舞台『TRAIN TRAIN TRAIN』は

想像溢れる世界観と身体表現を生み出し、振付家・ダンサーとして類をみない活躍を見せる森山開次を中心に創作するオリジナルの舞踊作品。「TRAIN」をモチーフに、不思議な音色を奏でるSLとユニークな乗客が繰り広げる冒険譚を、多彩なキャスト・アーティストが魅力溢れるシーン満載で綴ります。

あらすじ

詩人が不思議な列車「ムジカ」と出会うことから物語が始まります。列車の名は「MUSIC=音楽」の語源であるラテン語の「musica」という言葉から名付けられました。「musica」ははるか昔、音楽だけではなく、舞や詩など、広く豊かな芸術を内包した言葉。この舞台では、語源の「musica」を目指し、豊かな芸術の世界を旅します。詩人は旅する中で、多様な存在と出会いながら、“まだ見ぬ自分”や“多様な他者”を見つけていきます。それは、誰の中にもある“表現の列車”を走らせる、想像と創造の旅です。
(TRAIN TRAIN TRAINホームページより引用)

詩人のレンを演じる岡山天音氏 左側の光は月 右側は女神メモリー

SLを降りたレンの後ろをSLがゆっくり通り過ぎて行きます

森山氏が演じるブレスが中心で激しいダンスをしています

障がい者を含む多彩なキャスト

出演には、東京2020パラリンピック開会式で主役の“片翼の小さな飛行機“を務め、俳優としても活躍の場を増す和合由依。独自の魅力と演技力で際立つ存在感を見せる俳優の岡山天音、美しい歌声と知的で朗らかな魅力で多彩に活躍するミュージシャンの坂本美雨、デフパフォーマーとして手話表現を生かした豊かなパフォーマンスを生み出しているKAZUKI、大ブレイクしたモノマネのみならず、明るい歌声とキャラクターで国民的な人気を誇るタレント・歌手のはるな愛をはじめ、23人の魅力的なキャストが揃いました。
義足のダンサーとして唯一無二の存在感を放つ大前光市、映画や舞台の主役を務め、聴覚の障害も個性に変えて目覚ましい活躍を見せるダンサーの梶本瑞希を始め、浅沼圭、小川莉伯、梶田留以、水島晃太郎、南帆乃佳など魅力と才能を兼ね備えた素晴らしいダンサー陣。舞台手話通訳者かつ俳優としても活躍する田中結夏ほか、一輪車アーティスト、即興ダンサーなど、一般公募のオーディションも経て、障害の有無を超えて集った魅力溢れる出演者が作品を豊かに彩ります。
森山とともに本作の世界を生み出すのは蓮沼執太と三浦直之。音楽家の蓮沼執太は率いるミュージシャンとともに音楽を全編書き下ろし、劇作家・演出家の三浦直之は、森山のイマジネーションに寄り添い言葉を紡ぎます。
(TRAIN TRAIN TRAINホームページより引用)

ミューズを演じる車いすに乗る和合由依氏 後ろに乗客などがいます

SLのボイラーを演じる篠塚俊介氏 激しい湯気が上がっています

 

音楽家の蓮沼執太は率いるミュージシャンとともに音楽を奏でます

実験的な要素を取り入れつつ、親しみやすいメロディーやリズムも重視した独特のサウンドを生み出す蓮沼が、イトケン・三浦千明・宮坂遼太郎とともに生演奏も駆使して音色を奏でます。(TRAIN TRAIN TRAINホームページより引用)
独特な緊張感を生み出す演奏は本当に素晴らしかったです。

 

