2025年11月10日にゲッティイメージズが発表した調査によると、広告などで障がい者が登場するビジュアルは1%未満とのことです。当社で働く障がいのある社員にも、この問題についてどのように考えるかアンケートを行いました。日本のメディアは今後、障がい者をどのように扱うべきか、私たち当事者と一緒に考えてみませんか?

左右に色づく紅葉が見える歩道橋の上で、左腕のない男性が右足を軽く上げてポーズをとっている

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ゲッティイメージズの調査概要

調査結果を簡単にまとめると、以下の通りです。元の記事ではより詳しく解説されていますので、興味のある方はぜひ全文を読むことをお勧めします。

  1. 背景
    2025年11月15日に東京デフリンピックが開催されましたが、パラリンピックの認知度が96%であるのに対し、デフリンピック39%※にとどまっています。露出不足や理解の遅れが課題です。
  2. 広告における障がい者表現の現状
    日本の消費者は、「障がい者を平等に表現してほしい」が約7割、「平等な機会が与えられるべき」が87%と考える一方で、広告などで障がい者が登場するビジュアルは全体の1%未満です。
  3. ビジュアル化される障がい者の偏り
    車いす・義足など、外見から分かる障がいの表現が大半を占めています。一方で、聴覚障がいやメンタルヘルスなど、外見から分かりにくい障がいの表現は不足しています。
  4. 企業に人気のビジュアル
    主に「ストレスや痛みを抱える若者」、「サポートを受ける高齢者」として描かれる傾向があり、中間のライフステージの表現が不足しています。
  5. 企業やブランドが障がい者を表現する際のポイント
    • 日常生活とのつながりを描く
      治療/リハビリだけでなく、友人・家族・仲間との日常、笑顔や喜びも含め、「日常の中でどう向き合うか」を描く。外見から分かりにくい障がいも含めて扱う。
    • 年代・アクティビティの多様化
      ゲーム、配信、ファッションなど、今の生活トレンドを楽しむ姿を描き、「特別」扱いしない
    • 本当の「希望」と「前向きさ」を描く
      希望や前向きさを、他者の支援に依存した形だけで描かない。仕事、スポーツ、アート、社会活動に主体的に参加する姿を描く。

確かに、広告で障がい者を見かけることはほとんどありません。たまに見かけても、「車いすに乗った高齢者が介護されている」といった形で表現されている印象が強いのではないでしょうか。今回の調査で改めて明らかになったとおり、現在の日本のメディアでは、障がい者の実情を十分に伝えられていないと言ってよいでしょう。

※その後の東京都の発表で、認知度は73.1%まで上昇したそうです。

手前一面に淡いピンクの花が咲く草原で、奥では介助者が車いすの人を押して散歩している

「希望」というキーワードで企業に人気の写真

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当社社員に聞く、障がい当事者の意見

この問題に関連して、当社の障がいのある社員に対してもアンケートを実施しましたので、ご紹介します。

①メディアへの露出度

テレビ/Web広告/現実の広告で障がい者を見かける頻度、および「自分と同じ障がいの人を見たことがあるか」の円グラフ(「あまり/ほとんど見たことがない」がテレビ・現実の広告で約7割、Web広告で約9割)

やはり、メディアで障がい者を見る機会はまだまだ少ないようで、「よく見かける」という回答はありませんでした。広告で自分と同じ障がいの方を見たことが一度もないという回答は約8割となっており、傾向としては、Webや現実の広告よりもテレビで見かける機会のほうが多いようです。

②ドラマ・映画での表現方法

様々なシチュエーションに対して望ましいかどうかを答えるアンケート結果。この後解説されているもの以外では、障がい者が登場したとき、特性や配慮についてテロップを出すべきかという設問は賛否が分かれている。

