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SOCIAL TOPICS //// Views-550

シリーズ
超高齢化社会における
歯科とバリアフリー
(第1回目)

第1回目

バリアフリー歯科医院の盲点
レントゲン撮影できますか?

 

 現在、わが国は超高齢化社会の只中にいる。毎年敬老の日に総務省から公表される統計でも、高齢者人口は過去最高を記録した。これに伴い高齢者の歯科受診率も右肩上がりで(図1)、車椅子ユーザーが歯科医院を訪れる機会も増えていくことが予想される。


「歯科 バリアフリー」で検索すると、非常に多くの歯科医院が掲示される。歯科医師会のHPに一覧で掲載されているところもある。「段差がなくて入室しやすい」といった、診察室への入りやすさをアピールしている。

 しかし、これが実は盲点なのだ。歯科診療は、ただ診察室に入ることができればいいのではない。治療を始める前に、いかに正確な診断ができるか、ということが重要なのだ。

 そこで不可欠なのがレントゲン機器である。レントゲン撮影で歯や骨は白く写るが虫歯は黒く写り、歯周病で歯の周りの骨(歯槽骨)がやせているのも一目瞭然で視認できる。

 しかし、多くの歯科医院で採用するレントゲン機器は図2の左のように脚付きのタイプだ。設置が置くだけで簡単なので、費用や工期も少なくて済むのも、大きな理由だろう。


ところが、車椅子の車輪が機器の脚部に当たり、正しい撮影位置まで患者が行くことができない。当然、正しい撮影ができず、診断結果にも支障が出る可能性がある。これでは何のために撮影したのか分からない。余計なX線被曝を受けたに過ぎず、身体への悪影響も懸念される。

そこで必要になるのが、「車椅子に座ったままで撮影できる」レントゲン機器だ。これは1つの例だが、図2の右の商品は脚部がなくて実に撮影しやすい。私が勤務する病院歯科でも同タイプの機器を採用して役立てているだけでなく、レントゲン室も車椅子が入れる広さを確保している。

車いすユーザーのあなたやご家族が歯科受診する際には「車椅子でも受診できますか?」に加えて、「車椅子のままでもレントゲン撮影できますか?」と事前確認するようにしたい。


【参考資料】
厚生労働省:歯科疾患実態調査(平成5,11,17,23,28年)
株式会社モリタ・ホームページ:https://japan.morita.com


文/島谷 浩幸
医療法人 恵泉会 堺平成病院 歯科科長
https://sakaiheisei.jp/