<ある家の味>
子供の頃、親父は魚のあら汁が好きだった。
食卓にはわたしら子供たちに魚の切り身があり
親父にはあら汁だった。
お袋も子供用と大人用2つ用意して大変だなぁ~と、子供心に思っていたが、
今考えると決して裕福な家庭でなく行きつけの魚屋で安いあらを買って親は安いあらを食べていたのだろう。
でも親父はここが一番うまいんだとニコニコしながら食べていた。
最近わたしも他界した親父を思い出しあら汁を食べると笑顔になってしまう。
親の有難さと思い出す親父の笑顔が最高のスパイスとなって美味しくいただける。
<思い出の味>
中学の時、京都に修学旅行に行った。
お土産は定番の八つ橋だった。
おせんべいと生八つ橋を買ったのだが、断然生八つ橋が美味しいと思った。しかし最近おせんべいの八つ橋を時々食べる。たまたま見かけた八つ橋物語を読んでからだ。
物語は…
若くして夫をなくした母親が夜遅くまで働いたいたが、幼い息子と娘が母親に会いたさのあまり仕事場に会いにいく途中川におち命をおとす。
母親は悲しさのあまり仏門に入るが、悲しみの中ある日夢にお坊さんが現れあなたのような悲しい母親をもう出してはならないといい、その母親に橋を作るようお告げをするのだ。
その橋が8つの板を継ぎ合わせてつくられていたから、八つ橋というお菓子ができたという話だ。
その話がおせんべいの味をかえたわけでもなんでもないが、わたしには甘い美味しいお菓子となった。
文/大悟 絵/しんパパ