますクライミングの素晴らしさが広まってほしいです」

Q:らくゆくスタッフ(小川)
デジタルが拓く「フラットな場」への期待
――今後、こうした技術が発展して、どのような社会やスポーツの形になっていったら嬉しいですか?
野口さん:
「こうしたXR体験が、まずはきっかけ作りになってほしいです。
スポーツってよく『若かったらやりたかった』とか『痩せたらやります』と言われることがあり、ちょっとハードルが高い部分があると思うんです。
それが、デジタルを通じて誰でも参加できて、誰でも頑張れるものになっていくと、年齢や身長なども関係のない本当にフラットな場で、みんなが楽しめたり対決ができたりする環境になっていく。そんな、未来が明るくなって夢がある世界になったらいいなと思いました」

Q:らくゆくスタッフ(小川)
――最後に、パラスポーツや社会への貢献について一言いただけますか?
野口さん:
「クライミング界でも、障害をお持ちだったり手足が不自由だったりしても、アスリートとして社会で働いている方がたくさんいます。そういった方もぜひ取り上げていただきたいです。
特にブラインド(全盲)のカテゴリーでは、全く目が見えない日本人の方が世界一で、世界選手権を4連覇しているような現状もあります。そういうことももっと社会に広まってほしい。今のカテゴリーは視覚障害や神経障害などが主ですが、もっとカテゴリーが増えて、スポーツの幅が広がってほしいなと願っています」

カメラの前でらくゆくスタッフの質問に答える野口さん

また、会場内には大会マスコットのミライトワとソメイティが並ぶフォトスポットも。
家族連れや観光客にも喜ばれそうな仕掛けが随所に散りばめられていました。
「いつでも、誰でも」スポーツの感動を東京都が推進するこの取り組みは、デジタルの力で誰もがスポーツに触れ合える場を創出することを目指しています。

ベンチにはミライトワとソメイティのぬいぐるみが座っていて、その間に座って写真を撮ることができる

隣接する「中央展示エリア」では、実際にメダリストに贈られたメダルの重さを体験できるコーナーや、今後開催される「東京2025 世界陸上」「東京2025 デフリンピック」の展示も行われており、過去から未来へと続くスポーツの熱量を感じることができます。

東京2025世界陸上のメダルや写真が展示されているエリア
東京2025デフリンピックのメダルや写真が展示されているエリア
東京2020オリンピック・パラリンピックのメダル
東京2025デフリンピックのメダル

都庁を訪れる際は、ぜひ2階のデジタルエリアへ足を運び、野口さんも体験した「あの日の景色」を覗いてみてはいかがでしょうか。
 


笑顔がつなぐ、スポーツの未来――野口啓代さんとらくゆくスタッフの記念撮影

ポスターの前でポーズをとる野口さんとらくゆくスタッフ2人

【施設概要】

  • 場所: 東京都庁第一本庁舎2階(デジタルエリア・中央展示エリア)
  • オープン日: 2026年3月27日(金)
  • 利用時間: 平日 9:30~17:30 / 土日祝 11:00~18:00
  • 入場料: 無料

■東京都庁スポーツ推進本部公式HP
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写真:寺川健一(四肢障がい)、小川陽一 文:寺川健一(四肢障がい)