音楽を観に行ったりするのは好きだけど、車いすユーザーは会場のバリアフリー状況などを気にしだすと観に行くのはちょっと億劫だなと思っている方もいるのではないでしょうか。

そこでお薦めしたいのが、ショッピングモールや商店街、お祭りなどで見られるインディーズアーティストによるフリーライブです。

ライブハウスとは違い、事前にチケットや予約の必要もなく、段差の無いフラットな環境でトイレの心配もあまりなく、駐車場も近くにある場合が多いです。

また、ほとんどのイベントでは終演後や転換のときに「物販」という名のアーティストさんとのふれあいコーナーがあります。

「はじまして」の一言から始まり、ステージから伝わってきた感動を伝えたり(「ご挨拶」)するだけでも良いですし、CDやグッズを買ったり(サインお書きしますか?と訊かれるので名前を考えておきましょう)、チェキを買ったり、ときにはハイタッチや握手などのスキンシップもあったり(マナーは守りましょう)で楽しめます。

▲2018年のよさこい・ダンスイベント「踊れ!いとしま」での「チキンナゲッツ」のステージ(福岡県糸島市・丸田池公園)。

▲2018年の博多駅開催のクリスマスマーケットでの「チキンナゲッツ」のステージ。

ここまで読んでみた方は、「フリーライブ行ってみようかな」「でもどこでやっているか分からない」という声が聞こえてくることでしょう。

既に推しのアーティストさんがいる場合は、その方のSNSや公式Webのインフォメーションやライブ情報をチェックしましょう。インディーズライブ未体験方は、日帰り圏内のショッピングモールやショッピングセンター、大きな公園のWebページから、ベント情報のページをブックマーク登録して、ときどきチェックしてみると良いでしょう。

▲国分寺駅直結のショッピングセンター「セレオ国分寺」での「浜崎(はまさき)絵里歌(えりか)」「あーた」さんのインストアライブ。

なお雑居ビル内での開催時は階段しか無かったり、エレベータの無い屋上フロアだったりする場合もありますので注意が必要です。

▲毎年、名古屋栄ミナミ各地で開催される「栄ミナミ音楽祭'19」の様子(写真は音楽スクール前での浜崎絵里歌さん)。

▲「ララガーデン春日部」で毎月3組を呼んで開催のフリーライブ(写真は大森真理子さん)。

▲2018年8月の大崎ウィズシティでの恒例の納涼祭(写真はmultiple(マルチプル) さんとパーカッショニストの阿久井喜一さんのステージ)

フリーライブでお気に入りのアーティストが見つかったら、有料ライブにも足を運んでみて欲しいですが、車いすユーザーとしてはホール系だと対応している場合が多いですが、ライブハウスはなかなか見つかりません。新しくて大きなライブハウスだと対応している場合がありますので、会場に問い合わせてみてください。レストランやカフェとしての形態の場合、1Fの場合が多いですが狭い事もあるので注意が必要です。

車いすユーザーがライブハウスに行く場合は、概ね次のような手段をとる事になると思います。

 

 大規模な会場の例 

1 メジャーアーティストの場合は主催者・インディーズの場合は会場に電話して車いすで行くことを伝えます(その際、付き添いの有無を聞かれます)。車で行かれる方は駐車場も聞いておくと、キープしてくれる場合もあります。

2 主催者指定の時間までに会場前に行きます(初めての場所は、健常者のコースが使えない場合もあるので、プラス30分余裕を見ます)

3 外に物販コーナーがある場合はチェックします。

4 会場前のスタッフに声を掛けます。小さな会場は指定の時間まで待機。

5 入場。チケットを提示しドリンク代を支払います(ドリンク引き換え券を受け取る)

6 案内された場所に陣取り、ドリンク交換をスタッフさんか付き添いにお願いします。

7 開演(障がいの事は忘れ盛り上がりましょう)

8 大きな開場では、終演後にスタッフが誘導に来る場合と来ない場合がありますので、衝突事故にならないよう空気を読んで離席します。

 

 小規模な会場の例 

1 会場に電話して車いす可能か問い合わせます。

2 開場前に会場に到着(整理券を受け取るシステムのとこも)。

3 入場。チケットを提示しドリンク代を支払います(ドリンク引き換え券を受け取る)

4 出入りしやすい席をキープします。

5 ドリンク交換は混み合うので、人の良さそうな方にお願いしてみましょう。

6 開演(障がいの事は忘れ盛り上がりましょう)

