らくゆく読者の皆様 バリアフリーのリフォームをお考えの方や生活環境に問題を感じておられる方は、ケアリフォームシステム研究会にご相談したら良い解決策がいただけそうです。そのヒントが感じられるイベントでした。

3人の白装束の刀鍛冶が刀を鍛錬するシーンを再現した展示

メンバーは関の匠の技にも刺激を受け気を引き締めて大会に臨みました。

テーマ「一歩踏み出す勇気」〜少しの勇気が日常を変える住環境提案〜
身体が不自由な方の自立と介護負担軽減のための住環境を提案する「NPO法人ケアリフォームシステム研究会(CRS)」の第23回全国大会が、2026年5月23日(土)、岐阜県関市の「アピセ・関」で開催されました。当日は建築・福祉の専門家や地域住民が多数集まり、熱気あふれるプログラムが展開されました。

※ケアリフォームシステム研究会は、高齢者や障がい者が自立して快適に暮らせる住環境づくりを追求する、全国の工務店やリフォーム会社のネットワークです。
 単なる段差解消などにとどまらず、医学的・福祉的視点から一人ひとりの身体状況や動線に合わせた最適なプランを提案します。「介護される側」の自立を促し、「介護する側」の負担も軽減する、持続可能なリフォームの普及を目指しています。

全国大会in岐阜 動画

白いタイル張りの建物に、広く長いひさしがあり、前面にアピセ関と輝く施設名が掲げられている

アピセ・関 入口

玄関に全国大会のポスター 青空に一歩踏み出す勇気 ツインバスケットボールのメンバーの写真が中央に配置されている

全国大会in岐阜のチラシ

主催者・実行委員長挨拶と関市長による祝辞

代表理事がマイクを手に挨拶

ケアリフォームシステム研究会代表理事 白石 充氏

開会にあたり、白石充代表理事は、「住環境が整うと『外に出たい』『挑戦したい』という前向きな変化が生まれる。車椅子ツインバスケットボールチーム『岐阜EXPRESS』の皆さんの実体験から学び、各地域へ発信していきたい」と大会の意義を語りました。

名古路実行委員長が手を拡げ開催できたことの感謝を表す

名古路建築株式会社 代表取締役 名古路 健氏

関市長が原稿を左手に、開場を見据えて感謝の言葉

関市長 山下清司氏

続いて実行委員長の名古路健氏が地元の岐阜で全国大会を開催できた喜びと歓迎の言葉を述べました。

また、来賓として駆けつけた関市の山下清司市長から祝辞をいただきました。山下市長は、誰もが安心して自分らしく暮らせるまちづくりにおける住環境整備の重要性に触れ、全国から集まったCRSの専門家たちの先進的な取り組みへ敬意と期待を込めた温かいエールを送られました。

■岐阜エクスプレスメンバーによる車いすツインバスケットボールのパフォーマンス

・車いすツインバスケットボールチーム 岐阜エクスプレスとは
岐阜県を拠点に車いすツインバスケットボールを行う団体。岐阜県立看護大学等の学生マネージャーとともに、パラスポーツを通じて、地元岐阜を盛り上げていきます。東海車いすツインバスケットボール連盟所属。【選手募集中】
・車いすツインバスケットボールとは
通常のゴールに加えて、高さ1.2メートルほどの低いゴールがあることが最大の特徴。バスケットゴールが半面に二つあることから、車いすツインバスケットボールという。(略称ツインバスケ)
四肢麻痺など上肢にも重度障がいがある方が参加できるようにとの目的から、日本で考案されたスポーツ。障がいの程度によってシュート方法が異なります。

ツインバスケットボールの選手6名とサポート1名が引くゴールの周りでシュートの模範演技

白いヘッドバンドの選手がシュートしました

・ヘッドバンドなしの人は、障がいの程度が比較的軽い人で、通常のゴールにシュートします。
・白いヘッドバンドの人は、障がいが中程度の人で、低いゴールにサークルの外からシュートします。
・赤いヘッドバンドの人は、障がいが比較的重い人で、低いゴールに直接シュートします。

