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ESSAY //// Views-450

義姉のピアノ

週刊連載エッセー (1月17日)

私の兄の妻、義姉が72歳のとき、18歳から離れていたピアノを50数年ぶりに再開。若い人に混ざり発表会にもでています。老年になって始めた趣味? と思って聴いた義姉のピアノはあっと驚くレベルでした。今年はショパンの「華麗なる円舞曲」。小柄な義姉が全身全霊で、今生きている命をうたい上げるようにひきました。会場は静まりかえりそのあと拍手の海に。努力家だと感じました。
思えば、若いころから夫の海外赴任のたびに外国で長い生活をし、夫の仕事と家庭を支え続けた義姉。小さな背中ですが、ピアノと同様、たくさんの努力を重ねてきたのでしょう。
発表会の翌日から次の曲を練習し始めるそうで、まるで試合の翌日から練習する甲子園球児のよう。
義姉の背中に小さな声で言いました。「ブラボーッ」と。


 


・イラスト/いなだ 牧子

著者・並木 きょう子/東京都在住。フリーライター。人の生き方を独特の視点で描く人物ルポ、軽妙なエッセイ執筆。著書にエッセイ「ごちゃまぜ同居行進曲/主婦の友社刊(テレビドラマ化)」「300字の小さな幸せレシピ/アップオン刊」ほか多数。
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※新しいエッセイは毎週月曜日に掲載します。
※8月23日号 長男が、大人の背丈になったとき
※8月30日号 食卓を片付けながら
※9月  6日号 庭のブドウの樹
※9月13日号 ある年の初秋、結婚披露宴で
※10月4日号 多摩川の鉄橋で
※10月11日号〝新米の力〟
※10月18日号 今夜の君は美しい!
※10月25日号〝湯気マジック〟
※11月 1日号 日本のお母さんの手
※11月 8日号   紅葉を楽しみに
※11月15日号 花の〝花道〟に
※11月29日号  ボージョレ・ヌーボーの季節
※12月  6日号  年の瀬に向かって
※12月13日号 母の口紅
※12月20日号 おつき合いは、シンプルに
※12月27日号 急なお客さまに……
※ 1月 3日号 新年の抱負
※ 1月10日号 名前で呼んでください