上高地は、長野県松本市にある標高およそ1500mの山岳景勝地で、国の文化財(特別名勝・特別天然記念物)にも指定されています。
 上高地から仰ぎ見る穂高連峰は3000m級の山々が連なっており、その絶景は何度見ても飽きません。
 この記事では、マイカー申請の方法や条件、自然豊かな上高地を夫婦2人車いす2台で散策した様子を<前編・後編>でご紹介します。

(内容は2024年8月の情報です)

 

【目次】

  1. マイカーで上高地へ行く場合は、申請が必要
  2. 車いすユーザーがマイカー以外の手段で上高地へ行くには?
  3. 【車いすユーザー体験】マイカーで松本市から上高地へ
  4. 【車いすユーザー体験】上高地散策<前編>
  5. 【車いすユーザー体験】上高地散策<後編>

 

マイカーで上高地へ行く場合は、申請が必要


    通常、上高地へは年間を通して自家用車では入れませんが、障がいなどの理由で事前に所轄警察署で許可書を交付してもらった場合、自家用車で行くことができます。
長野県側、岐阜県側から行く場合で申請場所や申請条件が違うため、それぞれについて解説します。


マイカー申請【長野県松本市方面からの場合】

1.松本警察署交通課に電話する
障がい者で上高地に自家用車で行きたい旨を伝え、自分の状況に合わせた手続きを確認しましょう。 
2.「通行禁止道路通行許可申請書を以下のサイトからダウンロードし、必要事項に記入
https://ww.pref.nagano.lg.jp/police/shinsei/koutsu/kisei/shinsei7.html
3.書類を1週間以上前に松本警察署交通課に郵送
申請には障害者手帳のコピーも添付し、松本警察署宛に送ります。
4.当日(上高地に行く日)、または前日に松本警察署で許可証を受け取る
【注意】
警察署は平日しか開いていないため、平日に許可証を受け取れるように旅行日程も調整しましょう。

マイカー申請【岐阜県高山市方面からの場合】

※乗鞍スカイラインから行く場合(岐阜県側から行く場合)
※長野方面から向かう場合と申請条件や手続きが異なるため、不明な点は必ず高山警察署に確認を!
1.高山警察署に電話し、必要な手続きを確認
車椅子や障害者という理由だけでは許可は出ません。大型車いす、寝台車椅子、医療機器が必要などの公共交通機関が使えない理由が必要です。
2.提出書類の作成
申請には申請書、免許証のコピー、車検証、医師の診断書(※公共交通機関を利用できないという理由が必要)、障害者手帳のコピー(すべて2部ずつ)を準備します。
3.書類を高山警察署に郵送
ゆうパックなど追跡のできるもので行いましょう。
書類のやり取りがあるため、最低でも半月前には書類を送っておく必要があります。
4.高山警察署にて許可証を受け取る
高山警察署は、高山インターと乗鞍スカイラインの途中にあります。
警察署が開いている時間(平日日中)は予約なしで受け取れますが、土日や早朝に受け取りたい場合は予約をしましょう。

通行禁止道路通行許可証の写真

▲通行禁止道路通行許可証
 

目次に戻る
 

車いすユーザーがマイカー以外の手段で上高地へ行くには? 

車いすを利用して上高地へ行く場合、マイカー以外にも3つの手段があります。

  1. 介助者とともにシャトルバス移動
    介助してくれる同伴者がいる場合、定期シャトルバスを利用すると便利です。
    ただし、バスの乗り降りには段差が多いため、その点を注意して検討しましょう。

    松本方面からであれば「沢渡(さわんど)駐車場」で乗車。
    時刻表など:https://www.alpico.co.jp/traffic/local/kamikochi/sawando/
    障害者割引詳細:https://www.alpico.co.jp/traffic/pass/6/

    高山方面からの場合は「平湯あかんだな駐車場」発のバスに乗車します。
    時刻表:https://www.nouhibus.co.jp/route_bus/kamikochi-line/
    障害者割引詳細(PDF):https://www.nouhibus.co.jp/wp_rnw/wp-content/uploads/2019/04/shougai_waribiki.pdf

    シャトルバス運行期間:毎年4月17日~11月15日
    (変更ある場合は各公式サイトに告知)
    バス利用には料金がかかります。
    各発着地の駐車場を使う際にも駐車場の利用料も発生します。

