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ESSAY //// Views-397

ある年の初秋、結婚披露宴で

週刊連載エッセー 9月13日〔月曜日)

3つも台風が続けてきた週末に娘の結婚式がありました。車椅子で出席した義父は、花嫁姿で入場した孫娘を見て、「違う」とひと言。おんぶして育てた孫なのですが首を横に振るのです。
わからないままでは困ると思っていると、新郎新婦が会場を回り始めました。花嫁が来て義父の肩に手をかけ「おじいちゃん」と言うと、見上げて驚いたように「ほんとにミキだ。お嫁さんだ」とにっこり。そして目をしばたきました。事前に義父に歌ってもらいビデオで撮った婚礼の歌「長持歌『ながもちのうた』」が会場に流れました。

「蝶よ花よと育てた娘 今日は他人の手に渡る……」

慈しみにあふれた歌声でした。

振り返ると、義父の最後の熱唱でした。ひ孫が今年3歳になります

 

・イラスト/いなだ 牧子

著者・並木 きょう子/東京都在住。フリーライター。人の生き方を独特の視点で描く人物ルポ、軽妙なエッセイ執筆。著書にエッセイ「ごちゃまぜ同居行進曲/主婦の友社刊(テレビドラマ化)」「300字の小さな幸せレシピ/アップオン刊」ほか多数。ⒸKyoko Namiki,Makiko Inada&upon factory 無断で複写・複製することは、著作権上の例外を除き禁じられています。


※新しいエッセイは毎週月曜日に掲載します。
※8月23日号 長男が、大人の背丈になったとき
※8月30日号 食卓を片付けながら
※9月  6日号 庭のブドウの樹