8月3日、東京都練馬区にある「ちひろ美術館・東京」で開催された「障がいのある方のための特別鑑賞日」を訪れました。木々に囲まれた美術館は、都心にありながら豊かな自然を感じられる、とても穏やかで魅力的な場所です。
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当日は館内で貸し出されている「電動昇降型車いす」を利用して鑑賞する予定でしたが、あいにくバッテリーのトラブルが発生し、乗ることができなくなってしまいました。少し残念な出来事でしたが、気を取り直して今回は使い慣れた自分の車いすで館内を巡ることにしました。
昇降式車いす:現在は、ご利用いただけます。(2026年9月5日現在)
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旅の始まりに足を運んだのは、「ちひろの復元アトリエ」。生前の制作環境がそのままの姿で再現されたその空間に足を踏み入れると、まるで今もそこに、いわさきちひろが生活しているかのような錯覚を覚えます。
使い込まれた画材や机の配置、室内に漂う静けさ――。徹底的に再現された空間からは、彼女の息遣いや日々の暮らしの温もりがダイレクトに伝わってきます。数々の名作が生まれた現場の「空気感」を全身で実感できる、ファンならずとも胸が高鳴る特別なスポットです。
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いわさきちひろ『となりにきたこ』(至光社)より 1970年
展示室(開催期間:2026年7月25日〜10月25日)へ進むと、目を引いたのが企画展『ちひろ 子どもは平和のシンボル』です。いわさきちひろが生涯描き続けたテーマである「子ども」に着目し、作品や絵本に込められた深い想いや背景が丁寧に紹介されています。多彩な表情を見せる子どもたちの姿を通して、あらためて平和の意味について深く考えさせられました。
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(左)いわさきちひろ 子ども 1962年
(右上)いわさきちひろ セーラー服の少女3人としゃがむ子どもたち 1953年(推定)
(右下)いわさきちひろ ぶどうを食べる男の子4態 1954年頃
併催の『武田美穂展 絵本づくりはドキドキなのだ!』では、今年35周年を迎える『となりのせきのますだくん』シリーズや、30周年を迎えた“ざわざわ森のがんこちゃん”の絵本原画、思わずよだれが出てしまいそうな料理絵本『オムライス ヘイ!』など、賑やかで作品の幅広さが際立つ原画が並びます。
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(右)武田美穂『オムライス・ヘイ!』(ほるぷ出版)より 2012年
さらに、広島で被爆した作家・那須正幹さんの文章や遺稿に武田さんが絵を描いた『ねんどの神さま』『やくそく ぼくらはぜったい戦争しない』といった平和への祈りが込められた作品や、最新作『まるがかけたら』まで見ごたえ十分の内容でした。

武田美穂『ねんどの神さま』(ポプラ社)より 1993年

武田美穂『やくそく ぼくらはぜったい戦争しない』(ポプラ社)より 2025年
実際に鑑賞して特に心が動いたのは、展示位置への工夫です。絵画が比較的低めの位置に掛けられていたため、車いすの目線からでも作品を間近でじっくりと見ることができました。繊細な筆遣いや色使いを間近で感じることができ、胸が熱くなるほどの感動を覚えました。
最初の機器トラブルを吹き飛ばすほど、配慮の行き届いた展示環境と素晴らしい作品群、そして窓外の緑に癒やされた贅沢な一日。アートの魅力をバリアフリーな視点から存分に体感できた、心に残る美術館巡りとなりました。

写真:松尾 深志、ノア、大道寺 清/文:大道寺 清
展示室内の写真は、全てちひろ美術館様から許可を得て撮影しています。