ヘッドバンドなしの選手とボールを見届ける白いヘッドバンドの選手

ヘッドバンドなしの選手がボールをパスしました

4人の選手が床のボールを囲んで近づこうとしている

選手が乗る車いすは旋回性向上のためハの字に設置されています

選手たちが整列 左からヘッドバンドが赤、なし、白、赤、赤、赤

パフォーマンスに参加した岐阜エクスプレスの6人のメンバー

■ 講演:「一歩踏み出す勇気」

講師:上田 進太 氏(岐阜EXPRESS)

講演をしている上田選手の近景
講演をしている上田選手の遠景

 21歳での交通事故による脊髄損傷を経て、現在は自立した生活を送る上田氏が登壇。結婚式でチャペルにスロープを設置したエピソードや、車椅子でスムーズに動ける動線・福祉用具を取り入れた自宅の工夫を紹介。「挑戦する前から諦めるのではなく、ほんの少しの勇気を出して一歩踏み出すことで日常は大きく変わり、可能性が広がる。建築士の勧めで、思い切ってエレベーターを設置することによって、以前の生活を取り戻すことができた」と伝え、来場者に深い感動を与えました。

 

■ パネルディスカッション

両手でマイクを持ちパネルディスカッションを開始する松尾氏

コーディネーター・講師:松尾 清美 氏(KT福祉環境研究所 / CRS顧問)

会場前面のテーブルにパネラーとして座す二人

左から名古路氏 白石氏

選手代表のパネラーとして同じく座す二人

左から平田氏 上田氏

 パネルディスカッション(松尾氏、白石氏、名古路氏、上田氏、平田氏が登壇)では、パネリストだけでなく、観客席に居合わせた、大会関係者とそのご家族、介助者などから、たくさんの疑問質問が寄せられ、会場全体で考えるように促されました。 

 様々な立場の方々の参加する会場全体が一つになって、一人のために解決策を導き出そうとする素晴らしい光景でした。これがケアリフォームシステム研究会による問題解決力なのでしょう。
 また室内用として「スタンダップ車椅子」が実演されました。レバー操作で立ち上がった状態(立位)を保持できるこの機器は、高い場所へのアクセスを可能にするだけでなく、起立性低血圧や褥瘡(床ずれ)を予防する医学的効果も高いことが紹介されました。

 

■ 事例発表:ケアリフォームノウハウを活かした住宅改修

講演をしている梨ヶ瀬氏の近景
講演をしている梨ヶ瀬氏の遠景 スクリーンには福祉機器が投影

発表者:梨ヶ瀬 氏(凰建設株式会社)
理学療法士・作業療法士のご夫婦(30代)の自宅改修事例が発表されました。車椅子での上り下りをシミュレーションして決定した玄関スロープ、介助負担を激減させる浴室・トイレの連動動線、将来の機器導入や手すり追加を見据えた壁面補強など、「先回りしたプランニング」と「施主と一緒に作り上げるプロセス」の重要性が示されました。

 

■まとめ講話:「寝たきりのない社会」へ

講演をしている松尾氏の近景
講演をしている松尾氏の遠景

大会の締めくくりとして、ケアリフォームシステム研究会顧問の松尾氏が講話。
「欧米では環境や機器を適合させて自立して動くのが当たり前であり、日本のように障害=寝たきりになるケースは少ない。環境を変えれば動けるようになることを知ってほしい」と訴え、適切なケアリフォームと福祉用具の適合によって「日本から寝たきりをなくそう」という強いメッセージで幕を閉じました。

アピセ関のロビーにて

大会に参加した岐阜エクスプレスの選手と談笑する松尾氏

 

■アピセ・関 バリアフリー情報

アピセ・関のアピセとは、アメニティー(快適な)・ピープル(人々)・スクエア(広場)の頭文字からなり、「市民が集う快適な広場」という意味です。
館内には、エレベーター、スロープ、バリアフリートイレ完備され、多目的ホールもバリアフリー設計されています。

アピセ・関入口の右手にスロープ有

バリアフリートイレは1階と2階に有

【取材を終えて】

ケアリフォームとは単なる工事ではなく、当事者が喜びを取り戻し、一歩踏み出すための「人生の可能性を広げる環境づくり」です。行政(関市)からの期待も背負い、建築と福祉のプロが手を結ぶCRSの活動は、これからの共生社会を照らす大きな光となっています。

写真・文:小川陽一 動画編集:車いすダイバー翔太

岐阜エクスプレス

ケアリフォームシステム研究会