「文化学園大学学生×Co-Co Life☆女子部」企画

身体に障がいのある人の衣服について、文化学園大学の学生さんがCo-Co Life☆女子部と共同でアンケートを実施しました。オシャレ感度の高い読者のみなさんからファッションについての有益な声がたくさん届きました。障がい者の困りごとや提案で今ある衣服を進化させられるかもしれないって考えると素敵ですよね。そんな未来が見えてきたわくわくがとまらないアンケート結果がでました!


目次 
1 洋服を買うときに気にすること
2 洋服選びのポイントは?
3 リメイク品やオーダー品を買ったことはある?
4 洋服のリメイクやオーダー品ってどんなことしたの?
5 ファッションと補助具のカンケイ
6 ファスナーやボタンについて困った経験ある?
7 洋服について困っていることはなに?
8 これからどんな洋服ができたら嬉しい?
9 アンケートを終えて



洋服を買うときに気にすること

洋服選びのポイントは?

▶車いすでも着やすいデザイン。
(両下肢麻痺、体幹機能障害)

▶車いすに支障のない袖口かどうか。(車いす)

▶ボタンやホックやジッパーがない服を選ぶ。
(手動車椅子)

▶身長が135cmだけど女性の体型であるので子供服ではイマイチ。大人用に設計されていて、かつサイズがあうものを買いたいです。(身体障がい4級)

▶膝が変形しているのでそれが目立たないパンツや、浮腫でも着脱しやすいパンツを選ぶ。
(右下肢慢性疼痛、右下肢機能障害)

▶お腹に管が入っていて尿をそこから直接出しているので、ロングスカートやワンピース、ワイド系パンツで隠すことが多い。(身体障がい1級)

▶重度障がいでベッドや車いすに座ったままほとんど動けない状況。熱がこもりやすく汗をたくさんかくので、肌に優しく熱がこもりにくい物を選ぶようにしている。(神経難病)

▶広い試着室がないところ、試着室に椅子がないところは試着ができないのが不便。(車いす)


一番多かった回答が「車いすでも着やすいこと」でした。座ったままの着脱のしやすさだけでなく、移動中に袖口や裾がタイヤと擦れて汚れてしまわないかも洋服選びで重要なポイント。

障がいのある人の中には感覚過敏の人も多く、素材も気になるところ。生地が柔らかく肌触りのよいものや天然素材を選んでいる人もいます。また、衣服の生地が硬いと体力や筋力のない人にとっては動きにくく疲れてしまうそうです。

しかし、そもそも洋服を買いに行こうと思ったときに、車いすでも入れるお店か、試着室も車いす可能か、中に椅子はあるのか、介護者が一緒に入れる広さなのか、などの問題もあります。車いす可の試着室は最近少しずつ増えてはいますがまだまだ数は少ないです。自宅で試着して返送料が無料のネットショッピングを利用している人もいました。

その洋服が自分に似合っているのか、着脱はしやすいのか、試してから買いたいですよね。


リメイク品やオーダー品を買ったことはある?

① ない 78.6%

② オーダー品 12.9%

③ リメイク品 8.6%



洋服のリメイクやオーダー品ってどんなことしたの?

▶浴衣をセパレートにした。下はスカートのようにしてマグネットボタンにした。背中が出ないようにボディースーツをよく買うが、ボタンをマジックテープにした。(脊髄性筋萎縮症)

▶スーツはいいものを着たいので、オーダーメイドにしています。疾患のせいで、腕や腿が太く、腕が短く肩幅が狭い、鳩胸など特異なのですが、そのようなところも店員さんが工夫してくださいます。(身体障がい4級)

▶着やすさではなく、デザイン的なリメイク重視。(車いす)

▶ケープコートのフードが邪魔だったのでフードを取ったり、丈が長すぎて車いすだと腰回りがゴワついたため丈を短くしたりした。(神経難病)


リメイク品やオーダー品の利用は思いのほか少なかったです。既製品よりも料金が高くなることも理由のひとつと考えられます。少し敷居が高い感じがしますよね。

良い点では「要望に応えてくれる」「採寸してくれる」「一点物が買える」という声がありました。

実際には、家族や介護者にボタンの穴を少し大きくしてもらったり、ゴムを調節してもらったりの軽いリメイクが多いようです。


ファッションと補助具のカンケイ

         洋服に支障がある 75%


車いすユーザーに聞きます

洋服に支障があることおしえて!

