第2回目

車いす対応診療台が役立っています

 

 前回は車いす患者の診断時に必要なレントゲン撮影について述べたが、今回は実際の歯科治療について見ていこうと思う。
車いす患者であっても、治療内容によってはそのまま車いすに座った状態で処置できることも多い。


例を挙げれば、歯石除去などの機械的口腔清掃、義歯(入れ歯)の調整や作製、下顎歯の虫歯治療や抜歯、抜歯後の消毒や抜糸など多岐にわたる(図1)。

しかし、上顎歯、特に奥歯の難しい抜歯や歯根の治療などは術者が治療部位を視認しにくく処置が困難であるため、その分患者にも身体的・精神的な負担がかかりやすい。


また、視認しやすい治療部位でも治療時間が長くなる場合、車いすに座る時間が長くなれば患者の負担になることもある。
そのようなケースでは、患者を診療台に移乗して診療台を倒し、水平位の姿勢で処置を行う必要がある。
しかし、車いすから診療台に移動する際、介助が必要なことも多く、多くの歯科医院で使用している診療台ではスペースの関係などで移動に手間がかかりやすい。


また、万が一、転倒でもすれば骨折などのリスクも伴うため、安全面からも好ましくないのは明らかである。
高齢患者が中心で車いすユーザーの多い当院歯科では、そのような問題を解決できる診療台を採用している。


診療台を0~180°の角度で回転できるため(図2)、車いすを適切な位置まで近付けることができ、側面や後方からでも患者がスムーズに診療台に移動することが可能である(図3)。


また、図2右の矢印で示すように、可動式のホルダーが備え付けてあるため、これも回転させて適切な位置まで動かせば、患者がそこを握ることによってさらに体が安定して移動しやすくなる。
安全かつ効率的に移動できれば患者の負担も軽減でき、歯科治療も能率的に行いやすくなるため一石二鳥である。
このような車いす対応診療台を採用する歯科医院が今後、増えていくことに期待したい。
 

【参考資料】
長田電機工業ホームページ(オサダの歯科機器/オパルコンフォート)
https://www.osada-electric.co.jp/dental/products/unit/OPL_comfort.html
 


文/島谷 浩幸
医療法人 恵泉会 堺平成病院 歯科科長
https://sakaiheisei.jp/

 

■シリーズ■
第1回目 バリアフリー歯科医院の盲点レントゲン撮影できますか?
 

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