週刊連載エッセー 10月11日 (月曜日) 

秋になると、新潟の親戚と、埼玉の夫の元同僚が、自分で育てた新米を届けてくれます。届いた日、まずはあっさりとした和食で、まっ白いごはんを堪能。週末には家族恒例の新米手巻きずしで、光るすし飯をほおばります。
新米は不思議です。訪ねてくださった方に「新米が届いたので一回分ですがお持ちになりませんか」と聞くと、いつもは遠慮深い方も、誰ひとり断らないのです。
みなさん、うれしそうに小袋を持って帰って下さいます。思うのですが、これが〝新米の力〟なのではと。新米は私たちにとって特別な恵みなのではと。
甘く光ってふっくらとした新米をかみしめるとき、幸せを感じます。

作って下さった方とこの秋の平穏に感謝、いただきます。

 


・イラスト/いなだ 牧子

著者・並木 きょう子/東京都在住。フリーライター。人の生き方を独特の視点で描く人物ルポ、軽妙なエッセイ執筆。著書にエッセイ「ごちゃまぜ同居行進曲/主婦の友社刊(テレビドラマ化)」「300字の小さな幸せレシピ/アップオン刊」ほか多数。
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※新しいエッセイは毎週月曜日に掲載します。
※8月23日号 長男が、大人の背丈になったとき
※8月30日号 食卓を片付けながら
※9月  6日号 庭のブドウの樹
※9月13日号 ある年の初秋、結婚披露宴で
※9月20日号 「お月さま」に祈ります
※9月27日号 「この枝を切ります」
※10月4日号 多摩川の鉄橋で