週刊連載エッセー (2月7日)
バレンタインデーが近づきました。
10年ほど前、私の娘が『ショコラティエ ミキ」という手作りチョコレート屋さんを開店。始めの何年かは人手の足りないとき、私も売り場に駆り出されました。娘の作ったチョコをお客様に売る。不思議な体験です。路地裏の小さなお店のドアをそっと開けて入ってくるお客様の顔は、どこかかたい表情です。お店では生のボンボンショコラの小さな試食を出すのですが、それを召し上がると、ほとんどの方の表情がやわらぎます。
すっと力が抜けて幸せそうな表情になるのです。1センチの小さな手作りチョコが皆さんの表情を変える瞬間を、ずっと見てきました。
娘がよく話す「チョコレートは神様からの贈りもの」という言葉を実感した日々でした。
・イラスト/いなだ 牧子
●ショコラティエ ミキ
〒157-0062 東京都世田谷区南烏山4丁目9 -11
著者・並木 きょう子/東京都在住。フリーライター。人の生き方を独特の視点で描く人物ルポ、軽妙なエッセイ執筆。著書にエッセイ「ごちゃまぜ同居行進曲/主婦の友社刊(テレビドラマ化)」「300字の小さな幸せレシピ/アップオン刊」ほか多数。
ⒸKyoko Namiki,Makiko Inada&upon factory
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※新しいエッセイは毎週月曜日に掲載します。
※8月23日号 長男が、大人の背丈になったとき
※8月30日号 食卓を片付けながら
※9月 6日号 庭のブドウの樹
※9月13日号 ある年の初秋、結婚披露宴で
※10月4日号 多摩川の鉄橋で
※10月11日号〝新米の力〟
※10月18日号 今夜の君は美しい!
※10月25日号〝湯気マジック〟
※11月 1日号 日本のお母さんの手
※11月 8日号 紅葉を楽しみに
※11月15日号 花の〝花道〟に
※11月29日号 ボージョレ・ヌーボーの季節
※12月 6日号 年の瀬に向かって
※12月13日号 母の口紅
※12月20日号 おつき合いは、シンプルに
※12月27日号 急なお客さまに……
※ 1月 3日号 新年の抱負
※ 1月10日号 名前で呼んでください
※ 1月17日号 義姉のピアノ
※ 1月24日号 日本の雪
※ 1月31日号 全員が、天ぷらうどん