多摩六都科学館は、開館から30年以上が経過した建物です 。最新のバリアフリー基準で建てられた施設ではないからこそ、そこにはスタッフ一人ひとりの「運用」と「思いやり」による温かいサポートがありました。
多摩六都科学館のアクセシビリティについてレポートします。

巨大な球体状のプラネタリウムドーム「サイエンスエッグ」。銀色の外壁の上部には入口ロビーが見える展望台があり、下部を青い太いパイプが囲む。

入口から見上げたプラネタリウムドーム『サイエンスエッグ』

1. ハード面を補う「現場の運用力」

多摩六都科学館の外観 すり鉢状の階段の中央に球体のプラネタリウムドームがある

円形の階段状の中にスロープが弧を描くように入口へと向かいます

青い扉のエレベーターの前でらくゆくスタッフを案内する科学館スタッフ

エレベーターは館内に3カ所あります

建物にはスロープやエレベーターが設置されており、施設の構造上、制約はあるものの、どの設備も車いすで利用でき、バリアフリーに配慮されています 。
エレベーターは車いす1台分の広さですが、混雑時などスタッフの連携でスムーズに運用されています。

幅1m強、長さ5m程度のスロープが画面奥から手前に折り返している

展示室1~3の間はスロープで繋がっています

日当たりのよい休憩スペースにはベンチとテーブルが一組設置されている

展示室1と2の間に小規模な休憩スペースがあります

階段の段差を解消するために設置された車いす用の垂直昇降機。白いパネルで囲われたリフトが、展示室と休憩室の間の高低差を繋いでいる。

展示室3から休憩室へ行くには階段があるので、車いすの方などは昇降機で登ります

自然光が差し込む明るく広大な休憩室。等間隔に配置された多くのテーブル席があり、通路は車いすがゆとりを持って通行できる広さが確保されている。

休憩室は150席程あります。奥には足を伸ばせる畳スペースがあります

水色のタイルが貼られた広々としたバリアフリートイレ。便器の両脇に手すりがあり、洗面台、緊急ボタン、折りたたみ式のベビーベッド(おむつ替えシート)が備わっている。

2階のバリアフリートイレ(地下1階と1階にも1カ所ずつあります)

白い車いすマークが描かれた障がい者用駐車スペース

西側来客用駐車場には、2台分の障がい者用駐車スペースが用意されています

入り口の工夫: 車いすの団体が来館する際は、状況に応じて別の入口から案内するなど、柔軟に対応しています 。

移動のサポート: 移動に時間がかかる場面もありますが、スタッフが最適なルートを案内するなどサポートします 。

事前の相談: 車いすの台数や歩行状態に合わせて、事前にエレベーターや段差の少ない座席を案内できるよう、きめ細やかな確認を行っています 。
多摩六都科学館HP

2. 誰もが気兼ねなく楽しめる「おもいやりプラネタリウム・大型映像」

おもいやりプラネタリウム・大型映像のチラシ 月1回水曜日開催(4・8月を除く)、13:10~全編生解説プラネタリウム、14:30~大型映像、手帳所持者は無料、右下にQRコードあり
プラネタリウム中央に鎮座する、多数のレンズを持つ紫色の球体投影機。周囲には緑色の座席が階段状に並ぶ、落ち着いた青色基調のシアター内部。

光学式投映機「CHIRONⅡ(ケイロン2)」は1億4000万個を超える星々を映し出します

2016年から開催されているおもいやりプラネタリウム・大型映像は、障がいのある方や小さなお子様連れでも安心して鑑賞できる回です 。
周囲の理解: 「お互いさま」の精神で投影されるため、声が出てしまったり、医療器具の光が漏れたりしても、周囲を気にせず楽しめます 。

柔軟な予約: 通常は20名以上の団体予約が必要ですが、この回に限り、福祉施設などの少人数予約も受け付けています 。
特別な演出: ドームへの移動が難しい重度障がいの方向けに、イベントホールを使った星空解説を試験的に実施しました。

