僕の親友でU君と言う奴がいる。

中学時代なかなかの悪で、周辺の中学からも
有名で恐れられていた。

学ランの刺繍は龍でも虎でもなく、
背中にドラえもんだ

それはそれで怖い。

彼はよく早弁をした。

それも教室に忍び込他人の弁当を食べ荒らしていたのだ。

食べられた方もドラえもんのU君には怖くて文句が言えない。

ただ、ふと気づくと最近A君の弁当に集中していた。

U君はA君になんの恨みもなかった。

ただ集中したのはA君の弁当が超うまいのである。

その日もA君の弁当を食べ、昼休み何気なく教室を覗くと食ったはずなのにA君が弁当を食べていた。

そうだ、A君は弁当を二つ持ってきたのだ。

A君の母親は弁当を盗まれた我が子の学校に文句を
言いに行くのでなく。

自分の料理がおいしいのなら、まわりに食べさせてあげなさいとでも言ったのかのごとく、大変なのに二つも弁当を用意したのである。

それ以来U君は何故か人の弁当が食えなくなった。

きっと、朝早く起きて我が子に食べさせるため一生懸命になる母親が見えたのであろう。

母親は荒くれの悪ガキに無言で勝利したのである。

U君は今、数十人をかかえる会社の社長をしている。

文/大悟 絵/しんパパ