  2. 自力で乗り降り可能であればタクシーも利用可能
    バスの段差は難しくても、日ごろ自力で一般車両に乗り慣れているのであれば、近隣の駐車場から普通のタクシーに乗り継いで向かうこともできます。
    料金は定額運賃制で、松本(沢渡)方面からの利用の際には有料トンネルを通過するため、別途料金が発生します。
     
  3. 福祉車両(介護タクシーなど)を利用
    自力での乗り降りが難しい車いすユーザーは、介護タクシーの利用も検討してみましょう。
    福祉車両はタクシー会社によって保有数に制限があったり、車いすのサイズなどの制限があるため、直接タクシー会社に電話などで確認したうえで予約をしておくと安心です。

    旅の予定や自身と同行者の状態に合わせて、利用手段を選びましょう。

目次に戻る

 

【車いすユーザー体験】マイカーで松本市方面から上高地へ

今回は、松本市方面からマイカーで利用しました。「通行禁止道路通行許可証」を車のダッシュボードの上に置き、上高地に向かいます。

 松本市内から上高地まで1時間40分くらいです。
 国道158号線を走る途中、休憩したい時は、道の駅「風穴の里」あたりが中間点となります。そのまましばらく走ると、釜トンネル入口分岐まで約200mの標識が見えてきます。
 釜トンネル、上高地トンネルを通り抜けると森の中をひたすら走りますが、自家用車はほとんど通りません。
 観光バスの通行が多く道幅が狭い箇所もあるため、前方にバスが見えたら脇に寄って通過を待ちながら進むことになります。時間に余裕を持って行動しましょう。
 なお、上高地 駐車場では、利用料金の障害者割引は行っておりません。


上高地へ向かう158号線の途中にある赤いとんがり屋根の道の駅「風穴の里」が前方に見えている写真

道の駅「風穴の里」

釜トンネル入口まで200メートルの道路標識の写真

 


 このトンネルを抜けると釜トンネル入口分岐の標識があり、右折車線を走ります。

トンネルに入って行こうとする写真
トンネルを抜け釜トンネル入口交差点の道路標識の写真


 いよいよ分岐点、釜トンネル入口です。入口前には警備員の方がいますので、車を徐行しダッシュボードの青い「通行禁止道路通行許可証」を指差して認識してもらいます。

釜トンネル入口が目前の写真
釜トンネル入口の前に立っている警備員二人の写真


 釜トンネル、上高地トンネルを通り抜けると森の中をひたすら走りますが、自家用車はほとんど通らないので観光バスとすれ違います。
 すれ違いができないような狭いところもありますので、前方に観光バスが見えたら脇に寄って待ちましょう。

上高地トンネル入口の写真
狭い道路で観光バスのすれ違いを写した写真


 大正池です。上高地の景色ですね~!大正池停留所はバスで混み合っています。

車の中から道路左側の大正池を写した写真。水面に山の緑が映りこんでいる。
大正池停留所付近でバスの混んでいる写真


 さらに走り進むと、上高地バスターミナル駐車場が見えてきました。

林の中の道の先にバスターミナル駐車場が見えてきている写真
上高地バスターミナル駐車場の入口が目前な写真


 上高地バスターミナル駐車場入口。入口看板の先に発券機があります。

バスターミナル駐車場入口の発券機と係員が立っている写真
バスターミナル駐車場の入口の案内板を写した写真。乗用車の料金は2時間未満500円、2時間以上1000円。


 「A」の案内板のところを右折して突き当り付近が障がい者用駐車場。

Aの案内板を右折したところを写した写真


 障がい者用駐車場2台。

障がい者用駐車場2台分を正面から写した写真
障がい者用駐車場スペースに置かれているオレンジ色のパイロンの写真

 

公衆トイレの建物を写した写真
公衆トイレの男女別入口の写真
車いす用トイレの入口を写した写真
車いす用トイレの中を写した写真
自然環境の保全とトイレの快適利用のためにチップ(100円程度)へのご協力をお願いします と書かれた看板とチップボックス

目次に戻る

 

【車いすユーザー体験】上高地散策 <前編>

 

