視覚障がいと向き合いながら生活をしていると、さまざまな場所や場面で「この作業はちょっと大変だな」「なぜこんなに不便なんだろう」など、小さなストレスや疑問を感じることがあります。
ITの進歩やアクセシビリティの概念が確立されたことにより、便利になったこともある一方、私たちの暮らしにはまだまだ課題が残っているのかもしれません。
この記事では、視覚障がい(弱視)の筆者が、日常生活(特に買い物)の中でぶつかった悩みやその対処法について紹介します。
目次
- 視覚障がい者が買い物で感じる悩み
- 例①/ショーケースから食べたいものを選ぼうとしたら・・・
- 例②/セルフレジに思う「なぜ?」
- 例③/クレジット決済に感じる、セキュリティと見やすさを両立する難しさ
- 自分なりの対策、お店に望むこと
- まとめ
視覚障がい者が買い物で感じる悩み
視覚障がいがあると、日常の歩行や行動などにさまざまな支障が出てくることがあります。
私自身も、買い物に出てみるとちょっとしたことで時間がかかったり、戸惑って、ときには買い物自体をやめてしまうこともありました。
特に今、悩んでいることは「値札やセルフレジの表示の見づらさ」です。
私は視力が低く、小さい文字を拡大しないとしっかりと読むことができません。そのため、商品選びや支払いといった、さまざまな大きさの文字を確認して短時間での対応が求められる状況ではよく悩んでしまいます。
例①/ショーケースから選ぼうとしたら・・・

▲値段や商品名、食材など情報が多いお惣菜店の値札は、弱視者にとっては「値段はわかるけど、どんな商品なのか分からない・・・」と思ってしまうことも
お惣菜屋やケーキ屋で自分が食べたい商品を買うとき、ショーケース越しだと商品の内容や値札が見づらく、選ぶのに時間がかかってしまいます。
店員さんに見えづらいことを話して、商品について説明してもらうこともありますが、混雑時にたくさんある商品を一つずつ解説してもらうのは大変申し訳ない気分になります。
また、時間がないときに急いで選んで、帰って食べてみたら予想とは全く違う商品だった・・・ということもあるので「味だけならともかく、食物アレルギーがある人にとってはよりハードルが高いだろうな」と思ったりもします。
例②/セルフレジに思う「なぜ?」

▲会計時間を減らすためのセルフレジですが、操作に焦ってかえって時間がかかってしまう経験もありました
近年は、自分で商品を選択したり、バーコードをスキャンして支払いまで行えるセルフレジを設置する店が多くなりました。
しかし、タッチパネル操作やディスプレイに表示された細かい文字を確認することが苦手な視覚障がい者にとっては、対面のレジより時間がかかってしまうことがあります。
何度も利用する店舗であれば、徐々に慣れていきますが、初めて行った場所でセルフレジしか置かれていなかった場合、操作が分からず、しばらく機械の前で立ちすくんでしまうことも少なくありません。
やむを得ず店員さんを呼ぶこともありますが、後ろに列ができてしまい背後の人から文句を言われたときには辛い思いをしました。
また、私は身長が低く、商品を選択するディスプレイが比較的高い位置にあると、ただでさえ見えづらいのにパネルに手が届くこと自体に苦戦することもあります。
「なぜ、高い位置に設置されているのか? 列の後ろの人に操作の様子が見えてしまわないのか?」という点も気になります。
例③/クレジット決済に感じる、セキュリティと見やすさを両立する難しさ

▲誰もが安心してスマートに使えるシステムの開発を望みます
支払いでクレジットカード決済をする場合、暗証番号の入力が必要になることがあります。
セルフレジと同じく、こちらもタッチパネル操作の機械が増えています。
その中でも、タッチパネル内にランダムで数字が表示され、そこから自分の暗証番号を押していくタイプのものは一苦労。
こうした機械の画面は、セキュリティ保護の観点からかだいぶ薄暗くなっているため、暗い場所や表示を見ることが苦手な網膜色素変性症の自分にとってはハードルが高く感じられます。
タッチペンで名前をサインすることは何とかできますが、暗証番号入力しかできなかったときは、決済完了までに10分ほどかかってしまいました。
自分なりの対策、お店に望むこと

▲買い物でも、スマホが活躍
障がい特性が原因で買い物に不便さを感じている場合、店員さんにサポートを頼む、家族や友人と一緒に来店する、通販やモバイルオーダーで注文する、ガイドヘルパー(同行援護)を利用するなどの選択肢があります。
同行援護を利用して買い物へ。ガイドヘルパーが注意することとは?|同行援護事業所おとも
ガイドヘルパーは、専門のスタッフがお店までの安全な移動や商品選び、支払いをサポートしてくれる制度です。
※注意※ 利用には事業所によって、予約や登録が必要な場合があります
一方で、急に必要なものができて同行者の確保が間に合わなかったり、通販では取り扱いがない商品が欲しくなったとき、やむを得ずお店に行く必要が出てきます。
そして、障がいがあっても自分のペースで商品を手に取って買い物を楽しみたいという人もいるでしょう。
私が一人で買い物をするときに工夫していることや、お店に理解してもらいたいことを紹介します。
スマホの拡大機能やアプリを使う
値札を手に取れる場合は、iPhoneに標準装備されている「拡大鏡」機能を使います。
カメラ部分を見たいものにかざすと文字が拡大できる仕組みなので、今はスマホさえ持っていればわざわざ大きめのルーペを持ち歩く必要がありません。
拡大率はもちろん、コントラストや色合いの設定もできるため、状況に応じて見やすさを調整して利用します。
iPhoneの「拡大鏡」で近くのものを拡大して説明する
iPhoneの拡大機能は、操作がしやすく大きめに拡大できるので便利です。
(無料/iPhone標準機能)
次のアプリも、商品の表示の確認などをサポートしてくれます。
Be My Eyes
24時間、対応可能なボランティアにビデオ通話で値札や商品パッケージに書かれている内容の代読を頼むことができます。
人に聞くのが不安な場合は、カメラで撮影した画像をAIに説明してもらう機能もあります。
(無料/iPhone・Android対応)
値札に、詳細情報にアクセスできるQRコードがあるとありがたい
最近は服屋の商品タグにはQRコードが印字されており、そこから通販サイトや商品の詳細ページにアクセスできるようになっています。
私にとってはこれが意外と便利で、現物を見ても色合いが分かりにくい場合「この商品には他にどんなカラーがあるのか?」を知っておくだけでも選びやすくなります。
サイトに値段やサイズが表記されている場合は、直接値札に近づいてスマホで拡大しなくても詳細をチェックでき、店員さんに質問もしやすくなるでしょう。
お惣菜屋などでも、QRコードでその日のメニュー一覧をチェックできるような仕組みが広まれば、安心して買いやすくなると思います。
支払いや注文方法には選択肢を
クレジットカード決済の場合は、認証方法を選択できると安心できます。
タッチパネル入力だけでなく、障がいの特性によって手書きのサインのほうがしやすいケースもあるということを理解してもらえると助かります。
まとめ
障がい当事者の生活面の安全性や利便性は、本人の特性や能力だけでなく、周囲の環境によっても大きく左右されるところがあります。
当事者が一人でもスムーズに行動できる環境が整うことは、周囲がサポートする時の負担も軽くなるため、誰もが快適に暮らせる社会の第一歩につながるでしょう。
今後も、障がいの有無に関わらず、安心して快適に生活するためのシステムやサービスが増えてほしいと思います。
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文/野崎恵美子(網膜色素変性症)
