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ESSAY //// Views-353

山菜から春は香って

週刊連載エッセー(3月14日)

春先、長野に山荘を持つ友人夫妻を訪ねたときのことです。
山はまだ、冬模様。小さな川があったので、友人たちと雪解け水に触れてみようと、川のほとりの草むらに車を止めました。その草むらで友人の妻がときどき下を向いて何やらエコバッグに入れています。
それが夜、招かれた夕食のメインのふきのとうの天ぷらになって出てきました。道端の、テントもない無人販売所で売っていた、たらの芽もいっしょに。ふきのとうとたらの芽の苦みのあるおいしさを味わいながら、山菜から春は香ってくることを実感。
彼女は日ごろからとても料理上手ですが、その日は草むらにしゃがんで、おいしさを摘んでくれたのでした。
おもてなしの心意気がうれしい春の宵でした。

 


・イラスト/いなだ 牧子

著者・並木 きょう子/東京都在住。フリーライター。人の生き方を独特の視点で描く人物ルポ、軽妙なエッセイ執筆。著書にエッセイ「ごちゃまぜ同居行進曲/主婦の友社刊(テレビドラマ化)」「300字の小さな幸せレシピ/アップオン刊」ほか多数。
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※新しいエッセイは毎週月曜日に掲載します。
※8月23日号 長男が、大人の背丈になったとき
※8月30日号 食卓を片付けながら
※9月  6日号 庭のブドウの樹
※9月13日号 ある年の初秋、結婚披露宴で
※10月4日号 多摩川の鉄橋で
※10月11日号〝新米の力〟
※10月18日号 今夜の君は美しい!
※10月25日号 〝湯気マジック〟
※11月 1日号 日本のお母さんの手
※11月 8日号   紅葉を楽しみに
※11月15日号 花の〝花道〟に
※11月29日号   ボージョレ・ヌーボーの季節
※12月  6日号   年の瀬に向かって
※12月13日号 母の口紅
※12月20日号 おつき合いは、シンプルに
※12月27日号 急なお客さまに……
※ 1月 3日号 新年の抱負
※ 1月10日号 名前で呼んでください
※ 1月17日号 義姉のピアノ
※ 1月24日号 日本の雪
※ 1月31日号 全員が、天ぷらうどん
※ 2月 7日号 バレンタインデーの季節です
※ 2月14日号 瀬戸の夕焼け
※2月21日号  あたりまえの毎日が……
※2月28日号  ひな祭りの前夜
※3月 7日号 東日本大震災から、11年です

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