すみだ産業会館(東京都)にて10月16日~18日に開催された展示会「サイトワールド」。
第17回目となる今回も、視覚障がい者の安全で快適な生活を支えるべく幅広い企業が集い、最新技術や当事者ニーズに応じた商品やサービスが多く展示されました。
熱気あふれる会場の様子を、視覚障がいを持つスタッフが当事者目線でレポートします!
【目次】
- 視覚障害者向け総合イベント「サイトワールド2025」概要
- 視覚障がい者の視界を体験!
- 安全で快適な歩行を支援するブース
- 見やすさ、読みやすさを支援するブース
- 障がい問わず使いやすいデジタルツール
- 点字利用者のデジタルライフをサポート
- 取材を終えて
視覚障害者向け 総合イベント「サイトワールド2025」概要
会場:すみだ産業会館(東京都)
開催日:2025年10月16日~18日
サイトワールド2025公式サイト
今回も、視覚障がい者の生活に役立つ多くの製品やサービスが展示されました。
その中から視覚障がい(弱視)のスタッフが注目したブースを紹介します!
視覚障がい者の視界を体験!
【PLAYWORKS株式会社】視覚障がいの「見えづらさ」を体験できるキット
PLAYWORKS株式会社のブースでは、「ロービジョン体験キット」が紹介・販売されていました。
紙製のメガネを組み立て、レンズ部分を変えていくことで、「視野が狭い状態」や「眩しく感じる」といった、視覚障がいの主な見え方を手軽に体験することができます。

▲台紙から眼鏡状態に組み立てて使用。手軽に体験できるため、企業の研修や学校の授業でも採用されているとのこと

▲職場などの床に貼ってすぐに点字ブロックが作れるシート「ロコテープ」の販売も
ロービジョン体験キット紹介ページ
PLAYWORKS株式会社公式サイト
【ライターの感想】
私も周囲から「視覚障がいってどんな見え方なの?」と聞かれることが多いのですが、幼少期から障がいがあると、慣れてしまって説明が難しいんですよね。
ですが、こうしたキットがあると実際に体験してもらえるので、当事者にとっても説明がしやすくなると思います!
安全で快適な歩行を支援するブース
【株式会社コンピュータサイエンス】歩行支援アプリ「Eye Navi」(アイナビ)は信号機の色も検知。スマホで今すぐ使えます!
手持ちのスマホにインストールし、簡単な設定をするだけで、安全な歩行を誘導してくれます。

▲アプリ起動後、スマホのカメラをイメージ画面に向けると、横断歩道や点字ブロック、信号の有無などを瞬時に音声で教えてくれました。

▲アプリ操作中のスマホは、専用ポーチに入れて首から下げれば歩行中も安全!
Eye Navi(アイナビ)公式サイト/ダウンロードもこちらから
株式会社コンピュータサイエンス公式サイト
【ライターの感想】
映した視界に信号機がある場合は、点灯している色(赤/青)も教えてくれるので、横断歩道で「信号があるのはわかるけど、今何色なのか判別しづらい・・・」という不安も解消できて安心です。
【トヨタモビリティ基金】「TAMI」は、デザイン性にもこだわった眼鏡型デバイス
眼鏡のつるに内蔵されたセンサーが周囲の情報をキャッチして振動します。

▲レンズは交換可能なので、普通の眼鏡としても使用できます

▲カラーバリエーションは4色。デザイン性もあるのが魅力
一般財団法人トヨタモビリティ基金公式サイト
【ライターの感想】
レンズ交換OKで、普通の眼鏡や遮光眼鏡としても使えるところに魅力を感じました。
白杖で歩行しているときは、足元の段差はすぐにわかるけれど、上半身の障害物(停車中の車のサイドミラーや植物など)は心配だったので、これがあればより安心して歩行できそうです。
【株式会社「Ashirase」(あしらせ)】靴に取り付けるだけで行きたい場所へ!
「Ashirase(あしらせ)」は、靴の履き口に取り付けるタイプの歩行支援デバイス。
外出前にスマホ(アプリ)に目的地を設定し、それをデバイスに読み込ませると目的地までの歩行をサポートします。

▲靴の履き口に、クリップのように取り付け。足首に痛みなくフィットする感触です。

▲USB(タイプC)で充電可能
Ashirase(あしらせ)公式サイト
【ライターの感想】
進む方向に合わせて、左右のデバイスが振動します。靴に取り付けるタイプなので、白杖を持っていても両手が空くところが便利ですね。
【日本盲導犬協会】盲導犬と一緒に歩いてみました!
盲導犬と一緒に会場内を歩いてみました。
白い杖を持った視覚障がい者のライターが、黒い盲導犬を連れて会場内の点字ブロックの上に立っている様子
▲盲導犬は、ハーネスという専用の胴輪の操作と、口頭での決められた指示によって動きます

▲段差の上り下りもスムーズに誘導してくれて、スピードの調節もできるそうです
公益財団法人 日本盲導犬協会公式サイト
【ライターの感想】
「日々のお世話やコミュニケーションを継続してしっかり行えるのであれば、心強いパートナーになります」とのことで、単に外出を援助してもらうだけでなく、「お互いに支え合える存在」として、盲導犬と暮らすことも素敵な選択肢だと思います。
見やすさ、読みやすさを支援するブース
【東海光学株式会社】遮光眼鏡「ビューナル」を体験
「オーバーグラス ビューナル」は、手持ちの眼鏡の上からかけられる、眩しさを調節できる遮光眼鏡です