ドラマや映画で、障がい者が主役として登場する場合と悪役として登場する場合のどちらも、同程度に好意的に受け取られているのが興味深い点です。役の善悪と障がいの有無は切り離して考えるべき、ということかもしれません。
脇役・エキストラとしての出演は好意的に受け取られている一方で、登場人物における障がい者の割合を一定以上にする指標を設けることには否定的な意見が目立ちました。「ポリコレを意識しすぎてストーリーが入ってこない」「現実の割合以上にする必要はない」といった意見があります。
また、障がい当事者ではない俳優が障がい者役を演じることについても、否定的な意見が多く見られました。「そんな簡単なことではないのに、と現実味が薄く感じてしまう」といった声も挙がっています。
明示せずに精神・発達障がいがあるように見える人物を登場させることや、並外れて優れた能力を持つ人物として描くことについては賛否両論でした。「実際によく見る」という意見がある一方で、「偏見を助長する」といった指摘もありました。
障がい者をどのように演じるかについては当事者にとっても難しい問題ということが分かります。

③広告における表現方法

広告についてのアンケート結果。詳細は後述。

ゲッティイメージズの調査では、障がい者が病院やリハビリ・介護施設でサポートされるイメージに偏っている点を課題として挙げていましたが、当事者からはそれを問題視した意見は見られず、「現状を正しく知ってもらう機会になる」と肯定的に捉えている声もありました。ですが、趣味や仕事、恋愛などに取り組む姿も非常に好意的に受け取られているので、やはり今後はこちらの表現も充実させる必要があるでしょう。

障がいによる痛みや困難を描くことは、否定的な意見はそれほどありませんでした。ネガティブなイメージだから見せないようにするのではなく、現実に存在するさまざまな社会的課題を取り除くことが先決、ということでしょうか。
ドラマや映画で悪役として登場することはそれほど否定的ではない一方で、例えば「ポイ捨てをする人」のように描かれることには否定的な意見が目立ちました。広告は背景描写が十分でない場合も多く、障がい者という属性だけでひとくくりに批判の対象にされることへの抵抗感があるのだと推測できます。
また、障がいとは無関係な商品で障がい者が目立つ見せ方をすること、感動的なストーリーを強調することについては賛否が分かれました。障がい者という属性を利用するように感じる表現に拒否感を持つ方もいるようです。

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Appleの事例で見る障がい者の姿

障がいを表現した広告事例として、2025年12月3日の国際障害者デーに合わせてAppleが発表した動画をご紹介します。


さまざまな障がいのある人物が登場し、学校生活を支えるApple製品を活用しながら、「自分たちは特別な存在ではない。誰もが皆特別なんだ」というメッセージを伝えています。
これだけ多くの障がい者を起用すること自体も容易ではありませんし、テクノロジーによって困難を軽減するという内容も意義深いものです。何より、他者への依存だけに寄せず、前向きに描いている点は、ゲッティイメージズが示すポイントにも沿っています。一方で、外見から分かりにくい障がいの扱いは多くありません。表現の難しさもあると思われるため、今後の展開に期待したいところです。理想形とは言い切れないものの、多くの人に好印象を与えうる好例として、日本企業にも参考にしてほしい事例だと思います。

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これから日本のメディアは何を目指すべきか

最後に、日本のメディアが今後目指すべき方向性をまとめます。
まず重要なのは、露出の「絶対数」を増やしていくことです。ゲッティイメージズの調査でも、当社アンケートでも、メディア、特に広告で障がい者がほとんど見られないという結果が示されています。
ただし、ドラマや映画などで「登場人物に占める障がい者の割合を一定以上にする」ことには、当事者の間でも賛否があります。目標とする数字だけにこだわるのではなく、リアルな表現を重視する必要があるでしょう。
趣味や仕事、恋愛などに取り組む姿は当事者からも好意的に受け取られています。Appleの事例のように、日常の中で自然に存在する姿を積極的に発信していくことが望まれます。これからは外見から分かる障がいだけではなく、外見では分かりにくい障がいも表現していくことが求められるでしょう。
大切なのは、メディアが伝えたい形に整えた障がい者像ではなく、「ありのまま」を伝えていくことです。現実でもメディアの中でも、障がい者が特別ではなく当たり前の存在になることを願っています。

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文:ノア