週刊連載エッセー(6月20日)
3年前、キッチンの床をリフォームしたとき、床下収納の一番奥に数本の広口びんを発見しました。
今は亡き義父母が、毎年、青梅のころに作った梅酒です。
梅酒を作るとき、ふたりは妙に張り切り、いそいそと楽しそうでした。びんには「平成4年6月作成」のメモ。
ふたを開けると、液体は濃い琥珀色で甘い香りです。
おそるおそる口に含むと、濃厚で芳醇な味わい。
20年の歳月が梅酒を熟成したのでしょうが、びんの中にはあの日の義父母の時間、思い、笑顔や笑い声もいっしょに詰め込まれている気がしました。それでおいしいのだと。
手作りのもつ、不思議な力を感じました。
今夜も感謝を込めて、「梅酒に乾杯!」
・イラスト/いなだ 牧子
著者・並木 きょう子/東京都在住。フリーライター。人の生き方を独特の視点で描く人物ルポ、軽妙なエッセイ執筆。著書にエッセイ「ごちゃまぜ同居行進曲/主婦の友社刊(テレビドラマ化)」「300字の小さな幸せレシピ/アップオン刊」ほか多数。
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※新しいエッセイは毎週月曜日に掲載します。
※8月23日号 長男が、大人の背丈になったとき
※8月30日号 食卓を片付けながら
※9月 6日号 庭のブドウの樹
※9月13日号 ある年の初秋、結婚披露宴で
※9月20日号 「お月さま」に祈ります
※9月27日号 「この枝を切ります」
※10月4日号 多摩川の鉄橋で
※10月11日号〝新米の力〟
※10月18日号 今夜の君は美しい!
※10月25日号 〝湯気マジック〟
※11月 1日号 日本のお母さんの手
※11月 8日号 紅葉を楽しみに
※11月15日号 花の〝花道〟
※11月29日号 ボージョレ・ヌーボーの季節
※12月 6日号 年の瀬に向かって
※12月13日号 母の口紅
※12月20日号 おつき合いは、シンプルに
※12月27日号 急なお客さまに…
※ 1月 3日号 新年の抱負
※ 1月10日号 名前で呼んでください
※ 1月17日号 義姉のピアノ
※ 1月24日号 日本の雪
※ 1月31日号 全員が、天ぷらうどん
※ 2月 7日号 バレンタインデーの季節です
※ 2月14日号 瀬戸の夕焼け
※2月21日号 あたりまえの毎日が……
※2月28日号 ひな祭りの前夜
※3月 7日号 東日本大震災から、11年です
※3月14日号 山菜から春は香って
※3月21日号 祖母は51歳
※3月28日号 新しい日に向かって
※4月4日号 桜の花に「ありがとう」
※4月11日号 あたりまえに、前向きに
※4月18日号 片手鍋のボランティアさん
※4月25日号 笑います、笑わせます
※5月2日号 「母の日」のデパートの売り場で
※5月 9日号 花好きの、姉たち
※5月16日号 新茶はいかがですか?
※5月23日号 私たちのベンチ
※5月30日号 北海道の味の〝おもてなし〟
※6月 6日号 雨の日も幸せ
※6月13日号 『父の日」に思うこと