「都立施設をはじめ、民間団体の公演や展覧会の鑑賞サポートの体制が充実することで、障害がある皆さまも、ちょっと観てみよう・行ってみようと興味を持っていただければと思います。最初は不安や躊躇があっても、芸術文化に興味を持っていただくことで、皆さまの生活の“楽しみ”や“豊かさ”のバリエーションが、ひとつ、またひとつと増えていくことを心から願っています!是非一歩踏み出してみてください!」
公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京活動支援部支援デザイン担当課長 石綿祐子(いしわたゆうこ)さんコメント

東京都と公益財団法人東京都歴史文化財団アーツカウンシル東京は「東京芸術文化鑑賞サポート助成」を開始しました。2025年秋に開催される世界陸上・デフリンピックに向けて、誰もが芸術文化に触れることができる共生社会の実現を目指し、本助成を通じて民間団体等によるアクセシビリティ向上を促進しています。

▶2024年度の実績
令和6(2024)年度は47団体、62事業(公演等)で実施。音声ガイドなどの聴覚情報支援のほか、バリアフリー字幕や手話通訳による視覚情報支援、点字プログラムや触れる模型、舞台の事前説明会など、鑑賞体験を豊かにする様々なサポートが導入されました。

鑑賞サポート事例:ミュージカル『燃ゆる暗闇にて』舞台事前説明会

分野別では演劇が最多で32事業、ついでミュージカルの8事業となっており、そのほか伝統芸能、音楽、映画・映像など様々なジャンルの事業が実施されました。公演における取組の状況や鑑賞サポートを利用された方々の声を紹介します。

 

▶ 東京芸術文化鑑賞サポート助成を活用した取組

1.座・高円寺『夏の夜の夢』『小さな王子さま』
2.劇団青年座 『諸国を遍歴する二人の騎士の物語』
3.エイベックス・ライヴ・クリエイティヴ株式会社 ミュージカル『燃ゆる暗闇にて』
4.ホリプロ ミュージカル『ラブ・ネバー・ダイ』


1.座・高円寺『夏の夜の夢』『小さな王子さま』2024年8月31日(土)~10月12日(土)上演
鑑賞サポート:字幕タブレット貸出、上演台本の事前貸出、受付手話対応、アフタートーク手話通訳、手話字幕の監修

【NPO 法人劇場創造ネットワーク 座・高円寺 和泉将朗(いずみまさあき)さんコメント】

◆鑑賞サポート導入の背景
ろう者の俳優がオーディションで出演することになったことがきっかけです。ろう者の観客が多く見込まれ、その方たちにも同じように芝居を楽しんでもらいたかったからです。

◆利用者からの声
「字幕表示を使っている人がかなりいて良かった」、「自分の観たい席で観劇できた」等、字幕サポートが好評でした。

◆鑑賞サポートの向上に向けて
一度だけ本番中にWi-Fiが落ちて字幕が出ない時間があり、いざという時の対応についてスタッフ間で事前に共有しておくべきと反省が残りました。チケットに残りがあっても、字幕タブレット予約が先に埋まってしまい観劇を諦めた方もいました。タブレットを借りられる数に限りがあったので、次回は舞台手話通訳などより多くの方に楽しんでいただける方法を取り入れたいです。
また、受付で手話通訳さんが対応をしている時に、手話を少し覚えた劇場職員が次に並んでいるろう者の方に話しかけましたが、たどたどしい手話では接客的に至らない対応になってしまったと感じる場面もありました。サインボードや筆談ボードも用意しコミュニケーションに努めましたが、今後は通訳さんだけでなく、受付周りの事がわかるろう者の方と一緒に字幕タブレットの貸出対応等をやっていく方法もあると思いました。

 

2.劇団青年座『諸国を遍歴する二人の騎士の物語』2024年9月28日(土)~10月6日(日)上演
鑑賞サポート:音声ガイド、字幕タブレット、介助者謝金、台本事前貸出、受付での筆談対応、車椅子対応、舞台事前説明会、触れる舞台模型

【有限会社劇団青年座 阿部史(あべふみ)さんコメント】

◆鑑賞サポート導入の背景
新劇の観客層の高齢化に伴い、2020年に劇団内でバリアフリー委員会を組織し、あらゆる人にとって鑑賞可能な環境作りに取り組んでいます。年々鑑賞サポートを拡充する中で、経費増加の課題や取組を知ってもらうことの難しさも感じていました。採択していただくことで、鑑賞サポートに取り組む演劇創造団体として広く知っていただく契機になればという思いもあり助成の活用を考えました。

◆利用者からの声
「観劇後の感想や理解度がより楽しく深まった」との感想をいただきました。

◆鑑賞サポートの向上に向けて
舞台模型は開演前のロビーに準備しています。視覚障害のある方が物語の設定や状況の説明を聞くのに加えて実際に舞台模型を触って上演作品のイメージを掴んでもらうために導入しており、「触るとイメージが膨らむ」との声は多くいただいています。

