アイキャッチ
FASHION //// Views-387

好きな服を着られる喜びを
服のお直しサービス「キヤスク」

 さまざまな障がいや病気・けがで、そのままでは着ることが難しい既製品の服を“着やすく”お直し(リメイク)する、服のお直しサービス『キヤスク』をご存じでしょうか?
「ボタンを面ファスナー(マジックテープなど)にしたい」「ズボンの脇をファスナーで開くようにしたい」など、個人のニーズに合わせたお直しをしてくれる、オンラインサービスです。
そのキヤスクが弊社で、初の試みとなる社員向けの『出張お直し相談会』を開催しました。
開催前に、相談員としてお越しいただいたキヤスクを運営する株式会社コワードローブの前田哲平代表に、お話を伺いました。

前田哲平さん
株式会社コワードローブ代表取締役CEO。大学卒業後、銀行勤務を経て株式会社ファーストリテイリング(ユニクロ)に入社。2021年に同社を退職して独立起業。2022年3月、オンラインお直しサービス「キヤスク」立ち上げ。

 



オンラインには「気軽さ」と「記録が残る」というメリットがある

 

『キヤスク』はオンラインサービスですが、何か決め手となった事柄があったのでしょうか?

 着たい服を誰でも着られるようにするお直しサービスを作りたいなと思ったときに、車いすユーザーの方に、試しに一般のお直しサービスに依頼をしてもらいました。そのときに「依頼から受け取りまでに感じた“不便だったこと”を教えてください」とお願いをしていて、その“真逆のサービス”を作ったら一番使いやすいサービスになるんじゃないかな? と思っていました。
 意見の中には「営業時間中にお店にわざわざ持って行かないといけない」という、移動の不便さもあったので、どこからでも気軽に依頼できるオンラインサービスにしたんです。

 あと “記録に残せる”というのがすごくいいな、と思ったんです。
 既製服を着やすくお直しをするって、たぶん昔からあったと思うんですよ。例えば、裁縫が得意なご家族が直すとか、近所で裁縫が得意な方がボランティアで直すとか。ただ、それだとどうしても個人の中で終わってしまって、(ノウハウや事例を)将来残していくということができなかったと思うんです。
 でもオンライン(デジタル)だったら全部記録として残るので、いろんな人に知ってもらえたり、「自分もやってみよう」と思ってもらえたり。世の中に広がっていくということもできるかな? と考えました。

 

一番のこだわりは、キヤストの接し方

 

お直しスタッフを「キヤスト」と表現されていますが、どういった思いが込められているのでしょうか?

 一般的な「キャスト」の意味である「映画・演劇・テレビドラマなどで役を演じる出演者」のように、お直しスタッフに「お客様一人一人に優しく寄り添うキヤスクのサービス、キヤスクの世界観をまさに体現する役割を担ってほしい」という意味を込めました。また「キヤスクの人=キヤスト」という言葉遊びにも掛けて、「キヤスト」という名前にしました。ちなみに表記は「キヤスト」ですが呼び方は「キャスト」なんです(笑)

▲キヤストさんの技術とアイデアで、“着やすく”なった洋服。手前はボタンで前開きにしたTシャツ

 

前回と違うキヤストの方が担当になっても情報共有できるシステムになっていますが、仕組みを教えていただけますか?

 ご依頼のときに情報共有承諾の項目にチェックを入れてもらうと、お直しをしている間だけ過去のお直しがコミュニケーションルーム(お直し中に設けられる個別のチャット)で共有できます。お身体の状態、どういうお直しをしたか、こういう困りごとがあるとか……。次のキヤストに同じことを伝えるのはちょっと面倒な内容も、ある程度分かるようになっています。
 僕自身もお直しの状況を全部見ていますので、コミュニケーションルームの履歴を見ても分からないような部分でサポートが必要なときは、間に入って共有しています。

お直し作業での一番のこだわりはなんですか?

 技術的なこともそうですけど、お客様と向き合うお直しを担当するキヤストの接し方だと思っています。
 お直しのスタッフもただお直しをするだけでなく、お客様の身体の不自由さや、なかなか着たい服を自由に着られないということも理解した上で、「何ができるんだろう」と寄り添って、一緒に考えながら、お直しをしたいと思ってやっているところが、一番のこだわりだと思っています。

 

障がいに合わせたお直しにびっくり!

 

 相談会には、その場で依頼した人、相談のみの人、合わせて6名が来場しました。
 キヤスクを初めて知ったという社員は、
 「右半身まひでボタンを留めるときと、ズボンを履くときに苦労しているので、相談してみました。上着の脇をファスナーで開くようにしたり、Tシャツを前開きにしたり、障がいに合わせたお直しをしてもらえることにびっくりしました!」
と、とても驚いた様子でした。

 

お直しは、心豊かに生活を送る上で重要
この相談会をきっかけに、広まってほしい

 

 今回の相談会について前田代表は、
 「“直して着たい服を着る”というのが“心豊かに生活を送る上で重要”だと思うのですが、イメージが湧かない方が多いと思います。今回のような『お直し相談会』を重ねていきながら知ってもらい、“自分もやってみたいな”とイメージしていいただければいいな、と思います」
とおっしゃっていました。

 今回は特別に対面での相談会でしたが、オンラインのサービスでもとても親切に相談に乗っていただけますし、仕上がりもとても丁寧なので、安心してお願いできます。洋服の種類やサイズ、お直しの内容は問いませんので、ぜひ相談してみてください。
 なお相談会を希望される企業、医療・福祉施設、特別支援学校などがございましたら、ぜひお気軽にキヤスクへお問い合わせください。

既製服を着やすくするお直しサービス「キヤスク」
https://kiyasuku.com/


写真:鈴木智哉 文:油利美佐子(二分脊椎症・側弯症)