スポーツの秋、障がいを持つ方々にとって、気兼ねなく、かつ安全にスポーツを楽しめる環境は、まだ十分に身近とは言えない現実もあります。
そんな中、1986年の開設以来、「障がい者専用のスポーツ施設」として多くの人々の健康増進と社会参加を支え続けてきたのが、東京都北区にある「東京都障害者総合スポーツセンター」です。今回、その熱気あふれる現場を取材しました。

東京都障害者総合スポーツセンターの外観

入口を入り左側に受付があります

充実の設備:初心者からアスリートまでを包み込む「専用」の強み

一歩足を踏み入れて驚かされるのは、その敷地の広さと、障がいの有無や程度を問わず誰もが快適に過ごせるよう徹底されたバリアフリー設計です。

施設内には、広々とした体育館や温水プールのほか、トレーニング室、卓球室、さらには屋外に200mトラックのグラウンド、テニスコート、アーチェリー場までが完備されています。

ネットの下に隙間があり、周囲にフレーム(枠)が取り付けられたサウンドテーブルテニス用の卓球台

サウンドテーブルテニス

車椅子の女性が、台にラケットを這わせるようにしてサウンドテーブルテニスに挑戦している様子

果敢に挑戦する佳山記者

バリアフリー設計の広々とした卓球室に設置された青い卓球台

卓球台

卓球台の奥に設置された、自動で球を繰り出す卓球専用のカタパルト式練習マシン

卓球練習器具

広い卓球室で、白い服の男性から放たれる球を打ち返そうと身を構える寺川記者

神戸記者に挑む 寺川記者(手前)

車椅子に乗った男性が、次々と繰り出されるテンポの速い球に対応している様子

神戸記者の鋭い球出しに苦戦しています。

驚くべきことに、宿泊施設を除けば、障害者手帳を持つ方とその介護者(1名)は、これらの充実した施設を無料で利用することができます。

「まず一歩」を支える、専門スタッフたちの眼差し

屋内プール

プールは車いす対応の設備があります

トレーニングジム

屋外の運動場とテニスコート

館内への泥の持ち込みを防ぐため、床面に埋め込まれた車椅子のタイヤ専用の自動洗浄マット装置

車いすのタイヤの洗浄装置

ハード面の素晴らしさはもちろんですが、このセンターの真の魅力は「人」にあります。
「何かを始めるときには不安がつきものですが、ここでは一人ひとりの障がいの種類や程度、目的に合わせて専門スタッフがサポートします」とスタッフの方は語ります。

館内には、パラスポーツ指導員の資格を持つスタッフや、医師、理学療法士、栄養士といった専門家が連携する体制が整っています。
「今日初めてスポーツをする」という幼児や中途障がいの方から、パラリンピックを目指して本格的なトレーニングに励むトップアスリートまで、同じ空間でそれぞれが自分の目標に向かって汗を流している光景が非常に印象的でした。

手すりが設置された廊下で、床面の黄色い点字ブロックに沿うようにして並んで進む3台の車椅子

施設内に敷かれている点字ブロック

部屋の入り口前の床面に設置された、青、ピンク、黄色に色分けされた凹凸のある柔らかい素材の誘導マット

用途によってソフトブロックになっております

バリアフリートイレのドアは障がいによって使いやすいように、押すタイプ、自動タイプ、スライドドアタイプの3種類あります。

廊下に面した、中央に縦長の窓がついた内開きの2枚折れ戸(押して開けるタイプ)のバリアフリートイレのドア

バリアフリートイレ ドアを押して開けるタイプ閉まった状態

廊下からバリアフリートイレのドアを前方に押し込み、折れ戸が左右に畳まれて入り口が大きく開いた状態

手前側からドアを押して開けた状態

トイレの室内から見た出入口。内側に畳まれた折れ戸の横に、広く確保された洗面台と便器のスペース

奥側からドアを押して開けた状態

女子トイレの入り口横の壁に設置された、手のひらで押しやすい緑(開)と赤(閉)の大きな自動ドアスイッチ

自動開閉式の女子トイレ

スライドドアのバリアフリートイレ

バリアフリートイレ スライドドア

オストメイト対応の流し台、手すり付きの温水洗浄便座、洗面台、ゴミ箱などがゆとりを持って配置された広々としたバリアフリートイレの室内

バリアフリートイレ内部

手すりと点字ブロックが設置された廊下の奥に、フラットな床面で繋がった宿泊室の入り口と案内看板

宿泊施設 最大20名まで宿泊で可能

廊下の壁面に埋め込まれた収納スペースの扉を開け、中に格納されているオレンジ色のエアーホース付き空気入れを見せている様子

車いす用の空気入れ

車椅子に乗ったままでも手が届きやすいよう、通常よりも低い位置の壁面に取り付けられたボタン式の給水機

低い位置に設置された給水機

通路の通行を妨げないよう、壁面が奥に凹んだ構造になっている専用の車椅子保管スペース

車いす置き場

大きなガラス窓から光が差し込む、通路が広く車椅子でも移動しやすい広々とした食堂・軽食コーナーの全景

軽食コーナー

油淋鶏やタコライス、ミックスフライなどの日替わり・期間限定メニューが手書きされた立て看板と、ソファ席の並ぶロビー

軽食コーナーのメニュー表

取材を終えて

スポーツを通じて広がる、豊かな社会取材中、利用者の皆さんの生き生きとした表情と、それを見守り、共に楽しむスタッフやご家族の笑顔が絶えないのがとても心に残りました。東京都障害者総合スポーツセンターは、単に「体を動かす場所」に留まらず、利用者が自信を取り戻し、仲間と出会い、社会とつながる「架け橋」としての役割を果たしています。「行ってみたいけれど、少し不安」と思っている方は、ぜひ一度その扉を叩いてみてください。そこには、温かい笑顔と、新しい一歩を全力で応援してくれる仲間が待っています。丁寧なご説明をいただいた屋敷指導員、ありがとうございました。

資料を広げた机をコの字型に囲み、車椅子の記者や施設の指導員たちが集まって真剣に意見を交わしているミーティングの様子

見学を終えてミーティング

デスクに並び、カメラに向かって和やかな笑顔でピースサインを見せる男性記者と女性の屋敷指導員

神戸記者(左)と屋敷指導員(右)

コの字型に並んだ会議用テーブルの各席から、取材を終えた記者やスタッフ全員が笑顔でカメラを見つめる集合写真

屋敷指導員(中央右)とらくゆく取材スタッフ

名称:東京都障害者総合スポーツセンター
所在地:東京都北区十条台1-2-2(JR埼京線「十条駅」などからアクセス可能)(送迎バス有)
利用対象:身体障害者手帳・愛の手帳・精神障害者保健福祉手帳をお持ちの方、およびその介護者など
利用料金:無料(宿泊施設など一部有料施設あり)
運営:公益社団法人 東京都障害者スポーツ協会(指定管理者)

東京都障害者総合スポーツセンター周辺のアクセスマップ。JR埼京線「十条駅」と、JR京浜東北線・東京メトロ南北線「王子駅」の間、陸上自衛隊十条駐屯地の南側に施設が位置していることを示しています。

東京都障害者総合スポーツセンター案内冊子より抜粋


写真:寺川健一・川谷昌弘 文:小川陽一

東京都障害者総合スポーツセンターHP