12月6日に高田馬場の日本点字図書館で行われたクリスマスゲーム会の紹介レポート第3弾として、今回は日本点字図書館と共遊玩具、そして毎年クリスマスゲーム会の賞品を提供されている日本玩具協会のことをご紹介します。ゲームの様子は最初の記事で紹介していますので、まだ読んでいない方は、ぜひレポート①~大盛り上がりのゲーム会編~からご覧ください。
 


目次


『日本点字図書館』とは?

日本点字図書館は、視覚障害のある方々のために設立された日本最大級の点字図書館(視聴覚障害者情報提供施設)です。1940年(昭和15年)に本間一夫先生によって創設され、現在は東京都新宿区高田馬場にあります。

主なサービスとして、点字図書・録音図書の製作・無料貸し出し、インターネット配信サービス「サピエ図書館」の運営、レファレンスサービス(蔵書調査)、希望点訳・個人朗読サービス(プライベートサービス)など、個別のニーズに応じた多様な情報提供サービスを実施しています。

さらに視覚障害者用用具の販売(白杖、拡大読書器、調理器具など)や、点字教室、IT教室の開催、自立支援事業(相談支援・自立訓練)なども行い、視覚障害者の生活を総合的にサポートしています。この活動の一つとして偶数月の第一土曜日に開催している「にってんゲームを楽しむ会」があり、12月はそれを拡大してクリスマス会を行っています。

日本点字図書館の入り口で視覚障害者や交通弱者向けの小型音声案内装置(商品名:シグナルエイドⅤ)のボタンを押すと、入り口上部に設置されているスピーカーから音声案内が流れることを説明している写真

点字図書館の入口にある音声案内装置

館内廊下に設置されている案内図をアップで写した写真

館内のフロアマップ。斜めから見ると詳細な点字が書いてあるのが分かります

自販機をアップで写した写真。一つ一つの商品の上に透明な点字シールで商品名が書かれている

自動販売機の商品にも点字が打たれています

ワクワク用具ショップの外観

館内入ってすぐ横の「わくわく用具ショップ」。見える人も見えない人も心が踊る商品がずらり

本間一夫先生の銅像の写真

用具ショップの向かいには創立者の本間一夫先生の銅像がありました

バリアフリートイレ内部の写真。洋式便器と手洗いのみで、ベビーシートとオストメイト対応流しは設置されていない

広々としたバリアフリートイレの室内

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日本玩具協会が認定する『共遊玩具(きょうゆうがんぐ)』とは?

「共遊玩具(きょうゆうがんぐ)」とは、目や耳の不自由な子どもたち、あるいはその保護者も、そうでない人たちと一緒に楽しく遊べるように工夫された「ユニバーサルデザインのおもちゃ」のことです。このようなおもちゃ「共遊玩具」と呼称し、「一般社団法人 日本玩具協会」が認定しています。

「共遊玩具」とは この活動は、 現在20社を超える玩具メーカーの協力の下で行われています。「共遊玩具」は、すべて普通のおもちゃ屋さんで買うことができます。「共遊玩具」に認定されたおもちゃのパッケージには、盲導犬マーク 目の不自由なお友だちともいっしょに楽しめる。うさぎマーク 耳の不自由なお友だちともいっしょに楽しめる。が付いています。「共遊玩具」 は、「障がいのある人向け」のおもちゃではなく、「障がいのあるお友だちとも思う存分楽しく遊べる」 私たちみんなのためのおもちゃです。一般社団法人 日本玩具協会