7 終演後は物販コーナーへ!お財布の中身が旅立つ瞬間でもあります…。

 

 はじめての方のための用語解説 

インディーズアーティスト/メジャーデビューしていないアーティストで、事務所に所属している場合もあり。撮影に関しては写真はOKでも動画禁止や公開は禁止など様々なので、初めての場合は本人に聞いてみるか貼紙に注意。

フリーライブ/その名の通り無料で楽しめるライブ。チャリティを兼ねる場合もあり。椅子が置かれている場合もあります。

インストアライブ/基本的にフリーライブとほぼ同義だが、CD・DVD等を売ることを主目的としているのでCDショップ等で開催することも多い。特典としてサイン入りポスターが付くことも多い。ぜひCDを買って記念にしましょう。すでにお持ちの方ももう一枚!

D代/入場時に受付で支払うドリンク代の事(飲む飲まないは関係ない)。500円~700円が相場。これがライブハウスの収益となる。引換券(切符のようなものやコインやピック)を渡されるので、無くないようにポケットにしまいましょう。

チャージ料/ミュージックチャージ、いわゆるチケット代(予約のみの場合は入場代を現金で支払う)。「チャージフリー」は無料ライブの意味。投げ銭(額はお好みで)の場合もある。

箱(はこ)/いわゆるライブハウスの事。通常、チケット代の他にドリンク代(食事代)がかかる。

タイバンライブ/複数のアーティストが出演するライブ形式。知らないアーティストとの出会いを楽しみましょう!

ワンマンライブ/アーティストが単独で行うライブ形式。気合を入れて行うのでバンドが付く場合が多い。時間の都合上、本人立会い物販は無いことが多い。

タイテ/タイムテーブル(出演時間表)の略。天候や都合・出演キャンセルにより急に変更になったりする場合もありますので、お目当てに合わせて行く場合はSNSで確認しましょう。

トリ/タイバンライブにおける最後の出演者。概ねトリのみがアンコールを受ける権利を得られる。

推(お)し/自分が推しているメンバーやアーティスト。

フライヤー/無料で配布するチラシや小冊子の事。通常、箱ライブでは入場時・フリーライブでは物販で配布される。ライブハウスのスケジュール表や、アーティストの事を知るための情報が詰まっています。

座席/一般的には自由席だが、車椅子の方は出入りがしやすい場所をキープしましょう。ピアノ弾き語りの方推しは場所に注意。最前列はアーティストから振りなどを強要されやすいので、勇者希望の方はぜひキープしたいところ。離席時はなにか目印になるものを置いておきましょう(貴重品には注意)。

最後の曲です(+1秒の間)/「エーーーーーーーッ!!」とブーイングする合図で。恥ずかしがらずに愛を込めて大きな声で叫ぶのです!(間をおかずにMCする場合もあるので、そのときはやらない)

転換/ステージ上の演者が、他の演者と入れ替わるタイミングで、楽器やマイクをスタンバイしたり音合わせやリハーサルをしたりするので、その間はドリンクを買いにいったりトイレで用を足したり、フライヤーを読んでライブ情報をチェックして過ごしましょう。フリーライブでは推しの出演が終わったら、後方に移動して席を譲るのが上級マナー。

チェキ/グッズの一部として、インスタントカメラで撮影する写真。アーティストとのツーショットやプライベートショットなど。通常サインを書いてもらえます。世界で一つだけなので記念にもなります。チェキ撮影がメニューにある場合は、マイカメラでの撮影はチェキをゲットしてからがマナー。

車いすで観覧しやすいライブハウス・ホールの一例

東京都江東区青海「ダイバーシティ東京」施設内の「Zepp(ゼップ)DiverCity」(エレベータあり)

東京都江東区青海「パレットタウン」施設内の「Zepp Tokyo」(車いす席あり。席種は安い券で)

東京都港区六本木「EX THEATER ROPPONGI」(エレベータ有りだが、大江戸線 六本木駅からのアクセスは分かりにくい為、時間に余裕を見て行くのがお薦め)

東京都渋谷区「LINE CUBE SHIBUYA」(渋谷公会堂)

東京都渋谷区「NHKホール」

東京都千代田区「日本武道館」

※渋谷にSHIBUYA-AXというのがありましたが、閉店になってしまいました。

写真・文:尾道 勝也