プロローグ

「実は、スポーツも好き」――。私のそんな一面を知る人は、意外と少ないかもしれません。学生時代には車いすバスケットボールの体験教室に定期的に通ったり、気になるスポーツがあれば練習現場へ見学に赴いたりと、パラスポーツの世界にも昔から魅了されていました。

今回ご紹介する「電動車いすサッカー」も、実は以前に少しだけプレーさせていただいた経験があります。

先日、らくゆく編集部メンバーでその体験イベントにお邪魔し、体験やトップ選手の練習見学をさせていただきました。今回は、個人的にも注目している「電動車いすサッカー」の奥深い魅力と、今まさに世界へと挑む日本代表の最新トピックスについてお届けします!

1.そもそも「電動車いすサッカー」とは

電動車椅子の前に
ガードを取り付けて行うサッカーです。

電動車椅子サッカーとは、電動車椅子の前にガードを取り付けて行うサッカーです。自立した歩行ができないなど比較的重度の障害を持った選手が多く、ジョイスティック型のコントローラーを手や顎などで操りプレーします。性別による区分はなく、 男女混合のチームで行います。国際的な呼称は「Powerchair Football」となっており、スピードは時速10km以下と定められています。直径約32.5cmのボールを使用、繊細な操作で繰り広げられるパスやドリブル、回転シュートなど華麗かつ迫力あるプレーが魅力です。

(出典: 一般社団法人 日本電動車椅子サッカー協会)

2.電動車いすサッカーのイベントへ

お邪魔したのは、港区スポーツセンターで開催された「電動車いすサッカー体験イベント in 東京」(同時開催)「トップ選手 練習会・見学会」(主催:一般社団法人 日本電動車椅子サッカー協会 / 助成:日本財団 HEROs)です。会場は参加費無料・予約不要で、誰でも気軽に立ち寄れるオープンな雰囲気でした。

サブアリーナで行われた試乗体験では、実際に競技用電いすに乗り、ドリブルやシュートに挑戦することができました。専門スタッフの方が丁寧にサポートしてくれるため、初めての方やお子さんでも安心して体験できるあたたかい雰囲気に包まれていました。

木目調の壁に掲げられた、電動車椅子サッカーイベントの赤い横断幕。「トップ選手たちとサッカーしよう!」と大きく書かれ、イラストや主催団体のロゴも入っている。
体育館のコートで、2人の選手が競技用電動車椅子に乗り、中央にある大きなサッカーボールに向かい合っている様子。奥にはスタッフや見学者が座って見守っている。

 

3.楽しさを体感!試乗体験レポート

いざ挑戦してみると、ボールをコントロールする難しさと、ドリブルの感覚の気持ちよさ、走る爽快感、うまくいったときの達成感に一気に引き込まれます。

体育館で、女性が専用のガードを取り付けた簡易電動車椅子に乗り、電動車椅子サッカーのボールをドリブルしている様子。
  • 体育館で、簡易電動車椅子に乗った女性が笑顔を見せ、スタッフの女性がその車椅子に専用のガードを取り付けている様子。背景には、他の参加者や電動車椅子、サッカーゴールなどが見える。
  • とても楽しかったです!

  • 体育館で、専用ガードを取り付けた車椅子に乗る男性と女性が、中央の大きなボールを挟んで対峙している様子。右側にはサッカーゴール、中央奥の壁には「トップ選手たちとサッカーしよう!」の赤い横断幕が掲げられている。


💬 らくゆく編集部メンバーの体験&見学の感想

一緒に取材へ行った「らくゆく」編集部メンバーからも、驚きと感動の声が寄せられました!