アクセシビリティの取り組み
 

本公演におけるアクセシビリティは、「理解するためのサポート」ではなく、「想像することを楽しむための工夫」を大切にします。
見る、聞く、それぞれの感覚から物語を味わえるよう、多彩なクリエイターと共に、初めから多様な観客を想定して創作に臨みます。
・音声ガイド
演出の解説、役の心情、場面転換を解説してくれるので観劇初心者でも十分楽しめます。
・字幕(スマートフォン利用)
詩人レンの話すことばだけではなく演出の様子も表示してくれます。そのため聞こえる人が使うと、舞台をより理解することができます。舞台のバックにもことばがやわらかいイメージの書体で字幕が表示されます。これ自体ノスタルジックな味わいがあり演出の一部になっています。
・手話通訳、筆談
ロビーに手話通訳の方が配備されていました。その他アクセスデスクではスマートフォンを使った音声ガイド・字幕の案内などをしていました。
・座席の選択肢(ヒアリングループ、車いすなど)
車いすのスペースは一階の後部に2席用意されていました。
・補助犬との鑑賞、舞台上の動きを感じやすい座席
補助犬のトイレなども用意されていて補助犬と一緒に安心して鑑賞できます。
・上演中に出入り可能な座席
・乗車ガイド(スマートフォン利用)
ホームページには「乗車ガイド」という登場人物やキャストを紹介するタブが用意され、観劇前に知識をインプットすることができます。
 

タイムラグなく、ことばを発すると同時にスクリーンに字幕が表示されます

エントランスからロビーに入った真正面にアクセスデスクがありました

劇の前と休憩時間にスクリーン上に「乗車ガイド」が表示されていました

アクセシビリティを語る会

本公演後、参加者が舞台芸術をより多くの人に楽しんでもらう方法について意見を交換しました。
・内容は、事前解説ガイド、字幕や音声ガイド(スマートフォン・タブレットで利用可能)、座席の選択肢(ヒアリングループや車いす、出入りが自由な席)など多様な鑑賞サポートの紹介がされました。手話や筆談による案内、大きな音の予告、落ち着けるスペースの用意など、細やかな配慮も実践されています。
・参加者からは、字幕と舞台の流れが合っていて理解しやすかった、鑑賞サポートが自分で選べたり、自分の端末や貸出タブレットで楽しめる環境が良いと高評価。一方、視覚障がい者から見たデジタル・WEBサービスの使いづらさや、座席指定でサポートが必要な人の優先順位を考慮する重要性、字幕と音声ガイドの統合やさらなる改善要望点も挙げられました。今後も多様なニーズに応えられるアクセシビリティ向上が期待される学びの場となりました。途中、振付・演出を担当した森山開次氏がサプライズで登壇し、この作品に対する情熱や苦労したことなどを語り、参加者を喜ばせてくれました。

観劇後にロビーにて行われたアクセシビリティを語る会

森山開次氏がサプライズで登壇しました

東京芸術劇場のバリアフリー情報

館内図

車いすスペースは一階の後方に2席分あります

1階男子トイレの隣にバリアフリートイレがあります

トイレの内部 チャイルドシートとおむつ替え台もあります

取材を終えて

舞台『TRAIN TRAIN TRAIN』は過剰な説明を省き、視覚、聴覚で感じるままに楽しめるダンス作品でした。バックスクリーンに映し出される字幕は、ことばや感情のニュアンスまで感じ取れるやさしい字で表現されていました。スマートフォンでの字幕で感心したのは、タイムラグがなく同時に楽しめるよう、あえて場面説明を先に出すなど工夫がされているとアクセシビリティディレクターを務める栗栖良依氏がおっしゃっていました。自分の席の前列に小学生位の男の子がいましたが、最後まで劇の世界観に浸っているように観劇してました。カーテンコールになると身を乗り出すように拍手していた姿が印象的でした。音楽も素晴らしくメモリーのやさしい歌声が耳を離れません。
今回取材の機会を下さいました、東京芸術劇場の皆様、東京都文化振興部の皆様、感謝いたします。

劇中写真:宮川舞子  館内施設などの写真・文:小川

舞台『TRAIN TRAIN TRAIN』|東京芸術劇場公式
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