座席が取り外された車いす用スペース

車いすの観覧スペースは10台分です。

おもいやりプラネタリウム・大型映像紹介ページ

プラネタリウム・大型映像上映スケジュール

3. 「特別」ではなく「フラット」に接する

部屋の中央に「からだラボ」という円形のブースがあり、内部に赤いユニフォームのボランティアスタッフが数人いる。 外側には子どもたちが集まっている。

赤いユニフォームのボランティア会のメンバーと子供が楽しそうに会話しながら学んでいます

スタッフの常駐するカウンターには顕微鏡が3台設置されており、らくゆくスタッフが覗いている

種類の違う3種類の花粉を顕微鏡で覗いています
 

スタッフの皆さんが大切にしているのは、障がいの有無で分けるのではなく、一人の「利用者」として向き合う姿勢です。
やさしい日本語: 外国人だけでなく、高齢者や子供にも伝わりやすい「やさしい日本語」の研修を受け、年齢や場面により、対応すること を意識しています。
利用者によって伝わり易い言葉を工夫しながら、説明していました。
大勢の多摩六都科学館ボランティア会のメンバーもスタッフとして運営を支えています。年齢はジュニア(小学5年生~高校生)からと幅広いです。
利用者に対する姿勢は一人ひとりに行き渡っています。

館内の設備を情熱とともに説明して下さった広報担当の蓮田さん

説明に耳を傾けるらくゆくスタッフ

個別の対応: 難聴の方が持ち込む補聴援助システム(ロジャー等)への対応など、その場の状況に合わせたコミュニケーションを大切にしています 。

全館での情報共有: 朝礼や会議を通じ、どのスタッフでも対応できるよう、配慮が必要な利用者の情報を共有しています 。
スタッフ主体の改善: 「こういう場面でどう対応すべきか」というスタッフ発信の積み重ねがノウハウとなっており、日常的に「特別なことをしている」という意識なく、フラットな接客を心がけています 。

4. 広がる口コミとこれからの展望

こうした丁寧な対応が口コミで広がり、特別支援学校の利用が非常に増えているそうです 。
「利用者がどう楽しみたいかを察知して提供したい」
スタッフの方は、将来的に「障がいがある人もない人も、周りの人を巻き込んで一緒に楽しめる空間」をさらに広げていきたいと語っています 。

写真左:広報担当の蓮田さん 写真中央:アテンダントグループの保科さん 写真左:天文グループの齋藤さん

 

5.ご利用案内

障がい者割引身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳をお持ちの方は入館の際にご提示ください。ご本人と、介護人1名分の入館料・観覧料・ 駐車場利用料が免除(全額)となります。障害者手帳アプリ「ミライロID」も使用可能です。入館手続きは、ご本人と介護人が必ずお揃いの上、お越しください。

開館時間: 9:30~17:00(発券は16:00まで) ※当日のチケットで再入館ができます。
駐車場 : 9:15~17:15(※イベント開催の場合は終了後まで延長します。)
休館日 :月曜日(祝日及び振替休日は開館し、翌日休館)、祝日の翌日、年末年始、機器整備の休館日あり
※詳しくは「イベント・カレンダー」をご覧ください。
平日観覧は比較的空いているとのことでおすすめです。
イベントカレンダー

最後に

以前からこの場所にあるのは知っていて気になっていた多摩六都科学館でしたが、もっと早く紹介すれば良かったと後悔するほど素晴らしい施設でした。スタッフの方々のもっと良くしたいという限りなき探求心と多摩六都科学館に対する情熱を見て関心すると共に羨ましく思いました。そしてずっと地域や世界から愛される存在でい続けて欲しいです。今回ご協力いただいた蓮田さん・保科さん・齋藤さんを始めとするスタッフの皆様、本当にありがとうございました。是非またらくゆくで紹介させていただきたいと思います。

写真:寺川健一 文:小川陽一 アテンド:牛田弘
 

多摩六都科学館HP