▲サングラスのような見た目をしていますが、かける人の見やすさや適度な明るさに合わせて多種多様なレンズから選べることが、遮光眼鏡の大きなメリット。

▲実際に会場周辺のテラスを歩いて、屋外での見やすさを実感
遮光眼鏡「ビューナル」紹介サイト
東海光学株式会社公式サイト
【ライターの感想】
眼鏡の上からかけるので、視力の変化を気にせず使えるところが便利そうでした。
視覚障がい者の見え方は、体調や天気の変化によっても大きく変化するので、その日に合わせて何個か持っておくのもいいなと思いました。
【株式会社システムギアビジョン】目でも耳でも読める拡大読書器「クローバーブック・メイト」をお試し
大きな画面で、本や書類を拡大してくれる「拡大読書器」は、全盲ではないけれど見えづらさを抱える弱視の人にとって便利なツールです。
さらに進化した拡大読書器「クローバーブック・メイト」は、紙面を拡大するだけでなく、その文字を音声で読み上げてくれます!

▲拡大読書器は、画面の下に本や書類をかざして画面上で拡大された文字を読みます

▲折りたたんで持ち運べるサイズ感も嬉しい!
クローバーブック・メイト紹介サイト
株式会社システムギアビジョン公式サイト
【ライターの感想】
弱視の人は、その日によって見やすさに変化があったり、だんだん視力が低下する疾患を抱えている場合があります。
ただ文字を拡大するだけでなく、読み上げ機能があると、コンディションによって使い方を選べるので当事者としてはとても助かりますね。
障がい問わず使いやすいテレビ・ヘッドホン・スマホ・カメラ
【ソニー株式会社】近年アクセシビリティに力を入れています
ソニー製品(テレビやスマホ、カメラなど)は、視覚障がい者が快適に利用できる機能を多く搭載しています。
今回展示された製品は、いずれも一般の家電量販店や通販で購入できるもの。
家族とも安心して使える点が大きなポイントです。

▲テレビ「ブラビア」の最新機種は、画面のコントラストや色合いを細かく変更可能。弱視の私のようにハイコントラスト(白黒反転)が見やすく感じる人にも、とても便利

▲「LinkBuds」シリーズのイヤホン、ヘッドホンはこの記事でも紹介している「Eye Navu」(アイナビ)にも対応。アプリと連携して動作します。

▲スマホ「Experia」(エクスペリア)の最新モデルは、Androidの基本的なアクセシビリティ機能のほか、逆光防止画面やカメラと被写体の位置の変化を振動で伝えてくれる独自の技術も搭載!

▲視覚障がいがあっても写真撮影を楽しみたい人のために、カメラの操作パネルの文字も拡大OK
テレビ「ブラビア」製品サイト
Eye Navi(アイナビ)対応ヘッドホン「LinkBuds」製品サイト
スマホExperia(エクスペリア)製品サイト
デジタル一眼レフカメラのアクセシビリティ紹介ページ
ソニー株式会社公式サイト
【ライターの感想】
今は視覚障がい者にとっても、スマホが欠かせない時代。
私は眩しさにも敏感で屋外でスマホの画面を見るのが苦手なので、特に画面の逆光防止機能に惹かれました。
テレビの操作パネルのコントラストを調整できるのもとても助かります。
点字利用者のデジタルライフをサポート
【有限会社エクストラ】視覚障がい者のPC操作を応援する携帯型点字ディスプレイ「ブレイルセンスシックス日本語版」
全盲で点字が使える場合は点字に翻訳された本や書類に触れ、紙に点字を書くことで文字のやり取りをします。
では、近年の情報収集はスマホやPCが主流。どのように点字情報をデジタル化してやり取りするのでしょうか。
有限会社エクストラのブースで、その疑問に答えてくれるデバイスに出会いました。

▲点字携帯端末「ブレイルセンスシックス日本語版」は、上部のボタンで点字を入力。出力された情報は、下部の凹凸部分が点字として反映される仕組み

▲インターネットと接続すれば、メールやブラウザの操作も可能に。スタッフから「当社の全盲の社員も、このデバイスでオフィス作業をしています」との説明もいただきました
点字携帯端末「ブレイルセンスシックス日本語版」シリーズ製品サイト
有限会社エクストラ公式サイト
【ライターの感想】
点字を日常的に使っている人はどんなデジタルツールを使っているのか、興味があったのでとても勉強になりました。
PCやタブレットなどほかのデジタル機器と連携することで、全盲の方の暮らしやすさの可能性がもっと広がることを願います。
取材を終えて

会場は視覚障がいの当事者、支援者を中心に大変な賑わいで、「同じ障がいの人や、障がいのことに関心を持ってくれている人がこんなにいるのか」とその熱気に驚きました。
各ブースのスタッフも、皆さん丁寧かつ親身に対応してくれて、日々悩みや不安を抱えている当事者としては「私たちのことをここまで真剣にサポートしてくれる人がいるんだ!」と、とても心強い気持ちになりました。
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文/野崎恵美子(網膜色素変性症) 写真/小川陽一
