バリアフリー情報サイト「らくゆく」をご覧の皆様。障害のある人も芸術文化を楽しめるように、多くの施設や公演で「アクセシビリティ」を充実させようとしています。本講座にも多くの関係者が参加して学んでいます。
今回は、アーツカウンシル東京が主催する「令和7年度アクセシビリティコーディネーター講座<スタート編>」の取材レポート(後編)をお届けします。
『目の見えない人が芸術を鑑賞するとはどういうことなのか』というお話から始まります。
前編はこちらから
【目次】
講座④「視覚だけに頼らない芸術文化の楽しみ」
講座⑤「文字表現支援の考え方」
講座⑥「ワークショップ・意見交換」
主催の「アーツカウンシル東京」とは?
参加後の感想
講座④「視覚だけに頼らない芸術文化の楽しみ」講師:半田こづえ氏

全盲の研究者である半田こづえ氏は、視覚障害者の美術鑑賞における「観察・分析・解釈」の認知プロセスは、視覚を用いる健常者と全く同じであると指摘した。『芸術そのものが「目に見えないものを形にしたもの」であるならば、視覚という感覚器官を使わなくても、触覚などの別のルートからその「形」にアクセスすることさえできれば、作品の本質を十分に受け取ることができるのです。』

小学生が触ることを学ぶ最初の教科書
海外の先進事例として、米メトロポリタン美術館の取り組みが紹介された。客観的な言葉のみで視覚情報を伝え、脳内にイメージを構築させる「バーバル・イメージング」や、触図を用いた創作プログラムが実践されている。また、オランダの美術館による、嗅覚や触覚を交えた多感覚な鑑賞法も提示された。
半田氏は、アクセシビリティの向上には多額の予算以上に「当事者を歓迎し、共に楽しむ姿勢」が重要だと強調した。「芸術は生きる力になる」と語り、誰もが芸術を楽しめる社会環境の構築を呼びかけた。 (目次に戻る)
講座⑤「文字表現支援の考え方」
講師:駒井由理子氏 (アーツカウンシル東京)

講義では、UDトークやAI自動文字起こしといった音声認識ツールが紹介された。これらはリアルタイムでの情報提供やコスト削減に優れる一方で、誤変換や情報過多といった課題も抱えている。そのため、モニターの追加、音響技術の活用、リスピークや要約筆記といった人的支援の組み合わせも有効と語った。
また、手話を第一言語とする人、難聴や中途失聴の人など、必要とする支援の形は多様であり、「文字を出せば解決する」という単純なものではないと強調された。「やさしい日本語」の活用や、緊急時の視覚的な避難誘導の重要性についても触れられ、施設に応じた事前の準備と体制づくりの必要性が語られた。
最後に、テクノロジーと人の工夫を組み合わせ、誰もが芸術文化を楽しめる環境を築くことの大切さが共有された。 (目次に戻る)
講座⑥「ワークショップ・意見交換」:多角的な視点で挑むアクセシビリティの設計
本講座の締めくくりとして、架空のイベントを題材としたアクセシビリティ設計のワークショップと意見交換会が行われた。目的は、単に手法を提示することではなく、グループで対話を重ね、多様な来館者の視点に立ってアクセシビリティを設計する「過程」を体験すること。参加者は、予算や施設の制約、そして多様な来館者のニーズを想定した具体的なプランを練り上げた。
![]() アクセシビリティのアイデアカード | ![]() センサリーグッズ |
劇場では、契約準備や全公演でのサポート実施、スマートグラスを用いた手話動画と字幕の選択制、さらには開演前に舞台を触るツアーなど、時間軸と体験の両面を重視した案などが出された。
一方、博物館では、展示特有の「暗闇」に対するセンサリーマップの提示や、白杖ホルダーの設置、3D模型による空間把握など、展示環境と安全性を両立させる工夫などが提案された。
半田講師は、プロならではの展開力に感銘を受けつつ、「まず目的を定め、そこから手法(鑑賞サポート)を考える」という順序が徹底されていた点を評価しました。
駒井講師は、アクセシビリティは高度な技術や予算以上に、共に楽しもうとする設計思想が重要であることを強調し、講座を締めくくられました。
(目次に戻る)
主催の「アーツカウンシル東京」とは?
東京の芸術文化支援の専門機関です。資金面での助成だけでなく、今回の講座も含む多くの方法を通じて「現場の環境づくり」を伴走型で支援しているのが大きな特徴です。アクセシビリティに配慮された施設や公演情報も発信されています。
アーツカウンシル東京のサイトで詳しくごらんください
(目次に戻る)
【参加後の感想】
〇 半田講師が彫刻に初めて触れた時の感想をリアルに伝えてくれた時、会場の空気が変わったように感じました。アクセシビリティの取り組みの意義が講義の回を追うごとに深まっていきました。
〇 現実に課題を抱えて奮闘されている方々が参加されたワークショップでは、架空の設定であったのに、アクセシビリティ対策の議論が真剣に進められ、その様子は「舞台裏の舞台裏」を見ているように感じました。
〇 劇場に行った時に、鑑賞サポートが目に入ることはあります。必要とされている方が快適に楽しく鑑賞できる工夫がこれからも進化していくことを期待しますし、誰でも鑑賞できるようになって、たくさんの方々が文化芸術に触れられたら良いと純粋に思います。
写真・文:小川陽一、牛田 弘
芸術文化関連のらくゆく記事はこちら


