指定難病患者の多くは、「特定医療費(指定難病)受給者証」(以下、指定難病受給者証)を利用して治療を受けていると思います。医療費助成を受けられる「指定難病受給者証」。治療を続けるうえで大変心強い存在ですが、一度取得すれば終わりではありません。原則として年に1回、更新手続きを行う必要があります。
この毎年の更新手続きが、当事者にとっては大きな負担……。今回は、実際に更新手続きの中で感じる「3つの大きな問題点」について、当事者の視点から解説していきます。
目次
- 「指定難病受給者証」とは?
- 【問題点1】制度への疑問 ~「治らない」のになぜ毎年更新?~
- 【問題点2】書類が非常に多く、手続きが煩雑
- 【問題点3】更新手続きそのものに高額な費用がかかる
- 2万8千人の声を届けたものの……進まぬ負担軽減の現実
- まとめ:「デジタル化」と「制度の簡素化」を希望
「指定難病受給者証」とは?

「指定難病受給者証」とは、原因が不明で治療法が確立されておらず、長期の療養が必要な「指定難病」の患者が、医療費の窓口負担を軽減するための証明書です。主な助成内容は以下の2点です。
・指定難病に関する治療費の自己負担割合が「2割負担」に軽減される
・1か月あたりの自己負担上限額が設定され、超えた分が助成される
指定難病患者は、この受給者証のおかげで長期の治療を継続できているといっても過言ではありません。しかし、この助成を受け続けるための「更新手続き」には、当事者として強い疑問や負担を感じる3つの問題点があります。
【問題点1】制度への疑問 ~「治らない」のになぜ毎年更新?~

「指定難病受給者証」を利用している多くの人が感じているのは、「そもそも、なぜ毎年更新しなければならないのか」という制度そのものへの疑問です。
指定難病の定義: 治療法が確立しておらず、長期の療養を必要とする疾患
現代の医学では「根本的な治療が難しい」と国が認めているからこそ、指定難病に指定されています。それにもかかわらず、毎年「病気の継続確認」を求められる手続きが発生します。
もちろん、病状の確認や、所得の変化(助成上限額の決定)を把握するためという理由は分かります。しかし、患者側からすれば、「治療法が確立していない病気なのに、なぜ毎年全員が更新しなければいけないのか」と、制度のあり方に疑問を感じずにはいられません。
【問題点2】書類が非常に多く、手続きが煩雑

2つ目の問題点は、「提出書類の多さと手続きの複雑さ」です。
毎年の更新時期になると、自治体から分厚い封筒が届きます。中を開けると、細かな文字で書かれた説明書と何枚もの申請用紙が入っており、これらを見ただけで途方に暮れてしまう方も少なくありません。
都道府県によって多少の違いはありますが、とある県の場合、必要となる書類だけでもこれだけあります。
- 特定医療費(指定難病)支給認定申請書
- 特定医療費支給認定等個人番号記載票
- 本人確認書類(マイナンバー確認用など)
- 所得(非)課税証明書
- 障害年金・遺族年金等の金額がわかる写し(※受給している人のみ)
- 生活保護受給証明書(※受給している人のみ)
- 添付書類の省略に関する調書(※条件が合えば所得(非)課税証明書等の省略が可能)
- 臨床調査個人票(医師が記入した診断書)
- 世帯全員の住民票
- 特定医療費(指定難病)受給者証のコピー
- 健康保険証のコピー
治療が高額かつ長期にわたる人や、申請者以外に指定難病受給者証・小児慢性特定疾病医療受給者証を利用している家族がいる場合などは、さらに追加の書類提出が必要になります。
申請者は大量の書類を揃えるために、体調が万全でない中で役所や病院を往復しなければなりません。記入欄も複雑で、万が一不備があれば再提出となり、さらに手間がかかります。
「体調が悪いからこそ制度を利用したいのに、書類集めで疲弊してしまう」という、本末転倒な状況が毎年繰り返されているのです。
【問題点3】更新手続きそのものに高額な費用がかかる

医療費を抑えるための助成制度であるにも関わらず、「更新手続きそのものに、決して安くない費用がかかる」というのも大きな問題です。
更新申請には、難病指定医が作成する診断書(臨床調査個人票)の提出が必須となります。しかし、この診断書は保険適用外の「文書料」となるため自己負担です。病院によって異なりますが、1通あたり3,000円〜1万円程度かかります。
さらに、役所で各種証明書を取得する手数料や、病院へ行くための交通費なども上乗せされます。提出方法としてレターパックや簡易書留などが指定されている場合もあり、その郵送料も負担となります。
「医療費を助成してもらうために、毎年数千円〜1万円以上の出費を強いられる」という現実は、経済的重荷となっています。
2万8千人の声を届けたものの……進まぬ負担軽減の現実

実は2022年9月1日、28,337人分の署名や切実なコメント・体験談とともに、厚生労働大臣宛てに「指定難病医療費助成制度 更新手続きに関する要望書」が提出されました。
当時の厚生労働副大臣からは、 「手続きが難しいという声は自分のもとにも届いている。デジタル技術を駆使して、少しでも患者負担を減らせるように頑張りたい」 という力強い言葉をいただきました。
制度改善への期待が高まったものの、あれから4年が経過した現在も、大きな負担軽減やシステム上の変化は起きていません。
毎年の更新時期が来れば、患者やその家族は相変わらず分厚い書類と向き合い、体調の不安を抱えながら役所や病院を駆け回る日々が続いています。
【まとめ】「デジタル化」と「制度の簡素化」を希望
「指定難病受給者証」の更新における「制度への疑問」「提出書類の多さ」「費用負担」という3つの問題点は、多くの患者やその家族が毎年ため息をつきながら耐えている現実です。
不正受給を防ぎ、限られた財源を正しく配分するために適切な審査が必要なことは理解できます。しかし、完治が難しい難病だからこそ、以下のような柔軟な対応を希望します。
- 更新期間を延長する
- 情報の連携を推進し、役所での証明書取得や添付を原則不要にする
- オンラインで申請できるようにする(一部の都道府県では実施済み)
「病気と闘うこと」だけでも大変な日々に、複雑な行政手続きという別の負担が重くのしかかる現状。「難病」の定義や置かれている状況に寄り添った制度へと見直されることを願っています。