  • 大道寺さん(試乗体験)
    • 指先ひとつの繊細な操作感:「レバーを少し動かすだけで反応する繊細さに最初は緊張!でも慣れてくると『身体の一部のように動かせる便利さ』に感動しました」
    • 『競技用モード』の異次元のスピード:「普通モードから『競技用モード』に切り替えた瞬間、加速と旋回スピードが劇的にアップ!あのマシンを激しくせり合いながらミリ単位で操る選手たちの技術には圧倒されるばかりです」
    • 温かい会場の雰囲気:「選手やスタッフのみなさんが優しく丁寧にレクチャーしてくださり、終始笑顔が絶えない素晴らしい一日になりました」
  • Tさん(試乗体験)
    • 思い通りにいかない難しさと選手の凄さ:「初めて競技用に乗りましたが、ドリブルやシュートが思うようにいかずめちゃくちゃ難しかったです。自分の思い通りに自在に操作している選手のみなさんには本当に驚きました!」
    • あたたかい空気感:「選手やスタッフのみなさんが明るく笑顔で接してくれたので、会場全体がとてもあたたかい雰囲気に包まれていました」
  • ジュンさん(見学)
    • ボールの存在感とスピードに圧巻:「ボールを足で蹴る機会があったが、重くて硬く、選手の迫力あるシュートや想像以上のスピードに『激しいスポーツだ!』と実感しました」
    • 競技の奥深さと可能性:「サポート体制やルールも整備されていて競技としての成熟度を感じました。健常者も『やってみたい!』と思える、非常に魅力的なスポーツです」
  • ノアさん(見学)
    • 空気の振動まで伝わる迫力:「間近で聞くボールを蹴る音が気持ちよく、空気の振動を肌で感じるほどの迫力がありました!」
    • 回転シュートの美しさに感動:「フリーキックで一度一回転して勢いをつけるなど、電動車いすを自分の身体のように操る技術に脱帽しました。指先しか動かなくてもスポーツはできるんだ、と胸が熱くなりました」
    • 体育館で、競技用電動車椅子に乗った男性がジョイスティックを操作しながら楽しそうに笑顔を浮かべている様子。車椅子の前部には青い専用ガードが取り付けられている。

日常で使っている車いすでもサッカーができる!奥深さを実感

実は、日常で使っている車いすでもサッカーが楽しめます。
今回、私は自身の簡易電動車いすに「ファンガード」というパーツを取り付けて体験させていただきました。

💡 ファンガードとは?
簡易型電動車いす、または自走用車いすに取り付けて車いすサッカーを楽しむフットガードです。

ピンク色の専用ガードが前面に取り付けられた電動車椅子。手前や奥には車輪にイラストが描かれた車椅子や青いパーツが並べられている。

▲ イベント会場に用意された、ファンガード装着済みの試乗用車椅子

開発者・中村詩子さんに聞く「ファンガード」誕生のストーリー

体育館で、車椅子に乗った女性に対し、眼鏡をかけた女性がファイルを開いて丁寧に説明をしている様子。

会場では、ファンガードの開発者である中村詩子(うたこ)さんにお話を伺えました。

1. 「サッカーがしたい」子どもたちの声からスタート
きっかけは、障がいのあるお子さんからの「サッカーがしたい」という相談でした。 通常、電動車いすサッカーで使用する競技用の車いすは約200万円と非常に高価です。子どもたちが「やってみたい!」と思っても、費用面などの理由からすぐに始めるのは簡単ではありませんでした。

2. 「ないなら作ろう」手作りからの挑戦と共同開発
「それなら自分たちで作ってみよう」と、まずはプラスチック素材などを使った手作りから始まり、 コンテストで優秀賞受賞!ブラシュアップを重ねました。多様な関係業界企業や、横浜市総合リハビリテーションセンター、障害者スポーツ文化センター ラポールなどの施設と連携して開発を進めました。「キッズデザイン賞」も受賞しました!
 

3. 移動具の壁を越え、誰もが安全に楽しめる工夫
日常で使っている車いすは競技用のような頑丈さはなく、スピードもゆっくりです。また、姿勢保持が難しいお子さんもいます。そのため、誰もが安全に楽しめる独自のルールづくりも行われています。
さらに、誰もが参加しやすくなる取り組みも行われています。

多様な移動具に対応: バギーや市販電動車いすといった多様な移動具でも参加できるよう工夫。
手軽なDIY提案: 学校などで「まずはボールを蹴ってみたいだけ」という方のために、プラスチックの段ボール、結束バンドを使って自作できる方法も提案。
 

「車いすファンサッカー」

日常で使っている車いすや簡易形電動車いすで行うサッカーを「車いすファンサッカー」と名付け、現在では「車いすファンサッカー協会」も設立され、車いすサッカーの輪が広がっています。
電動車いすだけでなく手動車いすでもプレーできる点も大きな魅力です。手動車いすならではの機敏な動きを生かしたプレイなどもみられます。