車いすユーザーの上高地散策の体験を紹介していきます。前編・後編に分けておりますので参考にしてみてください。    


上高地車いす用散策マップ。前編ではバスターミナルから河童橋方面を経由してウェストン碑へ向かい、後編では田代橋から梓川左岸沿いにバスターミナルへ戻る道筋。

<前編・赤色>バスターミナル→河童橋→右方向(岳沢湿原方向)→戻って梓川右岸→ウエストン碑
<後編・水色ウエストン碑→穂高橋・田代橋→梓川左岸→バスターミナル

 

上高地散策~バスターミナル→河童橋→ウエストン碑ルート


バスターミナル→河童橋。
前方のバス待合所を通り抜けていきます。

バス待合所を正面から写した写真
バス待合所から先を写した写真


 上高地観光センターの角を右方向に進みます。

上高地観光センターの角を曲がって走る車いすの女性。
突き当たった道路を左方向に向かう車いすの女性


 道路に突き当たるのでそこを左方向に進みます。

左に曲がってすぐ車が入れないように遮断器がある写真
河童橋までの案内標識
現在の位置を確認できる大きなマップ
そのまままっすぐ進む車いすの女性


上高地のシンボルである河童橋。手前で穂高連峰をバックに記念撮影!

道路の先に河童橋が見えてきている写真
車いすの筆者とその妻が穂高連峰と河童橋をバックに撮った写真


 河童橋近くのカッパトイレ

河童橋近くにある公衆カッパトイレの全体の写真
車いす用トイレの入口を写した写真
車いす用トイレの中を写した写真

 河童橋のスロープを上ります。河童橋上で記念撮影!

河童橋を渡るためにスロープを上る車いすの女性
河童橋の欄干に書いてある梓川の文字を写した写真

橋の上からは雄々しくそびえる穂高連峰や岳沢、美しい青色の梓川の流れ、反対側は時折噴煙たなびかせる活火山の焼岳が展望できる絶好のビューポイント。

河童橋上で穂高連峰をバックに車いすの筆者とその妻

▲河童橋上(穂高連峰側)

河童橋上で焼岳をバックに車いすの筆者とその妻

▲河童橋上(焼岳側)


 河童橋のスロープを下ります。

河童橋の反対側のスロープを下る車いすの女性
スロープを下りきった車いすの女性


ホテル白樺荘を左に見て岳沢湿原方面に進みます。

スロープ下りて右方向を写した写真
砂利道を右方向に走り始める車いすの女性

 この先20メートルくらいで断念(砂利道でキャスターが埋まってしまう)

 でもここは絶景スポット!

穂高連峰と梓川をバックに車いすの筆者とその妻の写真


 引き返し、ホテル白樺荘はレストランやカフェそしてお土産物があり混んでいます。そのまま梓川右岸を進み、ウエストン碑を目指します。

ホテル白樺荘の前に休憩用のパラソルでくつろいている観光客
ホテル白樺荘の脇を抜ける車いすの女性


 5千尺ロッヂ前

5千尺ロッヂ前でたたずむ車いすの女性
紫色の屋根の高級感がある5千尺ロッヂのエントランス


 西糸屋山荘前

西糸屋山荘のエントランス
西糸屋山荘前を通り抜ける車いすの女性


 ウエストン碑まで0.6km

ウエストン碑まで0.6kmの案内板
そのまま林の中を走る車いすの女性1
そのまま林の中を進む車いすの女性2
そのまま林の中を進む車いすの女性3
林の中の道が水たまりになっている写真
そのまま林の中を進む車いすの女性4


 ウエストン碑まで0.3km

ウエストン碑まで0.3kmの案内板
砂利道を進む車いすの女性


 ウエストン園地公衆トイレ

ウエストン園地公衆トイレの建物
車いす用トイレの入口を写した写真


 ウエストン碑に到着

ウエストン碑の位置が分かる地図。ドローン撮影禁止やクマに注意の案内もある。
道の右側にあるウエストン碑
ウエストン碑についての説明書き。ウォルター・ウエストンは日本滞在中に近代的な登山意識をもたらし、日本山岳会結成のきっかけとなった。
ウオルター・ウエストンのレリーフの写真

 日本近代登山の父 ウオルター・ウエストンについて
 上高地公式ウェブサイトをご覧ください(URLをクリック)
 https://www.kamikochi.or.jp/learn/spots/1267/


<後編へ続く>

 

目次に戻る

 


***写真・文:WRC(脊髄損傷T6-7) 編集:野﨑***