▶長いコートはタイヤに引っかかり汚れる。
(骨形成不全症)(車いす)

▶装具の金属がスボンにこすれる。
(脳性まひ)(車いす)

▶ワンピースなどは座った時に首元が引っ張られて苦しい時がある。(脊髄損傷)(車いす)

▶タイヤに巻き込まれるため、丈の長いものが着られない。(ミトコンドリア病 ミオクローヌスてんかん症候群)(電動車いす)

▶上着のボタンが車いすの連結部分に挟まりがち。(骨形成不全症)(車いす)

▶車いすの車輪に巻き込まれる&汚れるので、着物など袖が長いものは着づらい。
(上下肢障害1級)(自走車いす)

▶ズボンの丈があがってしまう。そのため靴下が丸見えになるし、だからといってすこし長めの丈にすると、歩いたときに床についてしまう(車いす)

▶ゆるいスカートじゃないと、車いすに座っているときに上に上がって短くなってしまう。
(先天性ミオパチー)(車いす)


▶車いすのタイヤに袖口やスカートが巻き込んでしまう。
(右下肢慢性疼痛、右下肢機能障害)(杖、車いす)

▶セーターを着ると、車いすのマジックテープタイプのベルトにくっついて、服がボロボロになる。
(身体障がい)(電動車いす)

▶床や車から車いすへの移乗のとき、スカートや長めのアウターだと上手く動けない。
(手動車椅子ユーザー)

▶車いすに座ることでトップスもボトムスも基本的にはシルエットが崩れてしまう。ネックカラーを着けることでトップスの形が崩れてコーディネート 的に台無しになってしまうのが残念。
(神経難病)(車いす、ネックカラー)



補助具ユーザーに聞きます

洋服に支障があることおしえて!

▶スカートが装具に絡まる
(右半身麻痺)(足の装具、杖)

▶お腹周りを余り圧迫できない。
(コロストミー)(ストーマ)

▶整形靴のベルト部分がズボンの裾に引っかかることもある。(下肢麻痺)(オーダーメイドの整形靴、杖)

▶ズボンの下に装着するため、緩めのズボンじゃないと入らない。(股関節炎、骨盤関節炎による変形)(下肢装具)

▶マジックテープがストッキングに引っかかって伝線する。スカートの裾に引っかかってほつれる。
(電動車いすユーザー)(足首にバンド(マジックテープ式)、足先を吊り上げる補助具)


ファッションを楽しみたい気持ちと補助具とのハザマで悩んでいるのがよく伝わってきました。

いちばん多かった声は車いすユーザーの袖(そで)と裾(すそ)問題! 

おしゃれをしてお気に入りの洋服を着ても、袖や裾が車いすのタイヤに接触することで汚れたり破れたり。さらには生地が巻き込まれて危険が生じる場合もあります。

また、洋服がタイヤに巻き込まれる心配がある一方で、ぴったりしたボトムだときつくて長時間座っていられなくなるとの声もありました。

補助具によって気になる点は違いますが、着脱の問題だけではなく、洋服自体を損傷してしまう問題も見えてきました。


ファスナーやボタンについて困った経験ある?

         困った経験がある 60%


洋服について困っていることはなに?

▶ボタンが全くできない。

▶車いすに座った状態できれいに見える服がほしい。

▶足が硬直しているのでほとんどの靴が履けない。

▶側湾があるため、中心に服の真ん中が来ない。

▶側湾が強いのでチャックが閉まらないこともある。

▶湾曲があるので、斜めに落ちている肩の方から服が落ちて、逆側の肩が出てしまう。

▶Tシャツは前開きじゃないので呼吸器をつけている人は着られない。

▶車いすでは試着室に入れないので、ネットを利用し勘で買っている。

▶発達障がいがあるため、サイズを間違えたり、服の前後ろが逆になる。

▶スカートをもっと頻繁に履いてみたいが、脳性まひの影響で脚を開いてしまうことがあるため、なかなか履けない。

▶基本的に丈をつめないといけないため、裾のデザインがなくなってしまうこと。

▶コルセットをするからウエストが太くなる。でも、それに合わせると足がブカブカ。

▶車いすに乗っていると、上着は肩周りがきついのに、前がたわむ。ズボンの前股上は余り、後ろ股上が足りない。また、裾が上がるので足首が出がち。

▶身長が低いため、ボトムスで丈が合うものがなかなかない。子ども服も見てみたことはありますが、ウエストが合わない&やはりデザインは(当然なのですが)子ども向けで…

▶尿の管が屈曲したりしないように、ボトムスには気をつけています。

▶障がい者が着用しやすい洋服などもネットで見かけるが、どれも高額なことが多いしデザイン・形のバリエーションもいまいちで、購入したいと思うことがあまりない。

▶感覚過敏のため着られない服がある。

▶体温調整がうまくいかないので熱がこもりやすく、肌に優しく通気性の良い、着心地のいい服を見つけるのはいつも困難がある。



同じ悩みの人はいましたか? 

