2011年~2015年にかけて、おとなの週末本誌で掲載してきた「帰ってきためんくい鈴木 バリアフリーで旨い店見つけます!」。おとなの週末という雑誌は、覆面取材で探した本当に美味しい店を紹介するのが特徴の情報誌ですが、なかでもバリアフリーに力を入れている店舗を、このコラムで数多く紹介してきました。おとなの週末のWEB版でも特徴のある店を掲載してきました。

 全49回の連載では美味しい店だけでなく、ホテルチェーンや有名神社のバリアフリー度を調査したり、プロ野球の野球場のバリアフリーの取り組み方なども取材・掲載しています。

 あれから7年がたち、当時の取材店のバリアフリー度がどうなっているのか? いまでも変わらず熱心に取り組んでいるのか? 当時、「バリアフリーで旨い店」をリサーチしてきたライター山岸朋央氏が、あらためてその味と施設の様子を取材して、やはりココはおすすめという店をご紹介します。

 今回、再取材に向かったのは2011年11月に取材し、連載第9回目に取り上げた、路面店ではとても珍しい、車いす対応トイレのある和食居酒屋『御苑 炉庵』です。2023年3月に覆面で再リサーチしたところ、飲食店激戦区の新宿で10年以上経った今も、バリ旨店として愛され続けていました。こちらもまた、今改めて紹介すべき店だと確信しました。

 それでは、まず当時の記事(WEB版・2014年6月公開)をご覧ください。


車いす利用者目線を大切にする囲炉裏のある和食居酒屋


障がいの有無と酒が飲めるか否かは、基本的に関係ありません。当然、車いす利用者でも酒が飲めない、嫌いという人もいれば、酒が大好きという人もいます。2012年1月号に掲載した『御苑 炉庵』は、そんな酒好きの車いす利用者待望の和食居酒屋でした。

「車いすでも楽しめる居酒屋を作ろう」

新宿御苑の北側にある同店開業の出発点は、この想いだったといいます。
どうすれば車いす利用者に楽しいと思ってもらえるのか?
それは当事者自身に聞くのが一番の近道だろう。
バリアフリー施設が陥りやすい、健常者目線での「やってあげました」というものではなく、車いす利用者自身が望む、使いやすくて楽しめる店作りを同店は目指したのです。

設計段階からかかわってもらった車いすの知人には、作業中の現場でも通路幅や車いす対応トイレの広さなどを細かくチェックしてもらったといいます。特に、カウンターやテーブルの高さの調整は、何度も実際に座ってもらい、ミリ単位で行ったとか。

車いす利用者目線を大切にした結果、店舗前や店内に段差を作らないという基本はもちろんのこと、通路はすべて1m以上を確保、車いすのまま利用できるカウンター席とテーブル席の設置、車いすが回転できる広さを備えた車いす対応トイレなどハード的には理想的と思えるバリアフリー店舗を実現しました。

普通なら60席は確保する広さの店舗を、バリアフリー化することで、45席とした同店。しかし、車いす以外の利用者にも、ゆったりとした空間で心地良く酒が飲めると好評を得ているそうです。

もちろん、同店自慢の大きな囲炉裏で焼かれた魚介類などの味は、取材直後に鈴木隊長が「チームめんくい」の忘年会を予約するほどの絶品揃い。
障がいの有無に関係なく、誰もが旨い酒と和食を楽しめる店をお探しなら、こちら『御苑 炉庵』がおススメです。


それでは、今回の再覆面取材の結果は・・・
 

囲炉裏のあるバリアフリーで旨い店


 新宿御苑の北側、丸ノ内線・新宿御苑駅から徒歩1分のところにある『御苑 炉庵』。密集したビルに多種多様な飲食店がひしめくなか、和を感じさせる黒を基調としたシックな店構えが、相変わらず目を引きます。間口の広さを有効に生かしたとても緩やかなスロープが、車いす利用者や足腰の弱い人たちの入店を歓迎しています。そして、スムーズに開閉可能な大きな木製の引き戸の出入口は、車いすでも楽々通れる幅100cm。何度調査しても入店するまでのバリアフリー度は完璧です。

▼広い道路に面した店舗だが、スロープが急にならないように工夫されている

  店内へと歩を進めると、真っ先に目に飛び込んでくるのは、長さ13mにも及ぶコの字型のカウンターとその中に鎮座する大きな囲炉裏。食欲をそそるいい香りが店内に漂っています。もう、よだれが止まりません。

▼店内に設置した囲炉裏が特徴的

  車いすに乗ったままでも利用可能な高さに整備されたカウンター席。もちろん、店内奥にあるテーブル席も車いすのまま利用可。さらに、掘り炬燵式の個室へのアプローチも通路幅100cm以上で、車いすでもまったく問題ありません。

▼奥の席は車いすでも利用できるように調整されている

 そして、飲酒時に欠かせないトイレが、男女別の洋式トイレのほかに、車いす対応トイレが設置されているのは、何回見ても感動せざるを得ません。

▼カウンター席の近くに設置された車いす対応トイレ

 もちろん、真っ赤に燃えた備長炭の周りに串刺しにした魚介類などを立てて焼くことで、煙がほとんど出ない囲炉裏焼は、備長炭の遠赤でふっくらと焼かれ、どれも抜群の旨さです。酒の進むこと間違いなしと思われますが、店主の大嶋徳次郎さんによれば、ここ数年は、コロナ禍ということもあり、車いす利用者の来店は少ないと言います。

「車いすの人でも楽しめる居酒屋を作ろうということで始めた店なので、もっと気軽に来てほしいのですが、車いすの常連客は、開店時から毎月1回は必ず来てくれる大学の先生ぐらいですかね。あと、杖が欠かせないご年配の方が、ここはトイレが安心だと、トイレ近くのカウンター席を指定席にして長年通っていただいています」(店主の大嶋さん)

 お酒好きな車いす利用者のみなさん、飲食店激戦区の新宿で店舗を構えて13年近いこのバリ旨な居酒屋、はっきり言って、おススメです。

 

取材・文 山岸朋央 構成 城新一

 

【店舗情報やメニューなどはこちらをご覧ください】
・店舗公式HP
https://gac9100.gorp.jp/
 


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