広い体育館のコートで、専用ガードを取り付けた手動車いすに乗る2人の男性が、ボールを挟んで練習や体験を行っている全景。周囲にはポールが立てられ、遠くの見学席や壁際に人が集まっている。

▲今回の取材で実際に手動車いすで体験させていただいた様子。

「費用や機材の壁」を乗り越え、誰でもスポーツを楽しめる「ファンサッカー」。気になった方は、ぜひイベントや体験会に足を運んでみてください!

 

4. 日本代表候補が集結!息をのむプレーと選手交流

試乗体験と同時開催されていたのが、「電動車いすサッカー日本代表候補 練習会・見学会」です。コート上では、世界を見据えるトップ選手たちの迫力あふれるプレーを間近で見学することができました。
目の前で繰り広げられたのは、代表候補選手たちによる圧倒的な練習風景です。電動車いすと大きなボールのやり取り、見事なボールコントロール、そして華麗な回転シュート! 自分が試乗体験をした直後だったからこそ、「あの動きをこのスピードと精度で行う凄さ」が身にしみて分かり、会場全体が息をのむような熱気に包まれていました。

体育館で、手前に後ろ姿の選手、奥に専用ガードを取り付けた競技用電動車椅子に乗る男性選手が位置し、激しく転がる大きなサッカーボールに向かってプレーしている様子。

🎤 代表候補選手へのインタビュー!
練習試合後の交流会・質問タイムでは、選手のみなさんが質問に答えてくださいました。

体育館で、専用ガードを取り付けた競技用電動車椅子に乗った選手たちが一列に並んでいる。背景には「HERO'S」の横断幕や「JFA」のロゴが見える。

Q. 日頃、練習や試合で意識していることは何ですか?
内橋選手:「個人はもちろんチームワークが大切なので、やっぱりそこを一番大事にしています」
山田選手:「スポーツなので『試合に勝ちたい』という気持ちが一番ですが、相手があってこそ成り立つもの。相手へのリスペクトの気持ちを大切にしています」

Q. 電動車いすサッカーの魅力は何だと思いますか?
池田選手:「さまざまな障がい者サッカーがありますが、その中でも電動車いすサッカーは『身体を使わない』という少し特殊な競技です。足技の凄さなどを見せることはできませんが、その分、マシンを使って他では見られない色々な技術を伝えられる。そこがすごく魅力だと感じています」

などのお話を聞くことができました。 会場には小さなお子さんの姿もあり、「楽しかったです!」と感想を伝える場面も。
選手たちの真摯(しんし)な姿勢と競技への熱い想いに触れ、ますますこのスポーツに魅了されました!

5.世界へ挑む日本代表と、広がる可能性
現在、電動車いすサッカーは世界に向けて大きな注目を集めています。

  • FIPFAワールドカップ挑戦:本年10月にはアルゼンチンにて「FIPFAワールドカップ」が開催され、JPFA日本代表選手団が世界一を目指して挑戦します。
  • 2030年ワールドカップの日本誘致:2030年大会の日本開催誘致活動が、東京都の「国際スポーツ大会日本誘致活動の助成金事業」に採択されました。国内における認知向上と普及に向けて、大きな一歩を踏み出しています。
  • 重度の障がいがあっても、テクノロジーと工夫次第でトップアスリートとして輝くことができるこの競技。テクノロジーとともにこれからの可能性を広げています。


6.まとめ
今回の取材を通じて、障がいの有無や年齢を超えて誰もが熱狂できる「エキサイティングなスポーツ競技」であることを改めて実感しました。

「観るスポーツ」としても、「プレーするスポーツ」としても魅力が詰まった電動車いすサッカー。ぜひみなさんも、日本代表の活躍を応援したり、お近くのイベントでその迫力を体感してみてください!
【大会・イベントの最新情報はこちら】 一般社団法人 日本電動車椅子サッカー協会(JPFA)

 

この度は本当にありがとうございました!

 

写真:小川陽一・寺川健一・ノア・ジュン 文:佳山