劇団青年座公演『諸国を遍歴する二人の騎士の物語』
デザイン=本庄崇

 

3.エイベックス・ライヴ・クリエイティヴ株式会社 ミュージカル『燃ゆる暗闇にて』2024年10月5日(土)〜13 日(日)上演
鑑賞サポート:手話通訳、字幕サポート、音声ガイド、舞台事前説明会、台本タブレット貸出

【エイベックス・ライヴ・クリエイティヴ株式会社(ALC)制作事業本部シアター制作グループ 第2プロデュースユニット
池永聡子(いけながさとこ)さんコメント】

◆鑑賞サポート導入の背景
以前よりサポート公演に挑戦したい気持ちがあり、常にサポート関連の情報収集にアンテナを張っていたところ、HPで情報を見かけました。 盲学校を舞台にしている作品でしたので、作品との親和性もあり、助成を申請しました。

◆利用者からの声
「開演前の事前説明会でどんなセットがあるか説明を受けていたので公演中はより一層、舞台上のどこでどの役者が動いているかが分かり、楽しみが倍増した」というお声をいただきました。

◆鑑賞サポートの向上に向けて
サポートを必要とされている方への配慮はもちろん、一般のお客様への配慮という意味でも、対象の方の席位置を固めて配席するようにいたしました。サポート席への移動は「見やすさ」を軸にご説明しましたが、自席で観たいという方も一定数いらっしゃったので、その際は前後左右のお客様へ、タブレット使用の意図などを丁寧に説明いたしました。

 

4.ホリプロ ミュージカル『ラブ・ネバー・ダイ』 2025年1月17日(金)~2月24日(月・休)上演
鑑賞サポート:音声ガイド、字幕タブレット、駅からの誘導、台本事前貸出、車椅子席の設置

【株式会社ホリプロ ファクトリー部 船津由紀(ふなつゆき)さんコメント】
◆鑑賞サポート導入の背景
英国の劇場でリラックスパフォーマンスという上演回があることを知り、誰もが楽しむことのできる環境をつくるという考え方に感銘を受け、2023年に『ジョン王』でリラックスパフォーマンスを実施しました。その際に、必要なサポートがないためにこれまで鑑賞を諦めてしまっていたというお客様の声を直接お聞きしたことで、他の作品にも取組を広げていきたいと思いました。そんな中助成の存在を知り、より質の高い鑑賞サポートを目指すことができると考えて申請を決めました。

◆利用者からの声
音声ガイドを提供したところ「これまではスト ーリーが十分に理解できないまま作品を楽しんでいたが、音声ガイドのおかげで情景が浮かび、初めて作品そのものを味わうことができた気 がする」というお声をいただきました。

◆鑑賞サポートの向上に向けて
より多くの方に弊社の公演を楽しんでいただきたいと考えていま す。多様なお客様が一緒に楽しめる環境をつくるためには、作品づくりの段階から検討をしていく必要がありますが、費用面、人材面の不足など今後検討すべき課題もあると認識しています。

 

●―世界陸上・デフリンピックを契機としたアクセシビリティ向上の推進をー
東京都生活文化スポーツ局文化振興部企画調整課文化プログラム担当課長 佐原香織(さはらかおり)さんコメント
東京都は2025年秋に開催される世界陸上・デフリンピックに向けて「芸術文化へのアクセシビリティ向上」に取り組んでいます。大会を契機に、鑑賞サポート付きの展覧会・公演等がより多く開催され、アクセシビリティ向上の取組が 一層充実するよう、2025年度は本助成制度を拡充していきます。誰もが芸術文化に触れることができる共生社会の 実現につなげていきたいと考えています。
 

●―問題意識を拡げ、誰もが芸術文化に触れられる社会へ―
公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京活動支援部支援デザイン担当課長 石綿祐子(いしわたゆうこ)さんコメント
鑑賞サポート導入の事例が増えることで先行事例を知るきっかけとなり、さらに新たな団体からの申請が促進される。その結果、当事者の方が受けられる鑑賞サポートの選択肢が拡大していく。そのように誰もが芸術文化に触れられる社会への一助になる助成にしたいと考えています。

 

助成申請手続き
詳しくはこちらまで
東京芸術文化鑑賞サポート助成 特設ウェブサイト
https://act-kansho.support/

 


 


東京2025デフリンピック 大会ポータルサイト
https://www.deaflympics2025.com/

 

関連リンク
・『芸術文化の鑑賞サポート』 記者懇談会
・音声・字幕ガイドアプリ「HELLO! MOVIE」で、もっとユニバーサルな映画体験を!
・TOKYO FORWARD 2025 文化プログラム舞台『TRAIN TRAIN TRAIN』メインキャスト決定!バックステージ
・日本初マイノリティパフォーマーたちの奇跡の共演映画 まつりのあとのあとのまつり『まぜこぜ一座殺人事件』