目の不自由な子に配慮されたおもちゃの箱には「盲導犬マーク」、耳の不自由な子に配慮されたおもちゃの箱には「うさぎマーク」が表示されています。

盲導犬マーク 商品への工夫点 目の不自由な人々は、触覚や音などを手がかりにしながら遊びます。その為、手触りや音等への 「工夫」が商品の企画・開発段階から盛り込まれると、優れた 「共遊玩具」になります。電池を使うおもちゃへの工夫 電池蓋の位置と開け方が手で触って確かめられるようにする。電池を入れる方向が触覚でも確かめれるようにする。(電池ボックスの表示 電池ボックスにビス止めを使用している場合は、ビス止めの穴の縁にリング型の凸表示をする。ビス止めを使用していない場合は△の表示をつける。スイッチのあるおもちゃへの工夫 ・スイッチの状態が触覚でも確かめられるようにする。・スイッチの 「ON」に「凸」 表示を付ける。・スイッチが「ON」になった時、箸(音楽など)で知らせるようにする。凸の形状 形状については、⌀2×0.8mm を基本とするが、範囲を設ける。JIS S 0011(凸点のJIS規格)による。色の区別が必要なおもちゃへの工夫 ・2つ以上の物を識別する必要がある場合は、 色以外に異なる手触りや凸になったマーク、あるいは音などを割り当てて識別できるようにする。たとえばオセロ。白と黒の手触りが違う。 動くおもちゃへの工夫 ・手から離れた所へ行っても音で位置が確認できるようにする。その他 ・実物を模写したおもちゃはなるべくデフォルメせずに、 実物と近い触感や形にデザインする。たとえばミニカー。・遊びの過程と結果を視覚を使わずに把握できるようにする。・手で触ったとき、意に反して崩れたり、ずれたりしにくいように工夫する。たとえばブロック類。・必要に応じて、点字のシール等を用意する。・目をつぶっても楽しく遊べるように工夫する。一般社団法人 日本玩具協会
うさぎマーク 商品への工夫点 耳の不自由な人々は、市販されている殆どの玩具を楽しむことができます。しかし、音が遊びの重要な要素(例えば、ゲームの結果を音で知らせる等)となっている場合、その玩具を100%楽しめるわけではありません。また、耳の不自由な人々が「コミュニケーション」を楽しむことのできる玩具を積極的に取り上げたいと考えています。 うさぎマーク玩具への工夫 特に音が遊びのなかで重要な位置を占めている場合、 昔と同時に、光、振動、動き、文字、絵等の要素で遊びを盛り上げるように工夫する。音の強弱や高低が調整できるようにする。あるいはイヤホーン等の端子を付ける。 (ただし、ピアノ等の音階がある楽器類はうさぎマーク対象外とします) 光、動き等により、スイッチのON-OFF がより明確に分かるようにする。おもちゃで筆談等のコミュニケーションができるようにする。消し忘れを音で知らせるのではなく、オートオフ機能をつける。(ついているだけではうさぎマークの対象になりません)おもちゃが出す言葉や音を、文字やイラストでパッケージや取扱説明書に表示する。一般社団法人 日本玩具協会

具体的な工夫としては、目の不自由な子が楽しめるよう、操作ボタンに凸(とつ)表示をつけたり、音声での情報提供を充実させたりしています。また、触ってパーツの違いが分かるように形状を工夫した製品もあります。一方、耳の不自由な子には、音の代わりに光、振動、動き、文字、絵などで遊びを盛り上げる工夫が凝らされています。

視覚障害の人でも遊べるよう工夫されたオセロ盤。一つ一つのマスがくぼんでおり、コマが黒か白か手触りで判別できるようになっている

もともとあるおもちゃに「ちょっとした工夫」を加えることで、誰もが一緒に遊べることを目指しており、多くの人気シリーズのおもちゃにも採用されています。共遊玩具は、様々な人が共に遊び、コミュニケーションを楽しむための大切なツールとなっています。

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日本玩具協会 共遊玩具推進部会 上村様にインタビュー

点字図書館と連携してクリスマス会の開催に長年協力してくださっている、日本玩具協会 共遊玩具推進部会の上村 弘誓様にインタビューを行いました。

  • 「にってんゲームを楽しむ会」との繋がりは、いつどのような経緯で始まりましたか?
    ―我々日本玩具協会の共遊玩具推進部会に点字図書館の方も委員として参加していただいております。そちらの関係からクリスマスゲーム会に協力させていただいています。
     
  • 今回ご用意していただいたおもちゃをどのような観点で選んだのか教えていただけますか?
    ―クリスマス会には、晴盲(見える人と見えない人)、年齢層も幅広い方がいらっしゃるので、特に共遊玩具に絞ったわけではなく、各メーカー様が自分たちのところで販売している玩具をそれぞれ選び、提供して頂きました。

    会議室のテーブルの上に40個ほどのおもちゃが並べてある写真

    日本玩具協会に加盟している玩具メーカーは、このクリスマス会のために何十年間もおもちゃを提供し続けています

  • さまざまな障害のある方に向けて、日本玩具協会様はどんな取り組みを行っていますか?
    ―いま現在は「盲導犬マーク」「うさぎマーク」の共遊玩具の取り組みをメインとさせて頂いております。過去には、幅広くユニバーサルな視点で見ていた時期もあったのですが、今の段階では視覚に障害のある方と聴覚に障害のある方に絞って共遊玩具を展開していく、推進していくことをメインに取り組んでおります。
     
  • 最後に、我々は視覚障害のあるお子さんを含めた読者に記事を伝えるメディアとして活動しているのですが、読者に伝えたいメッセージなどあればお聞かせ頂けますか。
    ―そうですね。日本玩具協会では『共遊玩具』という、視覚障害のある方も聴覚障害のある方も障害がない方も一緒に同じ玩具で遊べるという活動をしております。おもちゃ屋さんで「盲導犬マーク」や「うさぎマーク」がついたおもちゃを見かけたら、これらは様々な方が一緒になって遊べるおもちゃだということを思い出していただければと思います。

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「見えない・聞こえない」をハードルにせず、共に遊ぶためのツール「共遊玩具」。そして、視覚障がい者の生活と文化を支え続ける「日本点字図書館」。この両輪があるからこそ、あのような笑顔あふれるクリスマスゲーム会が実現できているのだと知ることができました。

さて、次回は本レポートの締めくくり! ボードゲームファンなら誰もが知るレジェンドであり、クリスマスゲーム会を主導している草場純先生の特別インタビューです! 読み応えのあるインタビュー記事となっておりますので、こちらも併せてご覧ください。

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写真:吉田純一・ノア 文:吉田純一