洋服の着脱は毎日のことなので、そこにストレスがあるのはつらいですよね。

着脱に苦痛があったり、寒暖の調節がうまくいかなかったり。

ひっかかり、ズリ落ち、閉まらない・・・・・・洋服の悩みは尽きません。

そもそも気に入って着ているのではなく、そこに妥協やあきらめがあれば、おしゃれとしての洋服ではなく、必要としてだけの衣食住の「衣」です。

洋服は着られればよいというものではありません。ファッションを通して気分や行動に影響がでると考えられています。自己表現のひとつであり、その人の内面を伝える力も持っています。

デザインでも色でも、気に入ったものを身にまとったら、外出したくなるきっかけにもなるのではないでしょうか。


これからどんな洋服ができたら嬉しい?

▶左右がわからなくなるので何か目印が欲しい。

▶ファスナーの持ち手がリングだったら閉めやすい。

▶ボタンは飾りで実際はしないみたいな感じのがいいかな。

▶ファスナーは大きめにでも目立たない様にして欲しい。

▶ボタンではなく(音のしない)マジックで止められるような服。

▶トイレにも困らない 服。

▶車いすでもカッコいい服。

▶足の硬直があっても履ける靴がほしい。

▶ファスナーとボタンがマグネットになっているズボン。

▶着用感を感じさせない服。

▶マジックテープがたくさんある服。

▶機能性やデザイン性は劣らず、できるだけ柔らかくて軽い服がほしい。

▶座ったまま履けるズボンとかスカート。

▶ボタンの形のパタっとぼたんが作られるといいなと思う!

▶車いすの時と杖の時で袖口のデザインを変えられる服。

▶上下別々だけどワンピースに見えるような服の選択肢が増えると嬉しい。

▶おしゃれな巻きスカート。

▶ボタンやファスナーなどで二の腕だけが出せるデザインの上着。

▶採血でまくりあげられるぐらいのゆとりのあるシャツ。

▶腕を上げなくても着られるトップス。

▶おむつを履くと腰まわりがゴワつくので、おむつが目立たないような形。

▶側湾にも配慮した服。

▶横ファスナー。

▶移乗した時にめくれ上がりにくい素材や形の服。

▶見た目がユニセックスな服がもっと出てきて欲しい。

▶繋がっているように見えて、チャック等で上下分離できる形のサロペット。同じデザインの下部分の洗い替えもあったら嬉しい。

▶マジックテープ、ゴム、太めの紐、しかも目立たない。他の服と変わらない見た目だと嬉しい。

▶福祉系のものはダサいデザインばかりでテンションが上がらないし購入意欲も湧かない。健常者が買うくらいの物を作らないと普及しないと思う(価格的にもデザイン的にも)。便利さとオシャレが共存しているのが理想。

▶障がいがあると、お洒落じゃない色づかいやデザインが多数あるが、私はそのダサいイメージを取っ払いたい。



アンケートからは「障がい者だからといって機能性ばかりを追求した衣服にはもう『NO』と言いたい!」という気持ちがとてもよく伝わってきました。たしかに福祉系の衣服はときめかないデザインが多い傾向にあります。

十代の読者からは「高校生だからおしゃれをしたいけれど、自分で着脱を考えると選択肢が少なくなってしまう」と悩む声もありました。

ファッションは表現であり、自尊心や自立心とも深く結びつきます。おしゃれは誰もが楽しんでよいもので、好きに表現できる場所です。自分のパーソナリティーを伝える手段にもなります。


アンケートを終えて

面白いアイデアや意見がたくさん寄せられました。

ご回答くださった読者のみなさま、ありがとうございました!

今感じている困り事や「こんなのあったらいいな」を言葉にしてみると、世の中ちょっとずつ変化していって、もしかしたら想像を超える便利で魅力的なものが生まれるかもしれません。

障がい当事者の目線は世の中をリードするアイデアの宝庫ともいえます。

実現可能かどうかよりも、伝えていくということが大切なのではないでしょうか。

これからも読者のみなさんの声を研究者や企業にどんどん発信していきます。

注※( )内はご回答いただいた障がい状況を記載。

 



◆イラスト:車イスにゃにゃ(先天性ミオパチー) 

「車イスにゃにゃのにゃんのその絵日記」

http://kurumaisunyanya.livedoor.blog/