視覚を使わず芸術作品を体験、対話を通じて多様性や新たな感性を学ぶイベント
本イベントは「目を使わない芸術祭体験 ダイアログ・イン・ザ・ダークのアテンドと東京ビエンナーレをきく」というテーマで開催され、少人数の参加者による対話と体験の場となった。
![]() | ![]() |
アテンドスタッフの「きのっぴい」さんと「まりっぺ」さん(二人とも視覚障がい者)が自身の見え方や体験を説明。参加者には「説明は最小限、感じたことに重きを置いて作品を語ってほしい」「わからない点も正直に伝えてよい」「作家の意図より自分の感性で語ってほしい」というポイントが説明された。
さんぽエリア(鑑賞エリア)
アーティゾン美術館周辺に点在する鈴木昭男の「『点 音(おとだて)』in 東京ビエンナーレ 2025」のポイントをめぐった後、東京駅八重洲北口通路に設置されている与那覇俊の《太太太郎 2023》を鑑賞。
鈴木昭男氏の『点 音(おとだて)』
![]() | ![]() |
参加者はアーティゾン美術館前に置かれたベンチ前のスポットで『点 音(おとだて)』に足をのせ、目をつぶって街の空気、音などを感じる体験をした。
体験後アテンドのまりっぺさんに参加者がそれぞれ感じたことを伝え、メンバー間で共有した。
・車といっても車種によって音、振動が違うことに気づいた。
・目を閉じることで、街の日差し・空気・視線など普段感じた事のない感覚があった。
・普段あまり聞こえない(感じない)足音が聞こえる。
鈴木昭男の「『点 音(おとだて)』in 東京ビエンナーレ 2025」
![]() | ![]() |
与那覇俊氏の《太太太郎 2023》
東京駅八重洲北口通路に設置されている与那覇俊氏の『太太太郎 2023』を鑑賞するため移動した。
![]() | ![]() |
参加者は先入観を持たず作品を見て何を感じるか。
与那覇俊氏の作品は独特のタッチと色を使い、マーカーで仕上げたような作品だった。
![]() | ![]() |

・自分たちが作品を観察していると周りの人も不思議に思ったのか、作品への興味が伝わっていく感覚が面白かった。
・作品を観察すると作家の頭の中を覗きこんでるような不思議な感覚になった。
・眺めている自分たちの姿も作品の一部なのではないかと感じた。
・この絵は、全体の構成を考えてから描き出したのか、思うがままに描き足して行ったのか気になった。
意見交換・感想
![]() | ![]() |
二つの作品を鑑賞後、意見交換が行われた。
・たまに美術館などを訪れる機会はあるが、何となく良かった程度の感想しか持たなかった。今回感じたことを伝えることをやってみて、作品を心で感じることが出来るようになった。
・目を閉じて作品に触れることで視覚障がい者の方たちの感じ方を体験出来て良かった。
・見ないことで聞く感覚が研ぎ澄まされるような気がする。
ダイアログ・イン・ザ・ダークとは
視覚障害者の案内により、完全に光を遮断した”純度100%の暗闇”の中で、視覚以外の様々な感覚やコミュニケーションを楽しむソーシャル・エンターテイメントです。1988年、ドイツの哲学博士アンドレアス・ハイネッケの発案によって生まれ、これまで約50カ国で開催、900万人を超える人々が体験した。日本では1999年11月の初開催以降、30万人以上が体験。現在、東京・竹芝のダイアログ・ダイバーティミュージアム「対話の森」で開催中。
東京ビエンナーレ2025では視覚障害を持つ方への芸術祭の案内について学びの時間を持ち、来場者への対応に活かしていく。講師にダイアログ・イン・ザ・ダークの方々をお招きして全盲の当事者の方と関係者の方にお話を聞き、自分たちができることは何かを考え、取り組みを始めている。
ダイアログ・イン・ザ・ダーク
![]() | ![]() |
視覚という感覚を閉じることで今まで気付かなかった音、空気、振動、やさしい日差しなど感じることが出来て良かったと思う。まりっぺさんは、人の感想を聞くのが大好きとおっしゃっていた。感想の数だけ感じ方を自分の中に取り込むことができるのだそう。体験後の参加者の目は皆、生き生きとしていて、満足気な雰囲気が伝わってきた。
自分も何かを発見したいので、ふと立ち止まって目を閉じて街の音でも聞いてみようと思う。(小川)
私自身、車いすユーザーとしての視点を持っていますが、この取材を通して新たな感性に触れ、たいへん興味深いひと時となりました。
(佳山)
写真:小川陽一 文:佳山明、小川陽一














