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ESSAY //// Views-777

長男が、大人の背丈になったとき

週間連載エッセー 8月第4週(8月23日)

若いころフォークやニューミュージック世代の私は、浪曲調の「岸壁の母」を聴いても関心ありませんでした。それが、長男が高校2年生のとき、学生服で登校する姿を見送ったあと、テレビで双葉百合子さんが歌う「岸壁の母」を偶然、聴きました。今、頼もしく出かけて行った長男の行き先が学校でなく戦争だったら……歌詞が身にしみました。もしやもしや、生きていてほしいと祈る母心が、長男が大人の背中になったとき初めてわかったのです。オセロゲームで白が黒に全部ひっくり返るようにわかったのです。涙があふれました。気がつくと声を出して泣いていました。

平和に感謝し、平和が続くことを願います。

 

イラスト・いなだ 牧子

著者・並木 きょう子/東京都在住。フリーライター。人の生き方を独特の視点で描く人物ルポ、軽妙なエッセイ執筆。著書にエッセイ「ごちゃまぜ同居行進曲/主婦の友社刊(テレビドラマ化)」「300字の小さな幸せレシピ/アップオン刊」ほか多数。

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